【個人向け】建設現場での熱中症予防の「いろは」と対策グッズ

5月から10月にかけて、建設現場の安全対策は、熱中症予防・対策がメインとなってきます。毎年、建設現場の労働災害の最重要課題となりますが、なかなか減少しない実状があります。
 
今回は、改めて熱中症の発生状況に加え、どのような症状あるのか? なにが基準をなるのか? を説明しながら、おすすめの対策グッズを紹介していきたいと思います。
 

建設業界における熱中症の労働災害

建設業における熱中症災害
 
気温が高くなるにつれて、朝礼でも熱中症の危険性について注意喚起されることが増えているのではないでしょうか。猛暑のなかで作業をつづけていると危険であることは、多くの人が理解していることだと思います。
 
しかし、実際に熱中症が原因となる労働災害はどのくらい起きているのか? 熱中症はどういう環境下で起きやすいのか? 基準はあるのか?ということは、あまり知られていないのでしょうか。
 
ここではそんな疑問に答えていきたいと思います。下記のグラフをご覧ください。
 

業種 建設業 製造業 運送業 警備業 商業 清掃・と畜業 その他
平成24年 143(11) 87(4) 43(0) 27(2) 35(0) 28(1) 77(3)
平成25年 151(9) 96(7) 68(1) 53(2) 31(3) 28(2) 103(6)
平成26年 144(6) 84(1) 56(2) 20(0) 28(0) 16(0) 75(3)
平成27年 113(11) 85(4) 62(1) 40(7) 50(0) 23(2) 91(4)
平成28年 109(6) 97(0) 52(0) 28(0) 37(2) 37(1) 102(3)
660(43) 449(16) 281(4) 169(11) 181(5) 132(6) 448(19)

<厚生労働省「職場における熱中症による死傷災害の発生状況(平成29年1月現在速報値)」をもとにグラフを作成/()内は死亡人数、単位:人>

5月以前 6月 7月 8月 9月 10月以降
平成24年 3(0) 6(0) 194(11) 202(9) 35(1) 0(0) 440(21)
平成25年 16(0) 15(1) 185(14) 295(14) 12(0) 7(1) 530(30)
平成26年 6(0) 32(0) 182(6) 191(5) 8(1) 4(0) 423(12)
平成27年 15(0) 19(2) 212(10) 210(16) 7(1) 1(0) 464(29)
平成28年 12(0) 26(2) 161(1) 221(7) 38(2) 4(0) 462(12)
52(0) 98(5) 934(42) 1119(51) 100(5) 16(1) 2319(104)

<厚生労働省「職場における熱中症による死傷災害の発生状況(平成29年1月現在速報値)」をもとにグラフを作成/()内は死亡人数、単位:人>

 
厚生労働省による熱中症による死傷災害の発生状況を見ると、全産業のなかでも建設業が突出した数字を記録していることがわかります。屋外の作業であることや肉体を使用する作業がメインになるため、この結果はもっともと言えるでしょう。また月別の発生状況では、気温が高くなる7〜8月に集中しているのは想像のとおりだと思います。
 
では、熱中症は夏、だけでなく気温の高い、真夏日、猛暑日を特に気をつければよいのでしょうか? もちろん気温はひとつの基準になりますが、湿度や輻射熱(ふくしゃねつ)など、気温以外にも影響する要素たくさんあります。
 
そのため、熱中症予防対策は、国際規格である「暑さ指数=WBGT値」が指針となります。
 

暑さ指数=WBGT値とは?

 
この暑さ指数=WBGT値は、厚生労働省の熱中症予防対策の基準にもなっているので、初めて目にされた方は、ぜひ覚えていただき、後述するWBGT値に対する作業基準にも、ぜひ目を通してください。

WBGT値は、専用の測定器で確認することができます。自ら算出することはないと思いますが、下記のような式から導き出されています。
 

WBGT値(湿球黒球温度)=Wet Bulb Globe Temperatureの算出法
 
①屋内、屋外で太陽照射のない場合(日かげ)
WBGT値=0.7×自然湿球温度+0.3×黒球温度
 
②屋外で太陽照射のある場合(日なた)
WBGT値=0.7×自然湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度

