技能者の祭典「技能五輪全国大会」で、日本一を目指す若者たちを追った!

日本のものづくりに携わる若者にとって「一世一代の大勝負」とも言うべき大会が、平成28年10月21日(金)~24日(月)の4日間にわたり山形県で開催されました。その大会とは「第54回技能五輪全国大会」です。

本大会は、建設・建築系のみならず機械系や金属系、電子技術系など合計41職種の競技種目において、若者が鍛えぬいた技能を披露し合い、日本一を競うイベント。競技に参加できるのは、大会開催の年に満23歳以下の青年技能者(一部の職種を除く)。現役の職人のみならず、学生も数多く参加しているのが特徴です。

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※表は大会公式Webサイトの大会概要ページより引用。

ケンセツプラス編集チームは、23日(日)に山形ビッグウイングにて開催された石工、左官、造園、とびの競技。そして、24日(月)に山形県総合運動公園にて開催された閉会式を取材してきました。

今回は、その様子をレポートします!

若手技術者同士がしのぎを削り合う。競技選手権の会場に潜入!

「とび」部門

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会場に到着し、まず足を運んだのは高所での作業を専門とする職種「とび」の競技会場です。建設現場において、とびが担う重要な仕事の1つである「足場組立解体」の実技が行われていました。

とびが組み立てる足場に他職は命を預けるため、その責任は重大。だからこそ、他職にとって安全な環境で、かつ作業をしやすいような足場を組むという高度な技術が求められます。

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その後ろ姿には、現場を守る者としての“風格”が醸し出されています。

「石工」部門

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次に足を運んだのは、石材の加工や組み立てを行う職種「石工」の競技会場です。課題は「一定時間内に、みかげ石を加工して課題図として示された製品を製作する」というもの。参加者は一心不乱に石を削り続けていました。

本課題では、小たたき仕上げ、ビシャン仕上げ、角出し、直角度、アール加工、削り込みなど、石工の仕事において必要となる基礎技術をフルに活用しなくては製品を完成させることはできません。だからこそ、職人の持つ総合的な技量が求められます。

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高い集中力の求められる作業に、参加者の眼差しは真剣そのもの。ノミと槌、そして研磨機械などを駆使して、丁寧に製品を仕上げていました。

「造園」部門

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次に足を運んだのは、庭園などの空間を造る職種「造園」の競技会場。特定の区画内に石積みや石張り、ベンチ、池、木柵、植栽、芝生張りなどを行い、和風と洋風の技法を織り交ぜた総合的な技能の熟練度を競います。

他の競技とは異なり、本競技の参加者は2人1組のペアになって課題に取り組みます。だからこそ、個人技だけではなくチームワークも必要。互いに声を掛け合い、息の合った作業が繰り広げられます。

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徐々に美しい庭園が形作られていく様子に、観客からも「キレイ!」「家の庭もあんな風にしたい!」といった感嘆の声が漏れていました。

「左官」部門

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最後に足を運んだのは、建築物の壁や床、土塀などを、こてを使って塗り仕上げる職種「左官」の競技会場。素材の性質を熟知した置引きの技法や造形美、接合部の美しさなどが競われます。

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競技終了後、ケンセツプラス編集チームは運良く、この「左官」部門に参加していた「ものつくり大学」の関係者にお話を伺うことができました。

「普段通りに、自分の力を出し切れた」ものつくり大学の学生、OB、教授が語る。競技を終えての感想

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取材に応じてくれたのは、以下の4名です。

【大会参加者】

田中健太さん(写真左上) ものつくり大学 技能工芸学部建設学科 学生

小室和博さん(写真右下) ものつくり大学 技能工芸学部建設学科 OB 現在は岡建工事株式会社に勤務

【指導者】

三原斉さん(写真右上) ものつくり大学 技能工芸学部建設学科 教授

八幡俊昭さん(写真左下) ものつくり大学 技能工芸学部建設学科 非常勤講師

彼らはどんな思いで、本大会に臨んだのでしょうか?

どうもお疲れ様でした!競技を終えてみて、今はどんな心境でしょうか?

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小室:ひとまずは、ホッとしたというのが正直な気持ちです(笑)。本番では、普段通りに自分の力を出し切れました。実は僕、去年もこの大会に参加して銅賞を受賞したんですが、今年はもっと良い賞が貰えると良いなあと思っています。

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田中:とにかく緊張しました……。でも、練習の時から時間配分を考えたりして、本番と同じような条件でトレーニングできていたので、自分がイメージしていた通りに塗れました。それがすごく嬉しいです。

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三原:2人とも、本当に良く頑張っていましたよ。練習していたことを、十二分に発揮できたように思います。

ものつくり大学では、普段から授業の中で技能実習を中心に教えていらっしゃるんですか?

