建設現場の事故を減らす!労災防止のプロに聞く、労働災害の防ぎ方

どれだけ防ごうと思っていても、起こってしまうのが建設現場の事故。平成27年には327人の労働災害による死亡者が出ており、およそ1日に1名の死亡者が出ているのです。

これに怪我の件数を加えると数は一気に跳ね上がり、平成27年には15,584人もの(休業4日以上の)死傷者が発生しています。それだけ建設現場は労働災害が起こりやすい場所なのです。
出典:建設業労働災害防止協会「安全衛生早わかり 平成28年度版」より

怪我や後遺症、時には人命を奪うこともある労働災害は、どのように防げばいいのでしょうか?

そこで、今回は「建設業労働災害防止協会」専務理事 田中正晴さんに、建設現場で起こる労働災害の防ぎ方を伺いました。

建設現場であなたと周りの人々の安全を確保するために、この記事を役立ててください。

■工事現場の安全をつくる「建設業労働災害防止協会」とは?

建設業労働災害防止協会(以下、建災防)は昭和39年、高度成長期に労災が増える中で、労働災害防止団体法にもとづき建設現場の事故を防ぐために発足した組織です。

建災防は全国47都道府県に支部を持ち、活動は
・建設業労働災害防止規程の設定
・労働災害防止計画に基づいた5カ年計画の策定
・安全管理士による労働災害を防止する指導、援助
・建設業労働安全衛生マネジメントシステム(COHSMS)の展開
・全国建設業労働災害防止大会の開催

など多岐にわたります。

その地道な活動から、昭和39年の発足当初に2,405人だった死亡者数は、平成27年に327人にまで減少し、労働災害による建設業の死亡者数は7分の1以下に減っています。

■工事現場で起こりやすい労災は「墜落・建設機械・倒壊」の3つ

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――ここからは建災防の専務理事 田中正晴さんに工事現場の事故を防ぐための方法をお聞きしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。まず、近年増えている労働災害についてお聞きかせください。

田中正晴さん(以下、田中さん):建設現場では昔から「三大災害」といって、「墜落・転落災害」「建設機械・クレーン等の災害」「倒壊・崩壊災害」が多く発生しています。その割合は、全体の69.4%を占めているのです。

その中でも一番多いのは、墜落・転落災害で、全体の39.1%の割合を占めています。墜落・転落災害の原因は、「手すりの設置が不十分だった」「足場の固定が完全に行われていなかった」「安全帯を使用していなかった」などの基本的な措置が行われていなかったために起こっています。

――他の2つの災害はどのような原因から起こっているのでしょうか?

田中さん:建設機械・クレーン等の災害では「用途外の使用をした」「オペレーターが後方確認を怠った」「重機誘導者を配置していなかった」など。倒壊・崩壊災害では「掘削するときに土止めを設置していなかった」「作業開始前の点検を怠っていた」などの原因が報告されています。

――どの労働災害も、確認や点検をしっかり行い、安全のための措置をしっかり行っていれば防げた労働災害かもしれません。ほかに、最近ではどのような災害が増えていますか?

田中さん:近年では建設業の高齢化が原因と考えられる転倒災害が増えてきました。また、交通労働災害も増えています。これは、事務所から現場に移動する時に乗り合いの車両で災害が起きるものです。

――高齢化による転倒災害はこれからも増加していきそうですね。

■建設業にも“ストレスマネジメント”の波が来た

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――ほかに近年増加傾向にある労働災害はありますか?

田中さん:最近では、長時間労働やパワハラ等のストレスによる精神障害や自殺に関する労災請求が上昇し続けています。平成26年には労働安全衛生法が改正され、常時50名以上を雇用する事業者に従業員のストレスチェックの実施が義務付けられ、平成27年12月から施行されましたよね。

工事現場で働く方はご存知だと思いますが、「重層下請け」と言って、様々な職種の労働者が現場に入っています。休業日も少ない業界ですし、どんどん人も入れ替わるので、ストレスが多い仕事環境だと思います。

建災防では、ストレスによる労働災害を防ぐ手段を2つ提案しております。
ひとつは、「無記名のストレスチェック」によって現場全体の様子をチェックすること。もうひとつは、「健康KY」によって個々の作業員の状況をスクリーニングすることです。

まずは現場の状況を知って、そこから状況に合わせて対策を講じていきましょうという考え方ですね。

――他の業種でもストレスによる弊害が目立ってきていますが、建設業界にも同様の流れが来ているのですね。

田中さん:建災防では現場のストレス管理も含め、労働災害を防ぐために「COHSMS(コスモス)」という建設業の特性に考慮したマネジメントシステムの普及に努めています。

