建設業の給与規程の作り方。 働き方改革関連法で必要になる見直し点について

皆さんに毎月支払われている給与は、会社が定めた「給与規程」に則っています。労働基準法を守りながらも、各社が必要な項目を明記しているため、その内容は実に多種多様です。

しかし、2018年6月29日に「働き方改革関連法」が成立したことによって、多くの企業で見直し・変更が必要になってくるかもしれません。

今回は、建設業における「給与規程」に焦点を当て、「給与規程」の役割や作成・変更におけるポイントを紹介します。

あなたの給与は「給与規程」をもとに支払われている

給与規定の作り方

労働基準法により常時10人以上の従業員が働いている企業では、「就業規則」を作成し、労働基準監督署への届出が義務付けられています。「就業規則」の法的な作成義務は、10人以上の従業員を雇用している企業にしか発生しませんが、定められる労働条件は労働基準法に基づかなくてはいけません。もちろん労働基準法は、すべての企業が守る必要があります。

つまり予め従業員規模に関わらず、賃金や労働時間、安全衛生管理に関するルールを就業規則として定めておかなくては、労使間のトラブルの元になります。

◎建設業における就業規則の作り方

その「就業規則」には、「絶対的必要記載事項」という必ず記載しなければいけない項目があります。「賃金の決定」「計算及び支払の方法」「賃金の締切り及び支払の時期」「昇給」に関する事項が含まれており、「就業規則」で記載されている給与に関する社内ルールのことを「給与規程・賃金規程」と呼びます。

「就業規則」は従業員が見やすい場所に掲示するか、交付したりなどの周知が義務付けられているので、気になる方は確認をしてみるといいでしょう。

そもそも「賃金」とは?

「賃金」とは一般的に「給料」を指しますが、労働基準法11条には以下のように定義されています。

賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう
(労働基準法11条)

つまり「賃金」には、直接的な労働の対価として支払われるもの以外に、就業規則で定められた役職手当や時間外労働の割増賃金、家族手当、住宅手当などの各種手当や任意的・恩恵的でない賞与(ボーナス)や退職金も含まれます。

つまり「就業規則」の「賃金規程」に支給条件が規定されているものは、すべて「賃金」とみなされますので、経営者・従業員ともに留意する必要があります。

「給与規程」に記載すべき項目

給与規定の構成
上記の図は、「給与規程」の賃金構成の一例になります。図に記載されていないものとして「住宅手当」などがありますが、すべて「絶対的必要記載事項」になります。

次に、「給与規程」を作成する際に気をつけるべき点を説明します。前述のとおり、「就業規則」には「絶対的必要記載事項」があります。加えて、制度があれば必ず記載しなければならない「相対的必要記載事項」が存在します。あらためておさらいしましょう。「給与規程」に関わる項目は下記になります。

絶対的必要記載事項 ①始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項
②賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
③退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
相対的必要記載事項 ①退職手当に関する事項
②臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項
③食費、作業用品などの負担に関する事項

基本給の他に、賃金構成に含まれる毎月支給される諸手当に関しては、通常支給される賃金に含まれるので、「絶対的必要記載事項」に分類されます。この構成は、企業によって異なりますが、通常支給されるものは必ず「就業規則」に記載する必要があります。

では、「給与規程」に記載すべき項目をひとつずつ説明します。

【絶対的必要記載事項として記載する項目】

  • 【適用範囲】……給与規程の適用範囲を明示します。
  • 【賃金の構成】……賃金を構成する要素、種類を記載します。
  • 【給与の計算方法】……賃金の計算方法を明示します。年俸制、月給制、日給月給制、日給制、時給制など実際に運用する賃金形態はすべて記載します。また欠勤、遅刻、早退、途中退職・入社のケースや休職者の計算方法も記載します。
  • 【手当】……「家族手当」「役付手当」「職能手当」などの各種手当を記載します。
  • 【割増賃金等の計算方法】……「時間外労働」「深夜労働」「休日労働」など割増賃金が発生する労働の条件と計算方法を明記します。
  • 【給与の締切日及び支払日】……賃金の計算期間、支払日などを定めます。「毎月●●日」のように支払日を定め、支払日が休日だった場合の繰り上げや繰り下げも記載します。また残業手当など変動する賃金の集計期間も明記します。
  • 【支払方法】……原則、現物支給は認められていないため、通貨となります。銀行振込など支払方法について明記します。また所得税、社会保険料など控除する項目がある場合は、ここに記載します。
  • 【昇給】……昇給が行われる評価基準や時期を明示します。

