労働災害の防止・低減を実現! 「コスモス(COHSMS)」「コンパクトコスモス」とは?

コスモス、コンパクトコスモスイメージ

危険と隣り合わせの建設業の作業現場。もちろん安全対策はしているけれども、何から始めていいかわからない…。そんなときにぜひ活用したいのが、「建設業労働安全衛生マネジメントシステム」、通称「コスモス(COHSMS)」。リスクを事前に察知し、潜在的な危険性・有害性について組織的かつ体系的に除去・低減するための安全衛生のガイドラインです。これにしたがって現場の安全管理を整えれば、自主・自律的な安全衛生管理が可能になります。労働災害の防止・低減を促進するこの仕組みについて、建設業労働災害防止協会 技術管理部長の本山謙治氏にお話をうかがいました。

建設業界の安全衛生水準の向上を図るガイドライン「コスモス」

「建設業労働安全衛生マネジメントシステム」はConstruction Occupational Health and Safety Management Systemの頭文字をとって通称「COHSMS(コスモス)」と呼ばれています。その始まりは1999年4月、厚生労働省が公表した「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」。これに基づいて建設業労働災害防止協会(以下、建災防)が「建設業労働安全衛生マネジメントシステムガイドライン」を開発しました。

コスモスの特長は、店社と作業所(作業現場)が一体となって「計画(P)-実施(D)-評価(C)-改善(A)」のサイクルを回すことで、作業所における労働災害の潜在的な危険有害要因を取り除く仕組みにあります。同時に、健康の増進と快適な職場づくりを実現し、建設企業の安全衛生水準の向上を目指します。

その後の改訂を経て、2018年4月には、近年の労働安全衛生面の国内外の変化に対応した最新のコスモスガイドラインも公表。改訂されたコスモスガイドラインは、建設業を取り巻く環境及び時代の変化に伴い、新たにICTによる本質的な安全化やメンタルヘルス対策の要素が追加されています。
「メンタルヘルスの重要性は、最初なかなか理解されませんでしたが、徐々に受け入れられてきました。それはメンタルヘルスが労働災害防止を進める上で必要不可欠な取り組みであると理解されてきたからです」と建災防 技術管理部長の本山謙治氏。

●なぜコスモスが必要なのか
なぜコスモスが必要なのか
(資料提供/建設業労働災害防止協会)

コスモスが生まれた背景には、少子高齢化が進んでベテラン社員が現場を離れ始め、施工現場の安全衛生管理のノウハウが継承されにくくなっている現状があります。これまでのような個々の経験に頼る事後対応型の安全管理では、労災防止には不十分になってきているのです。

「コスモスはリスクにあらかじめ対応する先取り管理方式。組織的かつ体系的に取り組むことでリスクを見逃すことなく、現場の状況に対し、柔軟に対応できる仕組みです。これまで建設企業が取り組んできた安全衛生管理活動のノウハウをもとに構築しているので、従来、各社で実施してきたやり方を生かすことができます」。

コスモスの導入効果は、データ上でも明らかになっています。一般の事業場でも労働安全衛生活動を実施しているので労働災害は減少していますが、コスモス認定を受けた事業場のほうは、さらに19.5ポイント減少幅が大きいことがわかります。

●コスモス認定の効果
COHSMS認定の効果 認定前後の災害指数

コスモス認定の効果
(資料提供/建設業労働災害防止協会)
https://www.kensaibou.or.jp/safe_tech/cohsms/files/COHSMS_result.pdf

コスモス認定以降、定期的な指導でさらに安全衛生水準を向上

コスモス認定は、建災防が建設事業場からの申込みを受け、労働安全衛生マネジメントシステムの構築・実施状況を、コスモスガイドラインに従って評価するものです。コスモスの基準に適合している場合に、認定されます。

まずは、資格を有した評価者が書面調査及び実地調査を実施。その後、

  • 対象の建設事業場で労働安全衛生マネジメントシステムの構築・実施状況がコスモス認定基準に適合していると評価される
  • コスモス認定審査会により評価者による評価が客観的かつ公正に行われたと認定される

