今日も建設業界では、企業間でたくさんの契約が交わされています。その締結には契約書をはじめとして様々な書類が作成されるため、書類に「収入印紙」を貼る機会も多いのではないでしょうか。
実は収入印紙のルールは意外に細かく、何も考えずただ貼るだけではペナルティが課せられてしまうことも。ここでは、知っているようで意外と知らない収入印紙のことを、Q&Aを交えながら解説していきます!
どうして収入印紙を貼る必要があるの?

そもそも、収入印紙はどういった用途のために使われるのでしょうか?それは、契約書や手形、領収書などの文書に対して課される「印紙税」を納めるためです。
でも、自分で作成した文書に税金がかかるのはどうしてでしょう。その理由を、国税庁のWebサイトではこう説明しています。
印紙税は、文書の作成行為の背後にある経済的利益、文書を作成することに伴う取引当事者間の法律関係の安定化という面に担税力を見出して課税している租税
引用元:https://www.nta.go.jp/ntc/kenkyu/ronsou/42/souma/hajimeni.htm
むむむ、ちょっと内容がむずかしいですね…。これは簡単に言うと、「利益が発生する取引の際に作成される文書の信憑性は、法律によって担保します。その代わり、その負担分の税金を払ってくださいね」ということなのです。つまり、収入印紙を貼ることによって、そのやり取りが真実だということを法律によって証明できるわけですね。
どんな種類の文書に印紙税がかかるの?

では、どんな種類の文書に印紙税がかかってくるのでしょうか。
印紙税が課せられる「課税文書」は、国税庁が定めている第1号文書から第20号文書までの20項目です。その中から、建設業界でよく取り交わされる文書をいくつかピックアップすると、工事請負契約書や工事注文請書、工事下請負基本契約書、業務委託契約書、手形、領収書などがそれにあたります。詳しい内容が知りたい場合は、国税庁が公開している印紙税額の資料を読んでみてください。
【印紙税額】
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/inshi/pdf/zeigaku_ichiran.pdf
また、収入印紙には「消印」が必要です。せっかく収入印紙を買って貼りつけても、消印が押されていなければ印紙税を納付したことにはならず、税務調査で指摘を受けてしまう可能性があるのでご注意を。
それでは、堅苦しい話ばかり続いても退屈なので、ここからは収入印紙に関する知識をQ&A方式で学んでいきましょう!
Q&Aで学ぼう!収入印紙のこと
Q:収入印紙を貼り忘れたり、消印を押さなかったりしたらどうなるの?
A:貼り忘れた場合は、本来納付すべき額の3倍の過怠税(※)が課せられます。また、消印が押されていない場合は、消印されていない収入印紙と同額の過怠税が課せられます。
「貼り忘れ」もしくは「貼らなければいけないことを知らなかった」のどちらであっても未納扱いになります。ただし、貼り忘れに気がついて自主的に申し出た場合は、1.1倍に軽減されます。また、過怠税は、その全額が法人税の損金や所得税の必要経費には算入されませんので注意が必要です。
※ 貼り忘れた印紙相当額の追徴と、印紙を貼り忘れたことに対するペナルティの意味合いを持つ税のこと。
Q:収入印紙のない契約書は、無効になるの?
A:無効にはなりません。
印紙税法で問われるのは、「収入印紙を貼らなかったという行為」に対してです。そのため、その契約書の有効性には影響しません。
Q:消費税には、印紙税が課されるの?
A:消費税や地方消費税の金額(以下、消費税額等)が別記されている場合は、課税されません。
例えば(例1)(例2)では、どちらも消費税額等が別に記載されているので、500万円に対してのみ課税がされます。


しかし(例3)では別記されていないので、消費税額等が含まれた540万円に対して課税がされます。

表引用:https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/inshi/03/03.htm
Q:メールやPDFで取引を行う場合、収入印紙は必要なの?
A:書面の契約書を作成しない場合は必要ありません。
発注や請負をメールのみで行った場合や、領収書をPDFで作成した場合などは課税文書に該当しないため、収入印紙は不要です。ただしその後にプリントし、正本として使用した場合には、課税文書の対象になる可能性があります。
Q:もし収入印紙を誤って貼ってしまったら?
A:一定の手続をして、印紙税の還付を受けることができます。
印紙税を納付する必要がない文章に印紙を貼ってしまった場合や、定められた金額を超えて貼り付けた場合に限ります。ただし、その文書をそのままの状態で所轄税務署に持参する必要があります。
Q:間違えて買ってしまった収入印紙は交換できるの?
A:未使用のもの、汚損していないものに限り、郵便局で他の金額の収入印紙と交換することが可能です。
ただし、現金に交換することはできません。また、交換の際には収入印紙1枚につき5円の手数料が必要です。
Q:「仮請負契約書」の後日に「本契約書」を送付する場合、本契約書にも収入印紙は必要なの?
A:収入印紙の貼付が必要です。
印紙税法上での契約書には「予約契約書」も含まれます。つまり、仮請負契約書がそれに該当するため、後日に本契約書を作成する場合でも、両文書に対して収入印紙が必要になります。
Q:工事を発注する際に交付する「注文書」にも、収入印紙を貼る必要があるの?
A:必要ありません。
「注文書」「申込書」「依頼書」などの文書は、一般的に契約の申しこみを証明するために作成されるので、契約書には該当しません。
ただし、契約の成立を証明する目的で作成されるものについては契約書に該当するため、収入印紙が必要になります。
◆おまけ◆ 建設工事請負契約書の印紙税が安くなるケース
現在、租税特別措置法によって印紙税の軽減措置が取られています。対象となるのは下記3点の全てを満たす契約書です。
- 請負に関する契約書(建設工事の請負に係る契約に基づくもの)
- 金額が100万円を超えるもの
- 平成26年4月1日~平成30年3月31日までに作成されるもの
これらの条件を満たす契約書であれば「変更契約書」や「補充契約書」なども軽減措置の対象になります。税率は下図のとおりです。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
100万円を超え 200万円以下のもの | 400円 | 200円 |
200万円を超え 300万円以下のもの | 1千円 | 500円 |
300万円を超え 500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え 5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え 10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え 50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
表引用:https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/inshi/12/03.htm
印紙税について正しく学び、正しく納税しよう!
せっかく取引が円滑に行われても、収入印紙の貼り忘れや消印の押し忘れが原因で税務調査を受けてしまっては、せっかくの仕事にもケチが付いてしまうというもの。
この機会に、自社でよく作成される文書には、いくらの収入印紙が必要なのかを確認してみてはいかがでしょうか。正しく納税できるとともに、思わぬ節税につながるかもしれませんよ。
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