建設業の人手不足解消を目指して、清水建設が立ち上げた求人情報サイトとは?

就業者が減少の一途を辿り、人手不足が叫ばれて久しい建設業界。大手ゼネコンから中小企業まで、根本的な解決の糸口が見えていないのが現状です。

そんな現状を打破すべく清水建設株式会社は、求人情報サイト『匠を目指す人集まれ!』を2017年5月に立ち上げました。大手ゼネコンが主導する求人サイトとはどのようなものなのでしょうか。

今回は、同サイトの立ち上げに関わった清水建設株式会社建築総本部調達・見積総合センター管理部 管理部長 遊佐純一郎さん、土井理子さん、清水建設グループ会社トータルオフィスパートナーの川又絢子さんにお話を伺いました。

「仕事はあるけど人がいない」建設業界全体が抱える深刻な問題

<写真右より、清水建設株式会社の遊佐さん、土井さん、川又さん>

–現在の建設業界における人手不足はどのようなものでしょうか?

遊佐純一郎さん(以下、遊佐):建設業界に勤める人は、平成9年の約685万人をピークに、平成27年では約500万人にまで減少しています。また高齢化も深刻です。就業者の3割が55歳以上となっており、29歳以下は1割しかいません。

さらに平成27年には高卒入職者もピーク時の半分程度の1.4万人にまで減少しています。オリンピック特需で仕事はあるけれど人手が不足している。これは、業界全体の課題です。1〜2年という短期間ではなく、10〜20年という長い目で見た継続的な供給力の確保を考えてなくてはいけません。

–建設業界が他の業界と比較して、人手不足が深刻なのはなぜでしょうか?

土井理子さん(以下、土井):建設業界は“きつい”“危険 ”など労務環境に対するネガティブイメージを持たれてしまうため、若い入職者が少ないことが問題だと思います。

–清水建設としてどのような対策をされたのですか?

土井:若い人に建設業の仕事の魅力を理解していただき、入職者を集うこと目標に、今回の活動が始まりました。

最初に、協力会社の方に採用の現状をヒアリングしました。各社、求人情報誌や一般のサイトを利用したり、工業高校にパンフレットを置く、友人・知人に声をかけるなどの求人活動を行っているが、なかなか人材確保に結びついていない状況であるというご意見が多かったのです。

そこで、当社として何かできることがないか考えたときに、当社が求人サイトを開設し、清水建設の信頼する協力会社として紹介をしたらどうかと持ちかけたところ、ヒアリングした企業の方から賛同の声をいただきました。

遊佐:当社がサイトを運営することで、掲載企業への清水建設の信頼を証明することができ、求人にも効果があるのではと考えました。さらに、求人情報だけでなく、建設業界全体の理解を深めてもらえるツールにもしたい。そこで、2016年11月に求人サイト『匠を目指す人集まれ!』の立ち上げの準備をスタートしたのです。

ターゲットは普通科の高校生、建設業界に興味を持てるサイトを目指す

–『匠を目指す人集まれ!』はどのような構想でスタートしたのでしょうか。

遊佐:目的は、協力会社の採用支援と業界全体の人材確保です。給料や休日などの待遇を単純比較するサイトではなく、企業の掲載数を重要視しながらも、若い世代が建設業界に興味を持ってもらえるようなアプローチをしています。

土井:今回のサイトは、ターゲットを高校生という設定で考えました。専門的な勉強をした工業高校の生徒だけではなく、普通科の建築を知らない人も対象としています。
加えて、生徒が就職の相談をする先生やご両親にも建設業界の理解を深めてもらわなくてはいけません。専門知識や建設業に携わっていない人にも、建設業の魅力が伝わるようにするという点には特にこだわりましたね。

トップページのメッセージには、サイトを見てくれる若い人に、このサイトを開設した当社の思いを込めました。「Hang in there!新しい日本をつくるのは君だ!」というメッセージから、「仲間と」、「磨く」、「匠の技」、「未来へ」とスライドしていきます。デザインを川又さんと決めるときも、いくつか提案頂いた中から、高校生の息子さんやお嬢さんがいる人の意見を集めて決めました。

–具体的にはどのような施策をとられていますか?

土井:まずは、建設業の仕事を知ってもらうことが第一歩ですので、サイト内に、職種ごとに仕事や工事の内容を紹介するコンテンツを用意しました。

–確かに「とび職」や「はつり工」と聞いても具体的な仕事の内容がイメージしづらいですよね。
<『匠を目指す人集まれ!』の仕事紹介。イラストを交えたわかりやすい文章が特徴>

土井:専門知識がない人でも理解しやすい言葉と、イラストで紹介しています。例えば、「石工事」の説明では、「建物の高級化粧品」という表現を使っています。建設業界にいる人が見たら、物足りないと思うかもしれませんが、専門知識がない人にどういう工事か想像しやすい表現を起用しています。

–それはわかりやすいですね!

