建設現場のICT化はどこまで進んでいる?働き方改革の事例と現状について

国土交通省が建設業界の生産性向上を目指して掲げた「i-Construction」。ICTやAI、ロボットを活用した働き方改革の波が、皆さんの周りでも少しずつ変化が生まれてはいないでしょうか?例えば、現実の世界ではすでにこんな技術が進んでいます。
 

  • ドローンを使用した3D測量
  • BIM/CIMを活用した業務効率化
  • VRを活用した危険予知訓練
  • 3Dプリンタを活用した建築物・建材

などなど
 

世界的に急速に広まっていく建設業界のデジタル化の波は、日本も例外ではありません。この潮流は、労働人口の減少と密接な関係がありますが、建設業界の未来はどのように変化していくのでしょうか?今回は、日本でただ一人の建設ITジャーナリストである家入龍太氏のセミナーをもとに、建設業界のICT化・デジタル化の現状と未来を紹介していきたいと思います。

いま建設業界で求められる労働生産性

建設ITジャーナリスト家入龍太氏
今回の記事は、2018年5月23日に開催された建設通信新聞主催・株式会社Box Japan共催によるセミナー「建設現場が楽になるデジタル革命」の内容をレポートしていきます。

登壇したのは、webサイト「建設ITワールド」などで知られる建設ITジャーナリスト・家入龍太氏。建設業界で労働生産性向上が急務である理由として、まず「労働人口の減少」と「建設投資額」の関係性からスタートしました。

 

建設投資額の推移<国土交通省「平成29年度 建設投資見通し」よりグラフを作成。2015・16年度は見込み。2017年度は見通し>

 

日本の将来人口推移<国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」よりグラフ作成>

 

上記のグラフのように、建設投資額は、1998年には71.4兆円だったのが、2010年には41.9兆円にまで下がり、2017年には東京オリンピックの影響もあり、55兆円まで復活しています。しかし、2020年以降リニアモーターカー特需も予想されますが、大きく建設投資額が増えることは考えにくい状況です。

また日本における労働人口が減少するのは確実です。全体の労働人口ともに15〜64歳の層が減少し、65歳以上の人口は増えていきます。人口減は建設産業だけではなく日本の全体が直面する問題ですので、各産業や企業が人材確保により力を入れてきます。そのなかで入職率が問題となっている建設業界の将来は明るいとは言えないでしょう。

売上を伸ばすには、基本的に「単価を上げる」と「お客を増やす」のどちらかですが、建設投資額の伸びが期待できず、労働人口が減少するなかでは、どちらも厳しい道程となってきます。

投資も人が減るなか、どうやって業界を拡大させるのか?

では、このような状況下で建設業の企業はどうやって生き残りを図るのでしょうか?その道は大きく分けると4つあると家入氏は言います。

 

  • ①国内市場で競り合う
  • ②国際市場へ進出する
  • ③新サービス開発
  • ④建設業以外も見据えた多角化戦略

 

4つの道のいずれを選択するにせよ、肝となってくるのは、「いまより少ない人数で多くの仕事をする」ことです。つまり、いま世の中で叫ばれている「働き方改革」や「労働生産性の向上」と言いかえることができるでしょう。

労働生産性の導き方

代表的な例では、これまで人を介する業務を、テクノロジーを活用して効率化を目指すことが挙げられます。

建設業界以外では、AIやロボットを取り入れた動きが本格化しています。例えば、三菱東京UFJ銀行や三井住友銀行がRPA(ロボティック・プロ説・オートメーション)を導入したことで、大幅な業務効率化を可能にしました。事務的で単純な処理作業は、多くのリソースが必要な上に、膨大な時間がかかっていました。しかし、RPAを導入したことで、数万時間を短縮でき、ミスも起こりません。人件費の削減はもちろんですが、余剰人員を他の業務に回すことが可能となります。

 
【大成建設の例】
「大成建設グループ 中期経営計画(2018-2020)」では、ポスト東京五輪に向けて、「成長が見込まれる海外市場への取り組み強化」と「生産能力の向上」、「注力分野(「エネルギー・環境」「都市開発・PPP」「リニューアル」「エンジニアリング」)の成長加速」が大きく掲げられています。

また「働き方改革」では、下記のような目標を設定しており、「生産性向上」の面では、2016年度比で2025年までに25%アップを目指しています。労働時間を減らしながら売上をあげるための本格的な取組を行っています。

2018年度 2019年度 2020年度
健康管理
残業時間
月100時間以上を0人 月平均80時間以内達成 月平均80時間以内継続
(月平均70時間準備期間)
休日+代休 全社員「4週8休(休日+代休)年間104日以上」を目指す
作業所閉所 統一土曜閉所運動
(毎月第2土曜の閉所)に取り組む
全事業所「4週6閉所」の実現
(適用困難事業所は除く)
全事業所「4週8閉所」の2021年度実現に向け取り組む
(適用困難事業所は除く)

<「「大成建設グループ 中期経営計画(2018-2020)」よりグラフを作成>

では、どのように生産性を向上させるのか?大成建設では、「建設生産システムの革新」として、下記を重点項目としています。

(1)生産性の向上
  • 社員の適正配置や再雇⽤社員の活⽤、派遣社員の確保等による技術者確保
  • BIM・CIMの機能向上や設計施⼯⼯事におけるBIM適⽤の推進
  • ICTの活⽤、機械化施⼯、及びフロントローディングの推進
  • 組織調達等による現場管理業務の効率化
  • ゼネコン・サブコン・資材メーカー等とのアライアンス強化
(2)省人化・省力化
施工技術の開発
  • ICT活⽤による⾃律化機械、遠隔制御技術の開発
  • IoT・ビッグデータ・AI等の活⽤による施⼯の効率化・⾃動化の推進
  • 構⼯法の開発や3Dプリンターによる新しい形状部材の製作

