社労士が説明!助成金を申請するメリットと注意点とは?

「働き方改革」「生産性向上」「従業員のスキルアップ」「正規雇用」などの必要性は十分に理解しているものの、どこまで投資すべきか、費用の捻出が厳しいなど資金調達や資金繰りに悩まれている建設業の方々も多いのではないでしょうか。

これまでにも「ケンセツプラス」では、助成金をテーマにした記事を紹介してきましたが、今回は「建設サイト」等で知られる株式会社MCデータプラスが開催したセミナー「助成金の紹介と活用のポイント」の模様をお伝えします。

そもそも助成金とはどのようなものなのか? メリットは? などの疑問に答えます。国や自治体が行っている助成金をうまく活用することができれば、経営の大きな助けになるはずです。

助成金は収入になる!使わない手はない!?

助成金は収入になる
<日本社会保険労務士法人の佐藤邦昭さん>

今回のセミナーで登壇されたのは、SATO GROUP 日本社会保険労務士法人の佐藤邦昭さんと桐山慶之さんです。最初に登壇された佐藤邦昭さんは、助成金とはそもそもなんどのような制度なのか? を説明します。

「助成金は、全国の企業から徴収した雇用保険料を財源とした給付金になります。受給要件を満たすことで支給され、用途は自由で返済の義務はありません。つまり純粋な収入と変わりません。助成金の種類は50種類以上ありますが、基本的に『雇用機会の拡大』や『雇用状態の是正』『労働者の能力開発』等の目的で支給されます」(佐藤邦昭さん)

助成金には、「キャリアアップ助成金」「人材確保等支援助成金」「両立支援等助成金」「業務改善助成金」など人材の離職率を低減して、定着させることを目的としたものや、従業員のスキルアップを目的とした「人材開発支援助成金」。従業員を雇用した際に「特定求職者雇用開発助成金」「トライアル雇用助成金」など50種類ほどの種類が存在します。

「自社に有効かつ適切な助成金がわからない」
「どのような手順で申請すればいいのかわからない」

という方も多いでしょう。事実、佐藤邦昭さんも「助成金は企業にとって非常に有効な制度であるにも関わらず、多くの企業が利用できていない」と指摘します。

こんなことで悩んだら助成金が使えるかも?

助成金で悩みを解決
では、助成金はどのようなタイミングや経営課題の際に使えるのでしょうか? 佐藤邦昭さんは以下のように説明します。

「助成金は返済義務がないため、利用することで大きな助けとなりますが、『どういったタイミングで助成金を使えばいいか?』という悩みを企業様から多く受けております。タイミングとして考えられるのは、『生産性の向上(能率増進)』、『従業員の賃金アップ』『非正規の労働者がいる『仕事と家庭の両立』『人材の育成・採用』『高齢者の活用』です。そして、もっとも重要なこととしてお伝えしておきたいのは、助成金を受給するために、“適正な労務管理”をしなくてはならないということです」(佐藤邦昭さん)

現在の建設業は、人材の高齢化、ワークライフバランスの整備、新規入職者の確保など様々な課題があります。上記の佐藤邦昭さんが指摘するタイミングは、どれも建設業にとって喫緊の課題と言えるでしょう。

では、佐藤邦昭さんの発言をより具体的に説明していきます。

●生産性の向上

労働人口が減少していくなかで、企業を成長させていくには一人あたりの労働生産性を向上させることは必要不可欠です。このことは読者の皆さんも日々痛感していることかと思います。

2018年6月29日に可決・成立した「働き方改革関連法」の柱となるのは、「時間外労働の上限規制」「同一労働同一賃金」「勤務間インターバル規制」「高度プロフェッショナル制度」「産業医の機能強化」「有給休暇の取得の義務化」です。目的は、長時間労働の是正やワークライフバランスの確保と言えるでしょう。

