職長になったら知っておきたい「部下の管理」と「安全確保のノウハウ」とは

職長教育の講習内容イメージ

職長に昇進したら受講することを義務付けられているのが職長教育。その講習内容には、作業の段取りから作業員のケアまで、幅広い職長の職務をこなすために知っておきたいノウハウが数多く盛り込まれています。
今回は、そんな職長教育の概要とともに、受講に際して意識しておきたい点についてご紹介します。職方のリーダーとしての責任をしっかり果たせるよう、きちんと内容を身につけておきたいですね。

職長教育は現場のリーダーとしての義務

職長は安全衛生のキーマン

一般的に「職長」とは、建設現場に従事する作業員に直接指示を出す、リーダーとしての職務を意味します。発注者からの指示、元請け会社からの指導を受けながら、安全衛生に配慮したうえで適切なマネジメントを行わなければなりません。

その職務の範囲は幅広く、作業用具や保護具の点検、安全に配慮した作業指示、作業員の不適切な点の是正なども含まれます。現場では、ささいな不備であっても大きな事故や災害につながりかねません。職長は現場における安全衛生面について大きな責任を持ち、非常に重要な役割を果たすキーマンなのです。

そこで、職長に昇進し、初めて現場に入る前には、「職長教育」を受けることが労働安全衛生法によって義務付けられています。これは、作業員を指揮・監督するための心構えやその方法をはじめ、現場の安全衛生を守るための知識を身につけるためのもの。その対象は、「新たに職務につくこととなった職長その他の作業中の労働者を直接指導又は監督する者(労働安全衛生法第60条)」と規定されています。そのため、「班長」や「作業長」など名称が職長ではない場合でも教育の対象になります。

もし職長教育を修了せずに現場を指揮した場合、建設業の場合には、作業員を直接指揮する人に職長教育を受けさせていなければ、労働基準監督官から是正勧告(労働法律違反に対する行政指導)を受けてしまいます。

職長教育講習イメージ

2日間集中して「職長教育」講習を受講

現場作業では、職長のほか、「安全衛生責任者」という職務もあります。これは、元請負先から選任された「統括安全衛生責任者(労働災害が起きないよう現場を管理する人物)」や他の職種の施工会社と仕事上の連絡や調整を行い、自社内の職長をまとめる役割のこと。(労働安全衛生法第16条)。現場管理を担う対内的な業務を行うのが職長であるのに対し、統括安全衛生責任者への連絡など主に対外的な業務を行うのが安全衛生責任者です。

多くの場合、職長が兼ねるため、それぞれの内容を統合して「職長・安全衛生責任者教育」として実施されています(この項における”職長教育”はこの講習を意味します)。内容は「労働安全衛生規則第40条(職長等の教育)と行政通達」に規定があり、項目と時間が以下のように定められています。

作業方法の決定及び労働者の配置に関すること 2時間
効率的に作業を行うために、作業の要件と手順、作業員の能力や資格を考慮して現場への適正に配置する方法を学ぶ。

労働者に対する指導又は監督の方法に関すること 2.5時間
作業員に対して正しい作業の実施方法について適切に監督し、指示することを学ぶ。部下との接し方などの人材育成のスキル、よい人間関係の築き方のこつなど。

危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置等に関すること 4時間
現場作業におけるリスクを察知し、適切に対策することを学ぶ。労働災害の主な原因とその予防法、安全衛生面における点検方法など。

異常時における措置に関すること 1.5時間
労働災害が発生した時の初動対応や被災者への救命措置など、万一の事態における対応を学ぶ。

その他現場監督者として行うべき労働災害防止活動に関すること 2時間
作業員の安全に対する意識向上の促し方、安全衛生面を高めるための点検方法、作業手順の定め方などを学ぶ。

安全衛生責任者の職務等 1時間
安全衛生管理責任者の職務の概要や、安全衛生管理体制の仕組みや安全衛生管理計画の策定などについて学ぶ。

講習はおよそ2日間にわたって実施され、これに要する時間は、労働基準法上の労働時間として扱われます。「職長教育」が法定労働時間外に行われた場合には、事業者は当該職長に割増賃金を支払うことになります。

職長と一般の作業員の違いイメージ

一般の作業員との違いは視野と意識

職長教育では、前述のような項目を通して、部下となる作業員を適切かつ安全に指揮するための知識やスキルを学びます。主な職長の実務としては下記のようなものが挙げられます。

  • 作業員に対する安全や作業効率、品質などに関する指導や教育
  • 工事全体における作業計画書(施工要領書)の作成
  • 実地作業における作業手順書の作成

一般の作業員との大きな違いは、作業そのものの安全性や品質などを管理するとともに、自分の率いるチームが事故や災害のリスクを負わないように配慮する意識です。
優秀な作業員であれば自らに課せられた作業を全うすることに注力するものですが、職長という立場に変わった場合には、視野を広げ、チーム全体に目を配る必要があります。不適切な行動をとる作業員がいれば注意し、事故や災害につながるようなリスクに気を付けて是正していかなければなりません。職長教育では、作業員に対する指導や教育のノウハウ、危険性や有害性等の調査(リスクアセスメント)の概要、作業手順書のまとめ方などを学ぶことができます。

  • 危険予知活動(現地KY)など安全施工サイクルの実施
  • 現場巡視による作業状況の把握
  • 作業間連絡調整(安全工程打ち合わせ)の実施
  • 現場における職長会(リーダー会)の運営
  • 人間の行動特性をふまえた災害防止の工夫
  • 異常時、災害発生時の対応

現場に入っている各職種が足並みをそろえて安全衛生管理を行うための手法「安全施工サイクル」の仕組みも体系的に教示されます。現在、各現場で実施されている危険予知活動(通称:KY活動)もその一部です。職長教育では、KY活動の目的や意義、効果を踏まえ、多様なKY活動の手法、また具体的なKY活動の例などが紹介されます。

◎安全な現場をつくる「KY活動」のポイント

職場の良好な人間関係イメージ
  • 職場の良好な人間関係の構築

取り組みや指示を浸透させるためにも重要なのが、職場における良好な人間関係の形成です。現在、現場では熟練の作業員の高齢化が進むとともに、他業種から転職した経験の浅い作業員の増加、将来的には外国籍の作業員の参入も見込まれます。スムーズに仕事を進めるためにもコミュニケーション術はより重要なスキルになってきているといえるでしょう。
職長教育では、「仕事ぶりの良し悪しを本人に直接言う」「良いときはほめる」「当人に影響ある変更は前もって知らせる」「相手の能力を最大限にいかす」という4原則を軸に、作業員への注意の仕方、ほめ方・しかり方についてもレクチャーされ、現場における人材育成について学ぶことができます。

自らの能力向上に努める

建設現場では天候や工程によって日々、状況が変わっていきます。固定した作業のルーチンをただ守るだけでなく、現場の進捗や作業員の様子を確認しながら、その場に応じた判断をくだしていかなくてはなりません。職長教育を通じて、様々な知識やスキルを身につけることで判断の基礎となるものが築けるはずです。職長という重要な役割を果たすためにも意欲的に講習に取り組み、自らの能力向上に生かしたいものです。
なお厚生労働省の通達により、職長・安全衛生責任者教育の修了後も、5年ごとに「職長・安全衛生責任者能力向上教育」を受講し、その職務について再確認することになっています。

取材協力/建設業労働災害防止協会東京支部
参考資料/新版 職長・安全衛生責任者教育テキスト-リスクアセスメントを導入した-(建設業労働災害防止協会発行)

 

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