 
建設現場では、安全衛生責任者がWBGT値を測定し、作業強度をコントロールする必要があります。WBGT値と作業強度の基準は以下になります。
 

区分 身体作業強度(代謝率レベル)の例 WBGT基準値
熱に順化している人(℃) 熱に順化していない人(℃)
0 安静 安静 33 32
1 低代謝率 ●楽な座位●軽い手作業(書く、タイピング、描く、縫う、簿記)●手及び腕の作業(小さいベンチツール、点検、組み立て や軽い材料の区分け)●腕と足の作業(普通の状態での乗り物の運転、足のスイ ッチやペダルの操作)●立位●ドリル(小さい部分)●フライス盤(小さい部分)●コイル巻き●小さい電気子巻き●小さい力の道具の機械●ちょっとした歩き(速さ3.5km/h) 30 29
2 中程度代謝率 ●継続した頭と腕の作業(くぎ打ち、盛土)●腕と脚の作業(トラックのオフロード操縦、トラクター及び建 設車両)●腕と胴体の作業(空気ハンマーの作業、トラクター組立て、 しっくい塗り、中くらいの重さの材料を断続的に持つ作業、 草むしり、草掘り、果物や野菜を摘む)●軽量な荷車や手押し車を押したり引いたりする●3.5~5.5km/hの速さで歩く●鍛造 28 26
3 高代謝率  ●強度の腕と胴体の作業●重い材料を運ぶ●大ハンマー作業●草刈り●硬い木にかんなをかけたりのみで彫る●5.5~7.5km/hの速さで歩く●重い荷物の荷車や手押し車を押したり引いたりする●鋳物を削る●コンクリートブロックを積む●シャベルを使う●のこぎりをひく●ほる  気流を感じないとき

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気流を感じるとき

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気流を感じないとき

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気流を感じるとき

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「熱順化・暑熱順化」とは?

人間の身体には順応性があります。「熱順化・暑熱順化」とは、身体が暑さに適応した状態のことを言います。本来は、徐々に夏に近づくにつれ、気温もあがり、発汗量が増えていき、自然と順化されていきます。しかし、現代の人々はエアコンなどで常に快適な環境で過ごしているため、順化しにくくなっています。身体が暑さに慣れてくると、汗の中のナトリウム(塩分)が減少し、体温が上がりにくくなる、水分補給で体液量が回復しやすいなど熱中症になりにくくなります。
 

代表的な熱中症の症状

熱中症の症状
次に、熱中症の代表的な症状を見ていきましょう。熱中症の症状には、重症度によって分類されていますので、しっかりと把握しておきましょう。
 

Ⅰ度(軽度)の症状

意識 正常 体温 正常 皮膚 正常 発汗 (+) 

●めまい・失神 ●筋肉痛・筋肉の硬直
 

Ⅱ度(中等度)の症状

意識 正常 体温 〜39℃ 皮膚 冷たい 発汗 (+) 

●頭痛 ●吐き気 ●嘔吐 ●下痢 ●倦怠感・虚脱感 ●失神 ●気分の不快 ●判断力や集中力の低下などの症状に重なり合って起こる
 

Ⅲ度(重度)の症状

●意識障害 ●けいれん ●手足の運動障害 ●おかしな言動や行動 ●過呼吸などⅡ度
 
意識も朦朧としており、呼びかけに対する反応に異常が見られたり、けいれん、真っ直ぐに歩くことができないなどの他、従来から「熱射病・日射病」と同様に身体に触れると、熱がある高体温の症状が見られる。
 
また現場単位や基本的な熱中症予防・対策は、下記の記事をご参照ください。
 
◎【現場監督向け】夏の労災「熱中症」を防ぐ現場の作り方
 
熱中症の予防・対策は、現場単位で取り組んでいく必要がありますが、熱順化や当日の体調など画一的に対応できない部分も多々あります。そのため、個人で対策できる点は、積極的に取り組んだ方がよいと言えるでしょう。では、次から市販されている熱中症対策グッズのなかから「ケンセツプラス」編集部おすすめのものを紹介していきたいと思います。
 

おすすめの熱中症対策グッズ〜補給編〜

経口補水液<経口補水液「OS-1(オーエスワン)」(大塚製薬)のイメージ画像>
まずは、熱中症対策の基本中の基本となるのは、こまめな水分、塩分補給です。麦茶や冷水より、スポーツドリンクですと塩分・糖分を同時に摂取することができるので、より効果的です。
 
より効果的な水分の摂取方は、経口補水液になります。経口補水液とは、スポーツドリンクよりナトリウムやカリウムなどの電解質の濃度が高くなっているため……と難しい説明となってしまいますが、脱水症状の際に水分だけではなく、電解質も多く失われてしまい、これまでは点滴などで補給をしていました。経口補水液ですと、簡単に水分と電解質を補給することが可能なのです。
 
現在は、「OS-1(オーエスワン)」(大塚製薬)や「アクエリアス 経口補水液」(日本コカ・コーラ株式会社)などから経口補水液は発売されていますので、非常に手に入りやすくなっています。
 
塩飴などの塩分補給も忘れずに

また塩分を個別に補給したいときは、熱中症対策・塩分補給用の飴が定番です。作業中に舐めることもできるので、定期的に補給をすることで熱中症予防に一役買ってくれるはずです。最近では、飴よりすばやく塩分補給ができるタブレット型も発売されていますので、ポケットにひとつ忍ばせておくと、良いでしょう。
 

熱中症対策グッズ〜冷却編〜

冷却タオル・クールタオル<画像:スーパークーリングタオル/発売元:株式会社ITSUMO>

熱くほてった身体を冷却することも熱中症対策につながります。建設現場でおすすめなのは、冷却タオルやヘルメットの冷却カバー、冷却スプレーです。では、ひとつひとつ確認していきましょう。
 