これは厚生労働省の「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」に準拠したもので、経営管理の一環として組織的・体系的に行う安全衛生管理の仕組み(システム)です。

システムを事業者自らが構築し、確実にかつ効率的に安全衛生管理活動を行うことにより、「事業に潜在する災害要因の除去・低減」、「労働者の健康増進と快適職場の形成の促進」および「企業の安全衛生水準の向上」をはかろうとするものです。

COHSMSの認定を受けている建設事業場は、平成27年2月現在で247事業場です。そして、その事業場のもとで多くの建設工事現場においてCOHSMSが運用されています。結果、認定された多くの建設事業場で災害指数や死傷者数が減っています。

――COHSMSは着実に成果を出しているシステムなのですね!ぜひ様々な業者さんに活用してもらいたいところです。

■「自分だけは大丈夫」はNG!凡事徹底で労災を防ぐ

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――先ほど三大災害などの労働災害についてお聞きしましたが、どのような行動・心がけをすればそれらの労働災害は防げるのでしょうか?

田中さん:物的な要因である機械設備等の安全対策がまず必要ですが、それに加えて、働く人の要因である不安全行動をなくすことが必要です。

大切なことは、現場において定められた作業手順等のルールに従うこと。労働災害の発生を見ていると手順の省略行為をしたり、ルールがあるけど守っていない場合がほとんどです。

例えば、足場の上での作業において、階段があるのに外側をよじ登ってしまったり、重機の作業範囲の死角に入って挟まれてしまったり……。「自分だけは大丈夫」と思っていると労働災害に遭う可能性が高まってしまうので、急いでいても作業手順等はしっかりと守るようにしましょう。

もうひとつ、労働災害を防止するために教育は大切な要素です。建災防では本部および支部において、多くの安全衛生教育を行っています。

特に、現場のキーマンである職長・安全衛生責任者に対して、「職長・安全衛生責任者能力向上教育(再教育)」を平成29年度から展開していきたいと考えています。

この教育はグループ討議を多く取り入れた実践的な教育で、現場から労働災害をなくすために多くの職長さん(安全衛生責任者)に受講していただくことが重要だと考えています。

安全大会にも言えることですが、労働災害やその防止対策について「知る」だけでなく、「繰り返し知る」こと、「安全管理の情報を更新してもらう」ことが労働災害を防ぐために必要なことです。

――忘れた頃にやってくる労働災害は、繰り返し注意を喚起することで防ぐことができるんですね。そういえば、季節性の災害はあるんでしょうか?冬や夏に起こりやすいものとか……。

田中さん:その点でいうと熱中症が挙げられますね。世間では夏場に起こるものだと思われていますが、5月以前から熱中症になることもあるんですよ。

――え!?5月以前からですか?

田中さん:そうなんですよ。寒い時期からだんだん暖かくなってくると、気温の変化に体がついてこれなくなってしまうんです。現場によっては窓を閉め切っての作業もあったりするので、暑さ指数(WBGT値)が高くなることもあります。

現場の熱中症を防ぐために、塩飴を配ったり、空調服を用意する場合がありますね。中にはかき氷の食べ放題を行っている現場もあるそうですよ。

――各現場で様々な工夫をして労働災害を防ごうとしているんですね。最後に、現場で働く方へ向けてメッセージをお願いします!

田中さん:建災防は50年という節目を迎え、新たな50年を歩み出そうとしています。これから先の50年も現場の皆さんの安全を守るため、時代の変化に対応し、情報を集め、研究しながら新しい安全対策を進めていきたいと思います。

――田中さん、本日はありがとうございました。

■現場の安全が、現場に関わる人々の生活を守る

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今回田中さんから伺ったお話をまとめると、労働災害を防ぐためには以下のような心がけが必要だと感じました。

・安全のための手順や、設備の設置をしっかり行うこと
・「自分だけは大丈夫」と思わずに、ルールや手順を守ること
・安全のために行うことを「知る」だけでなく、現場の人と共有し、常に注意を喚起すること
・定期的に安全衛生教育を受けること

工期に追われる現場の方の中には、これらの心がけを見て「忙しいから難しいよ」と思われる方もいるかもしれません。

しかし、考えてみてください。もしご自身が大怪我をすれば、その間は仕事をすることができません。もしあなたが亡くなってしまえばご家族の生活を守る人はいなくなってしまいます。あなたが怪我をしなくても、現場の誰かが怪我や死亡してしまうと、その周りの人はとても辛い状況に追い込まれてしまいます。

現場の安全を守ることは、あなたの安全を守るだけでなく、現場で働く方や、その周りの方の生活を守ることにつながるのです。様々な人が関わる現場だからこそ、今日も安全第一で作業を進めてください!

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