<「大成建設グループ 中期経営計画(2018-2020)」より一部抜粋>

難しいことが書いてありますが、要はAIやIoT、ロボットを活用して、生産性を挙げていくということがメインになっています。

では、現在どのような技術が建設業界で導入されているのでしょうか?
次項で詳しく見ていきたいと思います。

建設業で起きているデジタル化の事例

建設業界のICT化の事例

では、AIやIoT、ICTなどを活用した建設業界での、生産性向上の事例をいくつかピクアップして紹介します。建設業界の在り方そのものを変えてしまいそうなものから、目の付け所が素晴らしく大きな効率化を期待できるものまで様々です。
(※下記の事例には、家入氏がセミナーで挙げたもの以外もございます)

 

清水建設による「Shimiz Smart Site」

清水建設株式会社が、自立型ロボットと人がコラボしながら工事を進める次世代型生産システム。「Shimiz Smart Site」は、ブームを伸縮させて作業半径を調整する水平スライドクレーン「Exter」、溶接トーチを自在に操る柱溶接ロボット「Robo-Welder」、天井や床材を2本の腕で巧みに施工する多能工ロボット「Robo-Buddy」などで構成されています。「Shimiz Smart Site」は、30階建て、基準床面積3000㎡クラスのビルに適用した場合、揚重・搬送作業で75%/2500人、天井・床施行で75%/2100人、柱溶接作業で70%/1150人の省人化効果を得られるという試算結果が出ています。

 

デジタル野帳「eYACHO」「Field Pad」

アプリ「eYACHO」や「Field Pad」はその名の通り、野帳をデジタル化したもので、手書きでメモを書くことができ、写真・動画・音声も記録することが可能です。これまで現場に持ち歩いていた図面、野帳、デジカメ、黒板などが不要で、iPad一台で完結できることから、施工管理の生産性を大きく向上することができます。クラウドとの連携も可能なので、iPadでタイムラグがなく、情報の共有もでき、図面、帳票などもPDFにして取り込むことができるので、ペーパーレス化への貢献にも期待できます。

 

3Dプリンタによる建設

海外では住宅や金属橋など建物そのものを3Dプリンタで作ってしまう技術が確立されています。日本は法律もあり、建築模型などで活用される程度でしたが、徐々に技術革新が進み、その規模も大きくなっています。例えば、独自のセメント系材料が開発された結果、型枠を使わないで建築部材を短時間で製造。複雑な計上のものもコンピューターにプログラミングをすることで、大きな省人化が可能となります。海外では、移動建設3Dプリンタが、24時間100万円で住宅を作り、大きな話題となりました。

 

3Dスキャンで施工管理を自動化

ドローン、3Dレーザースキャナを搭載したロボットにより自動で工事現場の点群データを集積・解析。その結果をBIMデータと照らし合わせることで、現場の進捗状況を報告してくれるのがアメリカのDOXEL社の「DOXEL AI」です。BIMデータと連動しているため、進捗の遅れはもちろんのこと、基準とのズレなども指摘してくれます。カリフォルニア州のサンディエゴの医療施設のビル建設に導入したところ、労働生産性が38%も向上したとのことです。

 

構造物の点検作業を効率化「ひびみっけ」

富士フイルム株式会社が、2018年4月より提供しているチョーク・ひびわれを自動検出してくれるサービスです。老朽化した構造物を撮影した画像をサーバーにアップロードすることで、写真を自動で合成し、0.1mm幅以上のひび割れを高精度で自動検出してくれます。1枚400円からサービスを利用可能で、データはCADに書き写すこともできます。定期点検の時間を42%減少(富士フイルム株式会社調べ)でき、今後老朽化による点検・検査に大きく貢献してくれそうです。

 

労務・安全書類をクラウド上で管理「グリーンサイト」

現場に入場する際に必ず提出しなければいけない作業員名簿など労務・安全衛生に関する書類(通称:グリーンファイル)を、クラウド上で作成・提出・確認できるサービスです。元請によってはフォーマットが異なったり、現場が変わるたびに作成していた書類を一度入力したものは、クラウド上で提出が可能。建設業許可証、資格、従業員の健康診断、車検など様々な書類を管理でき、期限が迫った書類にはアラートで知らせてくれます。用紙代・コピー代も削減できるので、社内のペーパーレス化が促進します。

 

生産性向上の一歩目は、ムダを削ること

テクノロジーを活用した生産性向上の例を挙げていきましたが、ムダを削減することでも大きな生産性の向上を見込めます。家入氏は、建設業には“10のムダ”があると指摘します。

建設業界にある10のムダ

テクノロジーや最新技術の導入には、どうしても初期投資や費用がかかります。長い目で見ると、結果的に導入するとコストが安くなるサービスが多いですが、生産性向上の第一歩はムダの削減であることは間違いないでしょう。

働きやすい環境作りも待ったなしの建設業界では、人の手が必要な作業とロボットやAIの作業の棲み分けが今後、加速度的に進んでいきそうです。

技術を培った熟練の技能者がロボットに仕事を奪われる……なんてことにならない明るい未来を期待したいと思います。
 
 

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