建設業界で聞いたストレスの原因は!? メンタルヘルス対策と働き方改革を考える

建設業界でも「働き方改革」が叫ばれていますが、なかなか実感が湧いていない方がほとんどかと思います。しかし、現在官民一体となって「週休二日」「4週8閉所」「建設キャリアアップシステム」など様々な取組が同時進行しています。そのひとつに「建設業のメンタルヘルス対策」があります

どうにも肉体的な過酷さにばかり焦点が当てられるきらいがあった建設業界ですが、“メンタルヘルス=心・精神的健康”にもようやくフォーカスされるようになりました。

皆さんは、仕事のどのような部分からストレスを感じているのでしょうか?

今回は、建設業界で働いている方に伺った意見とともに、「建設業界のメンタルヘルス対策」について取材しました。

建設業のメンタルヘルス対策の現状

建設業界のメンタルヘルス

平成29年3月に施行された「建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律」に、建設工事従事者のメンタルヘルス対策の自主的な取組の促進が明記されました。

メンタルヘルス対策は、建設労働災害防止協会(建災防)が中心となって「建災防方式健康KYと無記名ストレスチェック」を考案し、推進しています。

「健康KY」は、毎日のKY活動時に、職長から作業員に対して、睡眠、食事、体調に関する問いかけを行うことでメンタルヘルス不調の早期発見と労働者個人の気づきを促進するものです。

また「無記名ストレスチェック」は、工期内に作業員全員が集合する安全朝礼の場で、ストレス状況を把握し、より働きやすい環境となるようにする取組です。

このように建設業でも少しずつではありますが、現場で働く方々のストレスやメンタルヘルスにも注力をしている状況です。

では、建設業ではどのようなストレスがあるのでしょうか?

実際に建設業に携わる方々に、ストレスの原因と改善点をお伺いしました。

ストレスチェックを受けたことがある人は、3割弱

ストレスチェックのアンケート<ケンセツプラス編集部による建設業界に従事する方50名へのアンケート結果>

50名の建設業界で働く方にアンケートをとったところ、実際にストレスチェックを受けたことがある方は14名(全体の28%)となりました。地域差や所属企業の規模で差異がありそうですが、これからどのくらい浸透がするか、推移を見守りたいと思います。気になるのは、どのような点にストレスを感じているか?ということです。実際にいただいた意見を見ていきましょう。

「とにかく無茶な工期が多い!」という悲鳴が多数……

内装業男性の意見

 

「短い工期に設定されていることが多く、非常にプレッシャーを感じる。もっと余裕を持った工期を設定してほしい!」

<内装業40歳・男性(兵庫県)>

 

システムキッチン施工の女性

 

工期がどんどんと短くなり、無茶な時間を迫られたり、狭い現場内で様々な業者が行き交う。気を使いながらも、工期に追われ、非常にストレスが溜まります。
<システムキッチン施工 32歳・女性(広島県)>

 

測量業の男性

 

工期と人に余裕持って計画をしてほしい。後工程が常に割を食っている。工期が短縮されることで、疲労の蓄積や無茶な作業が横行すれば、労災につながりかねない。
<測量 30歳・男性(佐賀県)>

 

 
工期に関しては、誰もが共感できる部分ではないでしょうか。工期が短くなると、長時間労働や休日出勤へと繋がっていきます。事実、国土交通省の調査では、下記のようなデータがあります。


<建設業における働き方改革「実労働時間及び出勤日数の推移(建設業と他産業の比較)」>

 

2016年の年間の実労働時間は2056時間、労働日数は252日となっており、他産業より多くなっています。また休日は、1カ月の平均で4.6日。週に1.2日となり、完全週休二日とは程遠い結果となっています。現在、大手ゼネコンを中心に「4週8閉所」「ノー残業デー」「フレックス制度」などの取組が始まっていますが、建設業界全体に浸透するにはまだまだ時間がかかりそうです。

長時間労働・休日出勤の割には給料が……経済的不安も

 

家族を養っていく上で、経済的なプレッシャーと事故などで仕事ができなくなる不安があります。朝礼があるため、毎朝7〜17時まで作業をしており、休みが少ないので是正を求めます。
<左官業43歳・男性(鹿児島県)>

 

 