とは言え、中小企業が生産性向上を目指す上で投資できる金額には限りがあります。そのため厚生労働省は、中小企業に向けて、生産性向上に連動する「時間外労働等改善助成金」の5コースを設置しています。

業種 A.資本または出資額 B.常時雇用する労働者
小売業(飲食店を含む) 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他の業種 3億円以下 300人以下

上記のコースにはそれぞれ支給要件があり、下記のいずれかの1つ以上を実施して一定の成果をあげる必要があります。

      ①労務管理担当者に対する研修
      ②労働者に対する研修、周知・啓発
      ③外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など)によるコンサルティング
      ④就業規則・労使協定等の作成・変更(時間外・休日労働に関する規定の 整備など)
      ⑤人材確保に向けた取組
      ⑥労務管理用ソフトウェアの導入・更新
      ⑦労務管理用機器の導入・更新
      ⑧デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新

          ⑨テレワーク用通信機器の導入・更新
          ⑩労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新(小売業のPOS装置、飲食店の自動食器洗い乾燥機など)

詳しくは、厚生労働省の下記ページの「時間外労働等改善助成金」の箇所をご確認ください。

◎厚生労働省「労働時間等の設定の改善」

●賃金アップ

従業員の離職率や定着率と密接に関係している従業員満足度。従業員満足度を向上させるためには、雇用環境の整備する必要があります。具体的には、明確な就業規則(人事評価制度や賃金制度など)の規定や生産性向上による賃金アップ、資格手当などが考えられます。適正な労働に対し、適正な賃金を払うことは核となる部分でしょう。賃金アップに関係する助成金に「キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)」「キャリアアップ助成金(賃金規定等共通化コース)」などがあります。

●非正規労働者がいる

契約社員・派遣社員・パートなどの有期契約労働者の処遇改善を行うことで助成金を受給することができます。例えば、「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」は、有期契約労働者を無期契約や正社員に転換することで受給要件を満たすことができます。また有期契約労働者に健康診断制度を規定・実施することで受給される「キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)」、正社員と共通の手当制度を適用した場合に受給できる「キャリアアップ助成金(諸手当制度共通コース)」などの助成金もあります。

●仕事と家庭の両立

こちらも処遇改善や従業員満足度と密接に関係する項目です。労働人口減少に伴い、労働者に育児や介護などのライフステージが訪れた際に、仕事との両立は大きな課題となります。育児休暇の取得推進や職場復帰、女性の活躍推進などまだまだ中小企業は整備ができていないのが現状です。このような課題に取り組んだ際に受給できるのが「両立支援等助成金」になります。

「ケンセツプラス」では、実際に女性の活躍推進に取り組んで、大きく業績を伸ばした原田左官工業さんを以前に取材しています。

ワークライフバランスは、今後の建設業にとって避けて通れない課題となるでしょう。

◎建設業界の働き方改革 の成功事例〜原田左官工業の女性活躍と人材育成〜

●人材の育成・採用

若い人材を一人前にする、という課題は、多くの企業の悩みのタネになっていることでしょう。3年かけて育てたのに退職してしまった……なんてことはよくあることかもしれませんが、企業にとっては大きな損失です。これまで説明してきた項目とも連動しますが、働きがいのある職場づくりとして、企業として能力の向上に力を注ぐことが求められています。

特に建設業では、様々な職業訓練や資格を要する業界でもあり、従業員の職業能力の向上は企業の価値に直結します。従業員に有給休暇制度を利用して、職業訓練を実施することで助成金が支給される「人材開発支援助成金」があります。

●高齢者の活用

建設業は他産業と比較しても高齢者の割合が多く、若手の入職率の低さが問題視されてきましたが、捉え方によっては悲観するものではありません。どちらかと言うと、労働人口減少が見込まれる日本社会で、シニアの雇用が盛んになっている現在、長年培ってきた技術や知識をどのように継承していくかが課題と言えるでしょう。

建設業には熟練の技能者の方々が多く存在するため、どのように活躍してもらえるかを上記の「育成・採用」と計画していくことで、企業の成長を促進できるはずです。高齢者の活用した場合に受給できる助成金として、「65歳超雇用推進助成金」などがあります。

助成金受給には適正な労務管理が必須!

