ヒューマンエラーとは?分類・定義から対策を考える

建設業に限らず、医療や製造業……全産業で必ず起きてしまうヒューマンエラー。可愛く「うっかりしちゃいました」と言い訳をすれば、優しい上司やクライアントは笑って許してくれることもありますが、取り返しのつかない事故に繋がることも少なくありません。

労働災害の実に9割以上の原因が、ヒューマンエラーにあると言われています。意図しないミスが大きな事故につながってきたからこそ、現在では様々な研究と対策が進んでいます。よく耳にするヒューマンエラーとはそもそもなんなのか?なぜ起きるのか?

今回は、ヒューマンエラーについて紹介していきたいと思います。

まずは知っておきたいヒューマンエラーの種類

単純にヒューマンエラーと言っても、発生原因は様々です。大きくは下記の表のように12に分類されることが多くあります。では、一つひとつどのようなものが当てはまるのか、見ていきましょう。

ヒューマンエラーの12分類
危険軽視・慣れ 不注意 無知・未経験・不慣れ
近道・省略行動 高齢者の心身機能低下 錯覚
場面行動本能 パニック 連絡不足
疲労 単調作業による意識低下 集団欠陥

 

危険軽視・慣れ

不安全行動の代表的なものです。業務・作業に慣れ始めた新人が起こしやすいものです。同時に、何十年も作業に従事したベテランも危険を軽視する傾向にあります。最初は細心の注意を払いながら作業をしていたにも関わらず、「事故が起こるわけがない」「このくらいは大丈夫」と危険を軽視し始めます。また工期が短い、生産性が落ちるといった背景から、危険を軽視してしまうこともあります。現場の安全衛生責任者や職長がこまめにコミュニケーションを取り、ルールに則った作業をする必要があります。

近道・省略行動

「こうした方が早いだろう」という考えから、正規の手順を踏まないで作業をしてしまい、労働災害につながるケースです。時間内に仕事を終わらせようという考え方は立派ではありますが、“手抜き”や、やるべき手順を飛ばしてしまい、事故につながると元も子もありません。「なぜ、その手順が必要なのか?」は経験を積むほどに理解ができるはずですが、「危険軽視・慣れ」と同様に経験を積んだベテランほど油断が生じます。いくら作業が早くてもルールと手順を守っていないとドーピングを使用したスポーツ選手のようなものです。

場面行動本能

「場面行動本能」とは、注意が一点に集中することで周りが見えなくなり、本能的に行動してしまうことです。具体的な事例としては、「親綱や安全帯を付けずに高所作業中しているときに道具を落とした。その道具を拾おうとしたその結果、落下した」。というものがあります。この事例は、「危険軽視・慣れ」との複合とも言えますが、こういった人間の本能的・反射的な行動は対策しづらいものです。しかし、“人間は本能的な行動を取ってしまう”という事実を知っていること。そして、ヒヤリハット事例の共有などを繰り返すことで、様々な事故の想定が可能となり、安全意識の高い行動が意識できるようになります。

疲労

一般的にも疲労が蓄積すると、様々な能力が低下することが知られています。自分の思い通りに、頭が働かなかったり、体が動かないことで事故に繋がります。疲労は作業をする上で避けられないことではありますが、適度な休憩を入れたり、長時間労働の緩和が必要です。特に熱中症の危険がある夏場は、想像以上に作業員は疲弊してしまいます。体調管理は作業員それぞれの責任でもありますが、職長は必ず朝礼で各作業員の疲労の度合いや怪我の有無などを確認するようにしましょう。

不注意

ヒューマンエラーの代表的なものが「不注意」です。これは単純に注意散漫になってしまうこともそうですが、より多いのは作業に集中しているときです。皮肉なもので、作業に集中すればするほど、周りへの注意を払うことができなくなります。周りと声を掛け合うなど、常に仲間の気を配るようにすることは必須です。

高齢者の心身機能低下

建設業界では、労働者の3人に1人が55歳以上です。建設業の高年齢労働者の労働災害のなかでも、特に割合が高いのは死亡災害となっており、「高齢者の心身機能低下」は細心の注意を払う必要があります。原因の一つに、高年齢者が自身の身体機能の低下に自覚するのは難しいという点があります。全体的な筋力が低下するのはもちろんですが、平衡感覚がもっとも顕著に衰えます。加えて、視力や記憶力、疲労回復力なども低下します。対策としては、高年齢者が自身の心身機能低下を自覚するための「体力測定」の実施や、高年齢者に配慮した職場環境の改善が考えられます。高年齢者が培ってきた技術や知識は得難いものです。彼らがより能力を発揮できるような環境づくりは必須と言えるでしょう。

パニック

想定していなかった場面や事態が生じた際に、普段通りの正常な判断ができなくなることです。例えば、先輩や職長に注意をされたことで作業に焦ってパニックになってしまうなどはよくあることだと思います。トラックの運転中に急に人が飛び出してきて、アクセルとブレーキを間違えて踏み込んでしまうなど、普段なら絶対にしないことを無意識に行ってしまいます。想定外のことが起きてもパニックにならないようなメンタルトレーニングや起こりやすい災害に対して、手順や注意喚起を現場で明示していくなどが必要です。

