初年度に知っておきたい!「労働保険年度更新申告書」の書き方と注意点

毎年6月頃、事業主に送れられてくる「労働保険料・一般拠出金 申告書」。封筒の中には従業員が加入しなければならない労働保険更新の申告書などが入っていますが、記入しなければならない項目が多く、特に初めて申告する方はひとつひとつ確認しながら記入していくため、時間がかかってしまいがちです。

しかし労働保険年度更新申告書は、書き方の流れとポイントをしっかりおさえておけば、それほど面倒ではありません。

従業員の生活や安全を守るためにも、労働保険の申請・加入は事業者の義務。毎年行う更新手続きは、知っておかなければいけないことです。そこでこの記事では、労働保険年度更新申告書をスムーズに作成するための3つのポイントを解説していきます。

労働保険とは?申請に必要な”対象者”と“賃金”の定義

まずは、労働保険とは何かをおさらいしておきしょう。労働保険は「労災保険」と「雇用保険」を合わせたもので、労働者の雇用と生活を守るために、雇用者はどちらも加入する必要があります。それぞれどのような保険なのかみていきましょう。

労災保険(労働者災害補償保険)

従業員が、仕事中にケガや病気になったときに補償する保険です。パートやアルバイトなどの雇用形態に関係なく、すべての従業員が加入しなければいけません。保険料は、全額会社が負担します。

雇用保険

従業員が失業したときに備えて加入する保険です。労働時間が週20時間以上で、31日以上の雇用が見込まれる人は、パートやアルバイトなど雇用形態は関係なく、加入する義務があります。保険料は、従業員と会社がそれぞれ負担します。

このふたつを合わせたのが労働保険になります。有効期間は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間とされ、これを保険年度といいます。保険料は、この保険年度内で事業主がすべての労働者に支払われる賃金の総額に、事業種別に定められた保険料率を乗じて算定されます。

なお、年度更新の手続きは、毎年6月から7月初旬までの間に行わなければならず、手続きが遅れると追徴金を課される場合があるので注意しましょう。

“賃金”に含まれるもの・含まれないもの

労働保険を申請するときに使われる“賃金”には、認められるものと、そうでないものがあります。以下の表に主な内容をまとめたので確認してください。

賃金とするもの 賃金としないもの
基本賃金・賞与・通勤手当(定期券・回数券)・超過勤務手当(深夜手当等)・扶養手当(子供手当・家族手当)・技能手当(特殊作業手当)・住宅手当・奨励手当など 役員報酬・結婚祝金・死亡弔慰金・災害見舞金・年功慰労金・勤続褒奨金・退職金・出張旅費(宿泊費)・工具手当・休業補償費・傷病手当金・解雇予告手当など

年度更新手続きの流れ

年度更新は、以下の流れで手続きが進められます。

今回は、2と3の書類の作成の仕方について詳しく解説していきます。

【ポイント1】「確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表」を使って“概算保険料”と“確定保険料”を算出しよう

https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudouhoken01/yousiki.html

実際に労働保険年度更新申告書を作成する前に、まずは“算定基礎賃金集計表”を活用して、“概算保険料”と“確定保険料”を算出します。

概算保険料とは
新年度に従業員に賃金として支払う見込みの総額から雇用保険料と労災保険料を算出した保険料です。概算保険料が決定したら、会社はまとめて前払いで納付します。

確定保険料とは
今年度末に実際に支払った賃金の総額から雇用保険料と労災保険料を算出した保険料です。たとえば、1年前にさかのぼり、従業員が増えて前払いで納付した保険料が不足する場合があります。このズレを概算保険料と合わせて清算していくのが、労働保険年度更新申告書の手続きになります。

“確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表”を作ろう!

“確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表”で、確定保険料を計算します。

まずは賃金を支払っている全労働者の一覧を用意し、(1)常用労働者(2)役員で労働者扱いの人(この場合、実質的な役員報酬分を除く)(3)臨時労働者の3つに分けます。“確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表”を作成する上で、迷うのが常用労働者と、臨時労働者の区別。違いは、以下になります。

常用労働者とは 臨時労働者とは
・雇用保険に加入している人
・パート、アルバイト、日雇労働者で雇用保険に加入している人
(同居の親族は原則該当しない)
・主にパート、アルバイトで雇用保険に加入していない人(被保険者で賃金の支払いが発生しているすべての人)

役員の中で、役員報酬のみ支払わられている方は、対象外になります。ここでは、役員を兼務し、労働者として認められる方で、役員報酬を除いた賃金を記入します。

また、平成29年4月1日時点で、満64歳以上の高年齢で被保険者の労働者は、雇用保険が免除されます。したがって、雇用保険分の保険料算定基礎額からは除外します。

こうして対象労働者を確認しながら人数と賃金を記入して集計していきます。なお、厚生労働省のサイトからダウンロードできる「年度更新申告書計算支援ツール」を利用すると、集計がさらに簡単になるのでぜひ利用してみてください。

厚生労働省(労働保険関係各種様式)支援ツールダウンロード
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudouhoken01/yousiki.html