賞与や退職金など臨時の賃金や最低賃金に関する事項は、相対的必要記載事項として記載します。

【相対的必要記載事項として記載すべき項目】

  • 【賞与や臨時の賃金に関する事項】……賞与に関しては、支給対象・支給回数・支給時期などを記載します。労働基準法によって義務付けられているものではないので、原則として自由に定めることができます。「業績によっては支給しない」ことがある旨も記載する必要があります。
  • 【退職金】……支給対象、支給要件、支給率の算定などを定めます。
  • 【最低賃金に関する事項】……最低賃金に関する取り決めがある場合は、記載します。

「相対的必要記載事項」には、「安全衛生及び災害補償」「職業訓練」に関する事項などがありますが、「給与規程」と関係するものは上記になります。ありとあらゆるケースを想定した条文を策定する必要があるので、作成する際には社労士などのプロに相談するのが一般的です。

◎就業規則作成を代行している社会保険労務士事務所の例:日本社会保険労務士法人

建設業が注意すべき「最低賃金」

建設業の最低賃金
建設業の技能労働者は、「日給制」「日給月給制」を採用しているところも少なくないでしょう。そのような場合に注意すべき点として、「最低賃金」を下回らないか、という点があります。

最低賃金額以上かどうかを確認するには、それぞれ下記の計算方法があります。
(※下記、厚生労働省より引用)

①時間給制の場合
時間給≧最低賃金額(時間額)

②日給制の場合
日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

※ただし、日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合には、下記
日給≧最低賃金額(日額)

③月給制の場合
月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

④出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合
出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金計算期間に出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除して時間当たりの金額に換算し、最低賃金額(時間額)と比較します。

⑤基本給が日給で、各種手当が月給制などの場合
最低賃金の対象となるのは、毎月支払われる基本的な賃金となります。下記は対象外となります。

  • 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  • 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  • 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
  • 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
  • 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
  • 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

※精皆勤手当、通勤手当、家族手当も対象外

上記を踏まえて、下記の手順で計算します。

【1】月給−(通勤手当・家族手当・時間外手当など)=最低賃金の対象額
【2】(最低賃金の対象額①×12カ月)÷(年間労働日数×8時間)=時間給

最低賃金を下回った期間があると使用者(経営者)は、その差額分を支払う必要があります。各都道府県の最低賃金は下記よりご確認ください。

厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」

このように勤務形態が複雑な建設業においては、勤怠管理を適切に行なっていないと知らぬ間に最低賃金を下回っていた……ということも考えられます。適切な「給与規程」の作成はもちろん、労務管理も非常に重要です。

「働き方改革関連法」施行後の建設業

2018年6月29日に「働き方改革関連法」が成立しました。「給与規程」に影響があるのは、「時間外労働の上限規制」(建設業界は2024年3月31日まで猶予)と「中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金」(2023年4月施行)です。

特に後者は、月60時間超の割増賃金に関する項目を追記する必要があるため、2023年に向けて多くの中小企業は「就業規則」の変更と同時に「給与規程」の変更を行う必要があります。

これまで建設業界の一部が、適切な労務管理がしてこなかったことが、現在入職者の減少として表面化しています。“働きがい”のある業界をつくるためにも、必要不可欠な変革と言えるでしょう。

給与規程に則って正確な賃金を支払うには?

「給与規程」を正しく定めたとしても、そのルールに則って正確に賃金を支払わなくてはいけません。労使間のトラブルでよくあるのは割増賃金の不払いですが、必要以上に支払ってしまう例も後を絶ちません。そのためにも従業員の勤怠は正確に把握しなくてはいけません。

◎割増賃金の計算方法と勤怠管理について

勤怠管理は、他産業ではスタンダードとなりつつあるクラウド勤怠管理システムを導入することによって、適正な勤怠管理が可能になりますが、なかなか建設業の特殊な働き方に合う勤怠ツールはありません。

従業員がどのくらい働き、どのくらい残業しているかという現状把握をして、課題を抽出することが、長時間労働削減と労働生産性向上につながっていくのです。

 

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