「職長教育」は何を学ぶの?なぜするの?職長になったら知っておきたい、教育の内容と意義

さまざまな事業者が一堂に集まる建設現場で、作業員を統括する役割を担う職長。この「職長」に昇進した技能者には、昇進後初めて現場に入る前に「職長教育」を受けることが法律で義務付けられています。

職長に昇進し、これから職長教育を受ける技能者にとって、
どのような内容を学ぶのか?
なぜ職長教育を受けなければいけないのか?

は、気になることなのではないでしょうか。

この記事では、職長教育で行われることや、教育を受ける意義などをご紹介します。教育の内容を事前に把握し、現場を引っ張れる立派な職長になりましょう!

職長教育で学ぶことは「現場のマネジメント」と「安全管理」の方法

職長教育の意義と内容

職長教育は、現場作業員を指揮・監督するための心構えや方法をはじめ、現場の安全衛生を守るための知識を身につけるために行われます。

これは「労働安全衛生法」によって義務付けられていて、職長に昇進した技能者は初入場前に必ず職長教育を受けなければいけません。

職長教育の対象者は「新たに職務につくこととなった職長その他の作業中の労働者を直接指導又は監督する者(労働安全衛生法第60条)」と規定されています。そのため、班長や作業長など名称が「職長」ではない方も教育の対象です。

もし職長教育が修了していない技術者が現場を指揮していた場合、労働局の労働監督署から是正勧告(労働法律違反に対する行政指導)を受けてしまい、是正を行わない場合は処罰や送検の対象になってしまいます。

特に建設業では、職長は安全衛生責任者(現場の安全衛生の責任者)に選任されることが多く、安全衛生責任者にも初期講習が必要です。そのため、「職長教育」を受ける場合は、「安全衛生責任者教育」の教育を統合した「職長・安全衛生責任者教育」を受けることが多いでしょう。

職長と安全衛生責任者の違いについては、以下のミニコラムをご覧ください。

〜ミニコラム 知っておきたい「職長」と「安全衛生責任者」の違いとは?〜

◎職長とは
現場作業員の安全のために現場を指揮または監督するリーダーのこと。“事業者と作業者をつなぐ立場”であり、現場での安全を確保する重要な役割です。この役割は「職長教育」を修了した人物にしか担えません(労働安全衛生法第60条)。

◎安全衛生責任者とは
元請負先から選任された「統括安全衛生責任者(労働災害が起きないよう現場を管理する人物)」と仕事上の連絡や調整を行い、自社内の職長をまとめる役割のこと。(労働安全衛生法第16条)。

まとめると、現場管理を担う対内的な業務を行うのが「職長」、統括安全衛生責任者への連絡など主に対外的な業務を行うのが「安全衛生責任者」です。

具体例付き「職長教育」で学ぶこと

建設現場での職長の働き

「職長教育」ではどのような教育を受けるのでしょうか?「労働安全衛生規則第40条(職長等の教育)」には教育の内容と時間が定められていて、以下のように規定されています。

◎作業方法の決定および労働者の配置に関すること【2時間】
⇒効率的に作業を行うために必要な知識を身につけます。具体的には、目標や目的の明確化や計画立案、現場への適正な人員配置の方法を学びます。

◎労働者に対する指導または監督の方法に関すること【2.5時間】
⇒ここで、作業員に対する効果的な指示や、現場のマネジメントの方法を学びます。具体的には部下の怒り方や褒め方をはじめ、よい人間関係を作るコツ、5W1Hを意識した伝わりやすい指示の方法などを学びます。

◎危険性または有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること 【4時間】
⇒現場の危険性を事前に察知し、労働災害を未然に防ぐことも職長の役割です。ここで、労働災害の主な原因や、労働災害を避けるためにできること、安全衛生点検の進め方などを学びます。

◎異常時等における措置に関すること【1.5時間】
⇒現場で労働災害や異常が起きた時に、職長は迅速に対処を行わなければいけません。ここでは被災者の救命延命措置の方法や、災害への対処方法、災害や異常をあらかじめ予測して対策を立てる方法を学びます。