土井:ほかには「土工事」の「土を制する者、建築を制する」という説明や、「解体工事」の「新しい建物にとってはプロローグであり、古い建物にとってはエピローグである」が個人的にお気に入りの表現です。これらの文章をつくるときは、専門工事の協力会社の方々に協力していただきました。
対象を普通科の高校生として、どんな言葉で伝えられるかを一緒に考えながら作り込みました。コンテンツは、協力会社の方と一緒に作ったものだと思っています。

知って、見て、触ってもらい、ものづくりに対する興味を育む


–リリース後の反響はいかがですか?

土井:高校生にサイトを紹介する機会があり、後で見た生徒から「わかりやすい」と言ってもらえたときは嬉しく思いました。また、学校の先生がサイトを見て生徒に紹介し、掲載企業に問い合わせがきたという事例もあります。

–ローンチから4カ月経ちましたが、企業登録数も増えています。

土井:現在、約440社(2017年9月21日時点)です。最初は首都圏の協力会社を掲載し、現在は九州から北海道まで登録があります。また、今後更に登録数を増やしていきたいと思っています。

遊佐:登録会社が増えることで仕事の種類も豊富になり、担い手を雇用できる企業も増えてくるでしょう。当面は、土木関連を充実させること、全国的に様々な業種の会社を網羅することが目標になりますね。

動画や記事を通して、建築業への親近感を感じてもらいたい

<鉄筋検査をする職長の秋丸竜司さん。現場の頼れる兄貴的存在。(鉄筋工)>

<イケメン先輩職長の柴田裕作さんに指導を受けながら仕事を学ぶ10代職人の遠藤虹兵さん。(土工)>

<ベテラン職長さんと共に働く笑顔が素敵な女性職人の伊藤千里さん。(型枠解体工)>

–今後はどのようにサイトを運営していく予定ですか?

土井:「職人さんの声」を掲載したいですね。今回、現場で職人の皆さんの働く姿を撮影しに行きましたが、働く姿はすごく活き活きとしています。現場を視察した際に会った17歳の職人さんは、日々変化する現場や自分の成長が楽しいと言っていました。そういった現場の「生の声」を伝えていきたいですね。

遊佐:現場では、30〜40代の職長さんが多いんです。皆さん、考え方もしっかりしていて技術もある。まさに「頼れる兄貴」って感じで(笑)。そういった方たちのインタビューもあると、これから業界に入ってくる若い世代にも親近感が生まれるのではと思っています。

–建設業界はネガティブなイメージばかりが先行して、やり甲斐の部分が注目されにくい傾向にありますね。

土井:今回の活動でインタビューした職人さんがしてくれた話には感動しました。
父親が大工だったが、自分は大工になるつもりはまったくなかった。しかし、ある日父親が嬉しそうにお酒を飲みながら「施工が終わった家の施主の息子さんが、家の完成を泣いて喜んでくれた」という話をしてくれた。その話を聞いて、自分も人に喜んでもらえる誇りのある仕事をしたいと思い、大工になることを決意したと。インタビューの最後に、「人に喜びを与えられる仕事」という言葉は心に強く響きました。そういう言葉を伝えることができるサイトにしたいです。


–ものづくりの醍醐味ですね!

土井:ほかにも、親子で左官業をされている方が「腕がある限り、退職はない」と仰っていたのも、非常に印象的でした。40代と70代の親子で、切磋琢磨しながら同じ仕事を続けている姿も素敵でした。

遊佐:父と子が2代、3代と技術と気持ちを継承している。すごく貴重な職業ですよね。こういった建設業界でしか味わえない魅力を発信していきたいですね!

–若い世代には動画なども有効かもしれませんね。

土井:今後は、動画や漫画など若い層にアピールできるコンテンツを強化していきたいと思います。

遊佐:海外では、小学校から職業がそれぞれどのような仕事なのかを学ぶカリキュラムがあるそうです。日本では建設業界への理解がまだまだ低いと感じています。小中学校で建設業について知ってもらい、高校で興味を持ってもらえるような土台を業界全体で考えていかなくてはいけません。

建築業界は知れば知るほど面白い業界です。『匠を目指す人集まれ!』では、語られることが少なかった業界の魅力的を伝えていきたいと思います。

建築業って面白そう!かっこいい!と思う若い世代が増えていけば、人手不足の問題も徐々に解決していくはず。建設業界は、やりがいもあり、人に喜んでもらえる仕事です。その魅力を伝える清水建設の試みに、今後も注目していきたいところです。

●『匠を目指す人集まれ!』施工協力会社求人情報サイト
https://www.shimztakumi.com/

 

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