単調作業による意識低下

誰もが経験したことがあると思いますが、同じ作業を繰り返していると周りへの注意や意識が低下してしまいます。「不注意」にも通じる部分が多いですが、何かが起きた際に、瞬時の判断が難しくなります。「不注意」「パニック」「単調作業による意識低下」などは人間の本能や意識の問題によるヒューマンエラーは、人の注意力に依存しない安全環境を整える必要があります。

無知・未経験・不慣れ

新人にもっとも多いヒューマンエラーです。作業に関しての知識が足りなかったり、経験が乏しいために起きます。「無知・未経験・不慣れ」は原因をはっきりと突き止めやすいので、「見て覚えろ」も大事ですが、しっかりと新人教育をする必要があります。どこがわからないのか?をヒアリングし、反復することで技術を習得できるような環境をつくりましょう。

錯覚

「錯覚」は、認知ミス・ご認識であり、「見間違い」「聞き間違い」「思い込み」や「勘違い」もこちらに含まれます。また似たようなサイズの材料など異なる環境下で見誤ってしまったり、足場があると勘違いし、墜落してしまうなどはあとを絶ちません。職長の安全指示の伝え方と受取る側の工夫によって、大きく「錯覚」は減らせるようになります。

連絡不足

「錯覚」とも似ていますが、「連絡不足」は個人的なエラーではなく、複数人数によるコミュニケーションエラーになります。大きい現場になると、元請から協力会社、一次業者、二次業者と伝える相手が増えていきコミュニケーションロスが生まれます。全作業員に正しい指示が伝わらないことで、労働災害が起こります。朝礼時に伝えたことを、見回り時に再確認してコミュニケーションを取るなど、安全指示がしっかり伝わるように徹底しましょう。

集団欠陥

「集団欠陥」とは、いわゆる現場の雰囲気です。工期が厳しい場合に本来は安全帯一で進行するはずが、“工期第一”になってしまい、不安全行動が起こりやすくなります。またそのような雰囲気が醸成されることで、正しい手順に則ってない作業に対して、注意喚起もしづらくなります。「集団欠陥」は、業界全体の根深い問題であり、個人ではなく業界全体で取り組まなくていけません。

ヒューマンエラーの本質と対策


ヒューマンエラーの12分類を紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。

端的に言ってしまえば、ヒューマンエラーとは、無意識のうちは「やるべきことをやらない」「やってはいけないことをする」だと言えるかもしれません(故意のものは別とします)。そこで皆さんは「ヒューマンエラーは原因というより結果なのではないか?」と疑問を感じたのではないでしょうか?

つまり、災害が起きたときの行動が、最初からエラーだと言われているわけではなく、災害が起きたから、その行動がエラーだと認識される場合もあるのです。労働災害という結果があって、特定の行動がエラーとされ、原因となる例も多く存在します。現段階で様々な産業で、ヒューマンエラーの研究はなされていますが、実は定義が固まっていないのが現状なのです。

ヒューマンエラーへの対策方法

人間がミスを起こす生き物の特性です。その前提にたって、「なぜ人間は不安全な行動を起こしてしまうのか」を12分類したのが、先述の紹介になります。

では、このようなヒューマンエラーが原因となる労働災害への減らすためにはどうすればいいのでしょうか?完璧にミスを無くすというのは無理かもしれません。しかし、下記のような対策を採ることで、減らすことは可能です。

エラーの発生可能性を低くする
エラーを防御するリスク対策

“人間はミスが起きるという前提”での安全対策を講じる必要があります。例えば、装置や機械に対する具体的な概念にはがフールプルーフがあり、これはエラーが起きた際にリスクを軽減するものになります。

フールプルーフ……人間は操作をミスしてしまう前提にたち、誤操作をした際にも危険な状況にならないように、護送さんを起こさないように考慮して設計されること。(※似た概念に「フェイルセーフ」があり、これは機械や装置は必ず故障するという前提にたった概念です)

では、人間ができることとしては、「スキル・知識の習得」「安全意識を高める」「リスクの所在を知る」などこれまでに皆さんが幾度となく聞いてきた基本的な手法になります。先程、“結果としてヒューマンエラーがある”と記載しましたが、不安全行動がそこに介在したことに間違いはありません。朝礼での安全指示、ヒヤリハットの報告・共有は、リスクの所在知る・認知するうえで非常に有用です。また「指差し呼称」も意識を高く、徹底することで不安全行動の減少に大きく役立ちます。

また故意に不安全行動を起こすのは言語道断ですが、“人はミスを起こしてしまう”という前提にたったときに、災害が起きた場合には懲罰的な施策を取るのではなく、高速のPDCAサイクルを回す必要があります。その災害から学び、対策を練ることが必須です。

個人レベルでの活動はもちろんですが、業界全体での文化の形成が求められます。

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