冷却タオル・クールタオル

建設現場以外でも、熱中症対策グッズとして一般的に普及してきた「冷却タオル・クールタオル」。水に濡らして絞れば、通常の綿タオルより冷えを持続する特殊繊維を使用しているのが最大の特徴で、通気性にも優れています。冷感の持続時間は外気温や日光の有無で変化しますが、おおよそ1〜4時間くらいとなります。

「冷却タオル・クールタオル」は、多くのメーカーから発売されており、安価なため非常に手に入りやすいアイテムです。例えば、写真の「スーパークーリングタオル」(株式会社ITSUMO)は、水でもお湯でも湿った状態で振ることにより、発冷します。「ぬるいな」と感じたら、再度振ることで何度でも冷たくなります(湿っているときに限ります)。

しかし、個人差や商品によって効果は千差万別のようです。通常のタオルでも水に冷やすことで冷却効果がありますので、もっとも良い使用法を選択しましょう。
 

服の上からでもひんやり!冷却スプレー

冷却スプレー
昔から存在する「冷却スプレー」は、運動後・作業後に使用する制汗スプレーと効能は似ています。制汗スプレーもメンソール成分が含まれている商品は、清涼感があり、冷却の効果もあります。また「冷やす」という点では、打撲や打ち身などに使用するスプレーも同様です。とは言え、バッグに何本も用途別にスプレーを何本も持ち歩くのも面倒です。持続性もそこまで期待できないため、熱中症対策としてはいまいち……という方も多いかもしれません。

そんな方におすすめしたいのは、“服の上から噴射しても効果がある冷却スプレー”です。肌に直接噴射する必要がないため、手軽にひんやり効果を得ることができます。
 

ひんやりシート・冷却シート

発熱用のシートを暑い日に使用している人も見受けられますが、「ひんやりシート・冷却シート」の効果はどれほどになるでしょうか。成分としてメンソールが含まれているので、ひんやりとした体感は得られるものの、貼る場所を考えないと大きな効果は得られません。例えば、首や脇の下など太い動脈が通っている箇所ですと一定の効果があると言われています。

一方で、ヘルメット内に装着するタイプの冷却シートは、蒸れの解消、直射日光の遮断などの効果があると、熱中症の予防・対策に有効だと言えます。
 

熱中症対策グッズ〜装着編〜

熱中症対策〜装着編〜
もっとも基本的なことではありますが、夏場にはその季節に適した作業着にすることで大きな効果を得ることができます。ここでは、熱中症の予防・対策に効果が期待できる服装を紹介します。

どこまで涼しくなるのか!? 空調服の威力は?

建設現場では認知度は高いが、一般の人からすると「なんだそれ?」となってしまいがちな空調服。現場の苦労を知らない人にとっては、理解しにくいとは思いますが、このような作業服が生まれているというだけで、建設業界の熱中症対策への本気度が伺えます。

◎空調服を着るとどんだけ涼しくなるのか、灼熱のサウナで実験してみた!

ちなみに「ケンセツプラス」編集部では、2年前に空調服の効果を実証していますので、ぜひリンク先の記事をご確認ください。
 

通気性の高い夏用の作業服

もし、1年中を通して同じ作業服を着ているという方がいれば、ぜひ夏用の作業服を購入することをおすすめします。近年、様々なメーカーが通気性、吸湿性、透湿性に特化した涼感素材でしのぎを削っています。ユニクロの「エアリズム」などが著名ですが、WORKMAN(ワークマン)など作業着専門のメーカーなどからもハイテク素材の商品が多く発売されています。商品サイクルがとても早いので、「夏用の作業着をしばらく変えてない」という方も、一度商品ラインナップだけでもチェックすると、劇的に快適さが変わるかもしれません。
 

これだけは忘れないように!

熱中症対策の注意点
ここで紹介した対策はあくまで熱中症対策の一部です。熱中症の予防・対策は、こまめな水分・塩分補給がメインとなりますが、その他に市販されているグッズでも様々な対応が可能です。また熱順化を意識することも大切です。

初夏にある真夏日・猛暑日などは順化前だと考えられるので、細心の注意を払うことが必要ですし、この時期はあえて自身の熱順化を促すような意識も大切かもしれません。

また今回紹介したような対策を行っていたとしても、体調管理を怠っていては意味がありません。特に夏場は、エアコンが効いている場所との温度差が極端ですので、体調を壊しやすい時期でもあります。寝不足や風邪気味ですと、普段より熱中症が発症しやすくなりますので、作業時間以外の体調管理にも気をつけましょう。

また夏場は毎朝、出勤前に天気予報をチェックしておきましょう。その日の最高気温を知るだけで、できる対策の幅が大きく変わります。今日は35℃以上あると知りながら作業するのと、何も知らずに作業をするのでは天と地ほどの差があります。

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