◎その他現場監督者として行うべき労働災害防止活動に関すること【2時間】
⇒現場の安全は、職長ひとりで作り出せるものではありません。この講習では現場の作業員と協力しながら設備の安全を点検する方法や、作業手順の定め方、作業員に対する安全衛生意識の高め方などを学びます。

職長教育とともに行われることが多い「安全衛生責任者教育」では上記の項目に加えて
◎安全衛生責任者の職務等【1時間】
◎統括安全衛生管理の進め方【1時間】

という2つの教育を受ける必要があります。

教育の時間は、「職長教育」で合計12時間以上、「安全衛生責任者教育」では14時間以上と法律で定められています。

これらの「職長教育」に要する時間は、労働基準法上の労働時間として扱われます。そのため「職長教育」が法定労働時間外に行われた場合、事業者は当該職長に割増賃金を支払わなければなりません。

どうやって受けるの?「職長・安全衛生教育」の3つの受講方法

職長教育の受講イメージ

「職長教育」や「安全衛生責任者教育」はどのように受講すればよいのでしょうか?

これらの教育を受ける主な方法は、「講座」「通信講座」「出張講習」など。なお、講義は「RSTトレーナー(労働省方式現場監督者安全衛生教育トレーナー)」と呼ばれる専門資格を持った講師から受ける必要があります。

実際に職長教育を受ける時には、所属する会社が決定した方法で受講を受けることになるでしょう。

◎講座を受講する場合
もっとも一般的な受講方法が、職長教育を実施する企業や社団法人などから講座を受講する方法です。講義には約2日間(14時間)が必要で、教育を受ける場所は研修室や講習センターなど。講座では、RSTトレーナーから受ける講義や、受講生同士のディスカッションを通した教育が受けられます。

◎通信講座の場合
講習が行われる場所まで足を運ばなくても、テキストを片手にwebで動画を視聴することで「職長・安全衛生教育」を受けることが可能です。合計受講時間数は14時間ですが、動画は複数回に分けられているため、都合の合う時間に受けられる点がメリットでしょう。

◎出張講習の場合
講座や通信講座のほかに、自社にRSTトレーナーを呼んで「出張講習」を受けるという選択肢も考えられます。出張講習は受講者の交通費や移動時間などのコストを省けるため、自社に受講者が複数人いる場合はこのパターンになるでしょう。

「職長」は現場の安全を守る要

現場に立つ作業員の安全を守るために重要な役割を担う「職長」。作業現場の状況に常に目を配ることは困難を伴いますが、この役割がなくては現場の安全を保つことはできません。

職場の安全を確保するために、安全教育について多くの知識を学ぶことができる「職長教育」を修了することは大変重要なこと。しっかりと知識を得ることで、事故が発生しないように心がけていきましょう。

労働災害をなくすために!こちらの記事もチェック!

◎フルハーネス型安全帯が原則義務化へ!その背景と内容を解説!
◎ヒューマンエラーとは?分類・定義から対策を考える
◎建設現場の朝礼はうまく機能しているか?安全衛生責任者の指示が労働災害を防ぐ!高木元也氏に聞いた現場コミュニケーションの重要性
◎建設現場におけるヒューマンエラーの原因と対策〜高木元也さんに聞いた人間の本能〜
◎ヒヤリハット報告書の作成ガイド〜重大な事故は300のヒヤリハットに隠れている!? 〜
◎労災防止に必須の書類、安全ミーティング報告書の作成ガイド
◎悲惨な事故は防げたかもしれない。危険を発見して、安全な現場をつくる「KY活動」のポイント
◎【現場監督向け】夏の労災「熱中症」を防ぐ現場の作り方
◎建設現場の事故を減らす!労災防止のプロに聞く、労働災害の防ぎ方
◎工事現場の安全に欠かせない「安全衛生計画書」記載のポイント

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でケンセツプラスをフォローしよう!