【ポイント2】労災保険率表を確認する

算定基礎賃金集計表で集計した数字をもとに、確定保険料と概算保険料額を計算し、申告書に記入していきます。各保険料は、以下の計算式で算出します。

“労災保険料率”と“雇用保険料率”は事業の種類(業種)ごとに、54の区分に分類されていて、業務災害、通勤災害に応じて定められています。申告書に同封されている下敷きに労災保険率が記載されているので、自分の業種はどの区分なのかを確認して算出しましょう。

労災保険率表(平成30年4月1日施行)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000198405.pdf
雇用保険率
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000192647.pdf

一般拠出金について
一般拠出金とは、石綿(アスベスト)で健康被害にあった人たちの救済費用の負担金です。これは業種にかかわらず一律で課せられます。算出方法は以下のとおりです。

たとえば賃金総額が1000万円の場合、一般拠出金は200円になります。

今年度支払う予定の労災保険料、雇用保険料が決定したら、概算保険料を算出し、申告書に記入しましょう。

Aでは、実際に納付する確定保険料から前年度に納付した概算保険料を引いた差額を算出します。このとき、概算保険料よりも確定保険料のほうが少なければ、その差額は還付金として戻ってきます。確定保険料のほうが実際に納付している概算保険料も高い場合は、年度更新時に余剰分を今年度の概算保険料(C)と合わせて納付します。

【ポイント3】申告書を記載するときに注意することは?

「免除対象高齢者」について
4月1日現在で満64歳になる高齢者は、平成31年度までは雇用保険が免除になります。

平成29年度(確定)から免除になる人は、昭和28年4月1日までに生まれた人。平成30年度(概算)から免除になる人は、昭和29年4月1日までに生まれた人になります。なお、4月1日生まれの人は含まれるので注意しましょう。

「納付回数」は3回まで!?
概算保険料総額が40万円以上(労災保険または雇用保険のどちらかのみ成立している場合は20万円以上)の払込金額は、3回までの延納が認められています。延納を希望する場合は、“延納の申請欄”に“3”と記載し、“期別納付額欄”のところに、1〜3期までの納付する金額を記載してください。

「充当意思」とは?
確定保険料が、申告済概算保険料より少なかった場合は、その差額を今年度の概算保険料や、一般拠出金の納付金額に充当することができます。その余剰金を、どの保険料に充当するかの意思を表明することができます。

やり方は“充当意思”の欄に、希望の番号を記載するだけです。

労働保険料に充当を希望する場合 充当意思の欄に“1”と記載。
労働保険料に充当後、さらに差額が余る場合でも一般拠出金には充当はできないので一般拠出金はすべて納付する必要があります
一般拠出金に充当を希望する場合 充当意思の欄に“2”と記載。
一般拠出金に充当後、さらに差額が余る場合でも労働保険料には充当はできないので労働保険料はすべて納付する必要があります
労働保険料と一般拠出金の両方に充当を希望する場合 充当意思の欄に“3”と記載。
労働保険と一般拠出金に充当します。充当金ですべての保険料を支払える場合は、申告書の提出は必要ですが、保険料の納付は必要ありません。さらに差額があまる場合は、“労働保険料・一般拠出金還付請求書”を提出すれば、保険料が戻ってきます

申告書は、持参、郵送または電子申請も可能

申告書が作成できたら書類を管轄の労働局、労働基準監督署、または社会保険・労働保険徴収事務センターに提出します。提出方法は、以下3つの方法があります

書類を持って来庁または郵送
管轄労働局、労働基準監督署、社会保険・労働保険徴収事務センター(年金事務所内)に、申告書と領収済み通知書(納付書)を持参、または郵送も可能です。

銀行や郵便局で労働局に提出
原則、銀行、郵便局でも申告書と納付書を切り離さず提出すれば、申告書を労働局に送付してくれます。ただし申請書が返却された場合は、管轄の労働局に郵送する必要が出てきます。

電子申請
マイナンバーカードと、カードリーダーがあれば、自宅や事務所から申請書が簡単に提出できます。また保険料はインターネットバンキングで支払いができます。e-Gov(電子政府)ホームページにアクセスして書類を作成し、提出・納付してみましょう。

電子政府の総合窓口「e-GOV(イーガブ)」
http://www.e-gov.go.jp/
電子政府利用支援センター」
TEL 050-3786-2225(050ビジネスダイヤル)

まとめ

つい税理士や社労士に任せてしまいがちな申告書ですが、労働保険年度更新申告書の記入は、一度やれば次からは比較的簡単にできます。自分で書類を作成することで労働者の賃金や、支払わなければいけない保険料などもわかり、事業主として会社の経営状態が把握できます。公的な資料は、たくさん情報があって難しく感じるかもしれませんが、労働保険について把握することは、従業員を把握することにつながり、経営面にもいい影響を与えるはず。初年度に書き方のコツさえつかめば、翌年以降の更新は、楽になるはずです。

確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表と、年度更新申告書計算支援ツールを活用してしっかりと申告書を作成し、提出しましょう。

 

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