という過程を経て、コスモス認定証が交付されます。

この認定の目的は、あくまでもコスモスガイドラインに基づく労働安全衛生マネジメントシステムが建設事業場に適切に導入され、安全衛生水準の向上の促進に資することです。

認定の際、コスモスの評価者が建設事業場で現況を確認し、改善点等があれば指摘・指導を行います。認定後も、定期的に安全衛生計画や実施状況の記録など所定の書類を提出・報告していただき、さらに指導を行います。その繰り返しで、安全衛生管理の向上を目指します。第三者のプロによるコンサルティングを受けられるのが、コスモス導入のメリットの一つですね」。

コスモス認定には規定の料金が必要なものの、安全衛生管理のシステムが確立した後には、下記のような多岐に渡るメリットが期待されます。

  • 安全衛生管理のノウハウの確実な継承と人材育成
  • 安全衛生管理・活動の役割の明確化と確実・効率的な実施
  • 組織風土にマッチし、独創性に富んだマネジメントツールの開発
  • 安全衛生水準の継続的な向上
  • 日常の安全衛生活動への適正な評価
  • 建設企業としての健全性・信頼性の向上
  • 時代に即した安全衛生のコンサルティングを受けられる

中小企業向けのコンパクトコスモスは低コストが魅力

コスモスの普及・促進のため、2019年4月に開発されたのが、中小事業場向けの「コンパクトコスモス」です。「対象となるのは労働者50人程度の事業場で、本社と作業所の間に支店等がなく、本社が全ての作業所を直轄で管理しているような企業です」と本山氏。

こうした企業には以下のような傾向があるため、従来のコスモスは、中小規模の事業場での導入・運用にあたっては、負担が大きいことが指摘されており、傾向と現状に即した仕組みを求める声がありました。

  • 工事最盛期にはほとんどの社員が工事を担当するので、本社の施工管理機能、安全衛生管理機能が十分ではない時期がある
  • 組織的に小規模なので、安全衛生管理の仕組み自体が比較的簡便
  • 施工する工事の種類が比較的少ないことから、想定される安全衛生リスクがある程度限定される
  • 社長の権限およびリーダーシップが強い傾向にあり、労働者が少ないこともあって意思疎通が図りやすい

「本社と現場が密接な関係にあるため、現場所長が本社の工務部長も兼ねているなど、管理がよりシンプルになります。従来のコスモスでは、店社が実施する基本項目が17、作業所の基本事項が14あるのですが、共通する項目が8つ。中小規模の会社ではその8つは同時に本社が管理できるので、その分を省くことができます」。

●コンパクトコスモスの基本的考え方
コンパクトコスモスの基本的考え方
(資料提供/建設業労働災害防止協会)
※ニューコスモスとは、2019年4月1日に改訂した最新版のコスモスを指す

建災防によるコスモス認定の際にも、チェック項目が少なくなるため、導入費用も割安に。認定費用は従来のコスモスの半分ほどの金額です。
「本社と作業所の役割分担を明確にしたうえで、従来は本社が実施していた事項を作業所でも活用し、建設事業場全体でコスモスを運用します」(本山氏)。

●コンパクトコスモスにおける基本的事項の運用
コンパクトコスモスにおける基本的事項の運用
(資料提供/建設業労働災害防止協会)

コスモス認定を受けている建設事業場は134件(110社)、適用事業場は303か所となりました(2020年2月26日現在)。また、コンパクトコスモスは2019年12月、第1号となる企業が認定されました。

コンパクトコスモスでは、運用の手引きのひな型も用意されています。「コンパクトコスモス運用の手引き」付録のCD-ROMに、社名や責任者などの必要事項を記入するだけで認定に必要なツールを作成できるファイルがあります。活用すれば、コスモス導入がぐんとスムーズになりそうです。
◎コンパクトコスモス運用の手引き

「建設業の労働環境は、働き方改革や技術革新の影響を受けて、これからどんどん変わっていきます。安全衛生水準の向上は、労使間の信頼関係や企業経営の安定、企業の社会的評価にも関わるもの。ぜひ積極的にコスモス、コンパクトコスモスを活用してほしいですね」。

建設業労働災害防止協会では、安全衛生担当者、企業管理者、工事発注担当者等を対象にコスモスの研修会や関連する説明会を毎年度、全国で開催しています。詳しくは同協会のホームページをご確認ください。
◎コスモスの研修会

■参考
建設業労働災害防止協会 コスモスについて
https://www.kensaibou.or.jp/safe_tech/cohsms/index.html

 

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