助成金受給には労務管理が必須
<日本社会保険労務士法人の桐山慶之さん>

助成金は、用途に応じて様々な種類があることを説明してきました。それぞれに受給要件は存在しますが、どれもが企業にとって近いうちに取り組まなければいけない課題が要件になっていると感じられたのではないでしょうか。

「実際に助成金は、企業にとってメリットが多いことがご理解いただけたと思います。それぞれの助成金には受給要件が存在しており、皆さんは要件を満たせるか? という不安もあるかと思います。しかし、実際には通常の企業様であれば、大きなハードルとなるものは多くありません。今回は、建設業に従事されている方が多いので、ひとつ挙げるとするならば、勤怠管理になるかと思います」(桐山慶之さん)

オフィスに出勤する通常の企業ならば、以前ではタイムカード。現在では。指紋認証やICカード、パソコンの起動時にクラウド上のツールで行うなどが主流になっています。しかし、建設業ではオフィスでは、現場単位で仕事は進行し、残業の発生など一様ではないため、勤怠管理は困難です。

その点を、桐山さんを指摘しながら、実際の助成金の受給が可能かどうかのチェックシートを来場者に配布。下記にまとめましたので、ぜひ皆さんもご活用ください。

●自社の助成金受給力をチェックしよう!

フェーズ 質問項目 ◯ or ☓ 備考
保険関係 ①雇用保険に加入している 1週20時間以上、31日以上
②労災保険に加入している 労働者が1人でもいる場合、加入
③社会保険に加入している 個人で5人未満は義務なし
④労働保険料の滞納がない
共通要件 ⑤過去に助成金の不正受給がない
⑥性風俗関連事業ではない
⑦暴力団関係者ではない
⑧直近6ヶ月間に会社都合での解雇をしていない
労働基準法 ⑨割増賃金は適正に支払っている 適切に管理した勤怠を元に支払う必要がある
⑩労働時間を適正に把握している 勤怠管理を行う必要がある
⑪過去1年以内に労働基準法違反はない 労基署の調査等是正指導の有無
⑫36協定を締結し、労働基準法監督署へ提出している 残業・休日出勤ありは必須
就業規則 ⑬就業規則・賃金規定がある 10人以上は必須
⑭就業規則を労働基準法監督署へ届け出している 10人以上は必須
帳簿関係 ⑮出勤簿又はタイムカードがある ⑨⑩のための時間管理
⑯賃金台帳がある 適切に管理した勤怠を元に支払った実績を管理する必要がある
⑰雇用契約書や労働条件通知書がある

備考の赤い字の部分の項目は、勤怠管理が必須となります。桐山慶之さんのご指摘の通り、建設業界の企業の場合、ここがボトルネックになってくるのではないでしょうか?

◎建設業は働き方改革関連法案でどう変わる!? 〜36協定と勤怠管理について〜
◎より厳密さが求められる法定三帳簿(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿)の書き方
◎割増賃金の計算方法と勤怠管理について

建設業の発展のために勤怠管理は必須

助成金には勤怠管理が必要
受給要件に関しては、少し難しく感じる方がいらっしゃるかもしれませんが、よくよく考えるとどれも建設業の発展には、必要なことばかりではないでしょうか?

正確な勤怠管理や賃金、休日、育成などは建設業が他産業より遅れをとっていたために、若い人材に魅力的に映らなかったという事実があります。

建設業という大きな枠で考えなくても、自社の成長を考えた際に、どれもが必要な施策であり、それを実施することで国や地方自治体から助成金を受給できます。ぜひ助成金をうまく活用して、企業経営の一助となるようにしてみてはいかがでしょうか。

 

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