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三原:はい。実は、そこがウチの大学の特徴なんです。これを話すとなんだか宣伝みたいになっちゃいますけれど(笑)。他の建設系大学は座学が主な授業内容であるのに対し、ものつくり大学では「実習をメインに据えた上で、座学も行う」という授業内容となっています。だからこそ、学生たちは実習を通じて建設の仕事内容を肌で感じることができますし、技能が身についているから現場に行っても即戦力になれるのです。

ということは、それを教えている講師の方々も、現場で作業経験のある方が多いのでしょうか?

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三原:あ、それに関しては、八幡先生。ぜひ話して下さいよ。

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八幡:どうもこんにちは。私は普段、ものつくり大学の非常勤講師として技能を教えているのですが、実は有限会社八幡工業で左官工事業やリフォーム工事業を営んでいる現役の職人でもあるのです。自分の教えた学生たちが、こうやって晴れの舞台で活躍してくれるのは、やはり達成感がありますよ。

現役の職人でしたか!その経歴を持った方が技能を教えてくれるというのは、本当に恵まれた環境ですね。

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八幡:そう言ってもらえるとありがたいです。私は職人として何十年も経験を積んできましたから、左官の技能に関して一通りのことは教えられます。大学での実習を通じて、学生たちが大会に出場するくらい立派に育ってくれるのは本当に嬉しいですね。

その環境で腕を磨いていれば、学生たちも自然と技能が身につきそうですね。ちなみに、もし可能ならなんですが……。明日の閉会式での成績発表に同席させてもらってもいですか?お話を伺っていたら、結果がすごく楽しみになってきて。

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三原&八幡:はい、もちろん。大丈夫ですよ!

ありがとうございます!小室さんと田中さんが入賞するといですね。応援しています!

いよいよ閉会式。気になる入賞者は……

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そうして、一夜明けた24日(月)。参加者とその関係者が一堂に会し、閉会式が行われました。会場内がライトアップされ、厳粛な雰囲気に包まれます。

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まずは、大会の会長である中央職業能力開発協会の釜和明氏。そして、主催者である厚生労働省・大臣官房審議官の和田純一氏によって、閉会式の挨拶がなされました。

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続いて、技術委員長である職業能力開発大学校の岡部眞幸教授による講評。

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そしてその後は、いよいよ成績発表・表彰がスタートしました。競技で披露した技能が審査され、金賞、銀賞、銅賞、敢闘賞、それ以下に分類された上で、本式にて入賞者が表彰されます。大会参加者のみならず、関係者一同も手に汗握る瞬間です。41職種の競技の結果が、順次発表されていきます。

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いよいよ成績発表・表彰ですか……!緊張感が高まりますね。

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三原:そうですね。学生たちと一緒に、私も毎年参加しているんですけど、何度経験してもこの瞬間は慣れません。ドキドキです。

左官部門の発表が待ち遠しいですね。

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入賞者の名前が発表されるたび、会場からは大きな歓声が上がっていました。日々の努力が報われる瞬間とあれば、それも当然のことでしょうか。

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笑顔を見せたり、涙を流したり。思い思いに、互いの健闘を称え合っていました。

そしていよいよ、左官部門の成績発表です!

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果たして、小室さんと田中さんの名前はそこにあるのでしょうか?会場のボルテージが高まる中、結果がスライドに投影されます。

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銅賞。田中さん!

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そして銀賞。小室さん!2人とも入賞という素晴らしい結果を残すことができたようです。

ものつくり大学で学んだ若者たちが、2人とも入賞とは……!快挙ですね!

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三原:いやー、ホッとしました。本当に嬉しいです。練習の成果を出してくれました。

どういう部分が、今回の入賞に繋がったと思いますか?

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八幡:普段から、使用する道具や作業時間などを技能五輪のルールに合わせた形で練習させていたんです。だからこそ、本番でもいつも通りの力が出せたのではないでしょうか。

それから、何よりも選手たちの性格が“素直”だったことが、良い方向に作用したと思います。小室くんも、田中くんも、そして他の学生たちも。私たちが教えてきた学生たちは基本を大事にして、教えた内容を丁寧に守ってくれたのです。その結果として、作業にすごく安定感が生まれていました。

教授たちの丁寧な指導、そして学生たちの持つ素質があったからこそ、この結果に結びついたのですね。入賞、本当におめでとうございました!

年に一度の晴れ舞台。そこにあったのは、ひたむきに技能を磨く若者の姿だった

喜びの涙を流す者

悔しそうな面持ちの者

嬉しさのあまり仲間と抱擁し合う者

閉会式で受賞者が発表される中、若手技能者たちの反応は様々でした。しかし、そこに共通していたのは、みな一様に「一生懸命に練習し続けてきたからこそ」浮かべることのできる表情をしていたこと。それぞれが、自身の青春を、そして人生をかけてこの大会に臨んだことが窺い知れました。

日本のものづくりは、職人の方々が持つ高い技術によって支えられています。そして職人が技能を身につけるためには、何よりも自分が携わる分野にかける熱い想いが必要。若き技能者たちの胸には、その想いの種火が確かに灯り始めているようでした。

いつかこの小さな火が大きな炎となり、日本のものづくりの未来を明るく照らすような存在となっていくのでしょう。

取材協力:ものつくり大学

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