仕事内容の厳しさの割に給料が少ないなと感じています。女性社員として働かせていただいているので、大きく不満は言えませんが、女性が働きやすい環境作りが必要では?
<塗装業48歳・女性>

 


小さい工務店で経理をやっています。オリンピック特需と言われていますが、下請けは恩恵が少なく、資金繰りが毎月厳しいです。そのため雇用人数を最低限に抑えており、慢性的な人不足です。職人さんの長時間労働と休日出勤が余儀なくされ、負のサイクルが生まれています。改善はしたいのですが、現時点では不可能な状況です。
<経理事務52歳・女性(神奈川県)>

 
長時間労働、休みが少ないとなると、それなりの給料が欲しい、というのは自然なことかもしれません。特に現場で働かれている方は、怪我がつきものであり、年齢を重ねることで体力的に続けることができるか?という不安もあります。さらにオリンピック特需で湧いているように見えるが、それは一部だけであり、何も変わっていないという意見もいただきました。

このような「負のサイクル」が生まれているのが現状ではないでしょうか。これでは、日々の疲れに加え、将来の不安、経済的不安があるとメンタルヘルスは健全に保つことは難しくなります。建設業界のメンタルヘルス不全の要因の多くは、業界全体の労働環境にあることが理解できます。

古い縦社会にストレス。教育体制や女性活躍の場を!

 

上司とのコミュニケーションが上手くいかなくて、お客様に迷惑をかけてしまうことも多い。部下を育てようという環境がなく、辞めていく社員もいます。しっかりとした教育体制の構築を望みます。
<事務 24歳・男性(東京都)>

 

 

形だけのストレスチェックはありますが、世間体を気にしたものだと感じています。給料は多い方だと思いますが、その分残業とストレスが多いです。先輩社員からは「10年頑張れば天国が待っている」と言われていますが、正直キツイ。メンタルケアやITを使った業務効率化、若手の意見も通るような風通しの良さが必要です。
<営業 27歳・男性(大阪府)>

 

 

改善点はたくさんあります。昔の風習が残っており、若い職人さんには態度が良くない人が多く、イメージが悪くなる。真面目な技術職としての自覚が必要。
<配管設備 61歳・男性(東京都)>

 

 

年齢が上になればなるほど、女性蔑視の風潮があり、一昔前どころか三昔ぐらい前に感じる。縦社会もいいですが、適任ではない人が上司だと若い人はまず入ってこないと思います。もっと頭を柔らかくするべきではないでしょうか。
<一般事務43歳・女性(長野県)>

 
その他では、体質や体制にストレスを感じているというご意見をいただきました。依然として、「縦社会」「男社会」のカルチャーが色濃く残っており、女性や若い方は、馴染みにくく風通しを悪いと感じているようです。こういった点が担い手不足につながっているという意見もある一方で、プライドを持って技能者として従事してきた職人さんから、若い方に「もっと誇りを持ってほしい」というありがたい意見もありました。

建設業界特有の重層構造ゆえに、課題は非常に多く、根が深い問題もあり、「働き方改革」も一筋縄ではいきません。もちろん建設業界に限らず、他業種でも労働環境の改善は一歩ずつ進めている状況です。これからどのような対策が必要なのでしょうか。

これからの課題と対策

極論を言ってしまえば、建設業界に限らずストレスのない職場は存在しないのかもしれませんが、労働環境の改善は現状把握をすることが大前提となります。今回、掲載した声は、建設業界の現状を如実に現しているものばかりではないでしょうか?

また建災防のホームページでは、「建災防方式健康KYと無記名ストレスチェック」による労働環境改善の事例が掲載されています。

無記名ストレスチェックを活用した職場環境改善好事例

日本の全産業が手探りで「働き方改革」を行っている現在、一歩ずつ、事例を確認しながら、古い体質を変えていくのがいちばんの近道かもしれません。またひとりひとりが声を挙げていくことも必要でしょう。

生産性とモチベーションは密接な関係があります。風通しのいい職場環境や長時間労働の解消によってインプットをする時間が生まれ、ワークライフバランスが生まれ、生産性が向上し、魅力のある業界となります。そうなると、担い手不足も自然と解消されるかもしれません。

ケンセツプラスでは、今後も建設業界の動向を注視していきます。

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