海外進出を狙う建築業者へ、事業撤退を回避するために押さえたい7つのポイント

2020年の東京五輪特需に沸く建築業界ですが、2019年をピークに新築工事の件数は減り、五輪以降の国内市場は縮小していくと予想されています。
日刊建設工業新聞「建設需要、19年がピーク/量から質へ転換、人材育成・生産性向上に力」より

将来的な国内市場の伸びが見込みづらいなか、新しい市場のひとつとして注目されているのが海外市場。この記事では、海外進出を考える中小建設企業の方々に向け、国土交通省主催の「海外進出戦略セミナー」の様子をお伝えします。

規模総額1兆を越える海外市場

日本の建設業の海外進出は戦後すぐ、東南アジア各国への戦後賠償としてはじまり、1980年代以降は発展途上国に対するODAの拡大により、主にアジアで受注を拡大していきました。

海外受注額は1996年に1兆6000億円、2014年には過去最高の1兆8000億円を記録し、国内全体の市場から見ても、大きな規模を持ちます。
(社)海外建設協会 海外受注実績の動向より

この海外市場進出を目指すに企業に対しておこなわれた、国土交通省 土地建設産業局主催の「海外進出戦略セミナー」では、タイ・ミャンマー・インドネシアなどの東南アジアに進出した企業の事例紹介や、シンクタンクによる海外市場に関わる講演などが行われました。

今回は、国土交通省 建設産業生産性向上アドバイザーとして活動する鐘江敏行氏による講演をもとに、海外進出の際に起こりうるリスクを避けるため、押さえておきたい7つのポイントを解説していきます。

海外進出のリスクを避けるために、気をつけるべき7つのポイント

海外に進出するメリットは、人件費や原材料などの安さ、外資優遇税制などによる「コスト削減」をはじめ、販路の拡大や企業の認知度向上など様々なものがあります。

一方で、現地の文化や民族性に合わせて経営をする必要があることや、法律の壁により思ったように事業が展開できないなどのデメリットも存在しているのです。

今回の講演で講師を務めた鐘江氏は、10年以上中堅・中小建設業の海外進出を支援してきた実績を持つ中小企業診断士(中小企業向海外支援団体「COS」を主宰)。

その経験から鐘江氏は「海外展開に際して必要最低限の準備を怠った企業は、志半ばで撤退せざるを得ない状況になり、時間や資金のロスをしてしまうケースも多い」と言います。

鐘江氏いわく、海外展開を後戻りなく検討する基本的なポイントは主に7つあるそうです。

①法規制を確認する

海外で仕事を受注し、ビジネスをおこなう際には、現地法人がその足掛かりになります。
しかし、世界各国には、自国の産業を守るために外資企業の進出を制限する法律があり、設立時から設立後まで様々な規制がかけられているのです。

たとえば、インドネシアに建設・土木機器のレンタル業を開業する場合、当国外資規制では、内資100%でなければ事業が出来ず、現実にどのような手法で日系企業が進出しているのか専門的な知識や調査が必要です。

海外で行いたい事業にはどのような制限がかけられているのか、制限がかけられているならばどのようにクリアすればよいのかなど、専門家やJETRO(日本貿易振興機構)などに相談してみましょう。

②市場の調査

国内で起業するのと同様に、海外進出の際は、市場規模や見込み顧客などを調査しましょう。

具体的には、「目指す業態」「市場規模」「業務形態」「見込み顧客」「進出にかかる費用の概算」などを、進出を検討している国ごとにまとめます。

調査をおこなう際は、現地に詳しい専門家のサポートがあると、より信ぴょう性が高いデータを取得することができます。JETRO(日本貿易振興機構)、中小機構などでFS調査(フィージビリティスタディ)のサポートを受けられるので、協力を仰いでみましょう。

③課題やリスクのケースを把握しておく

先ほど挙げた外資規制や市場可能性のほかに、「工事期間中のクレーム処理」「為替リスク」「治安(テロ)対策」「現地税務への対応」など、海外進出の際には様々な課題やリスクが発生します。

これらのリスクは全て解決しようとすると莫大な知識、時間、コストがかかってしまいますが、解決できなくとも発生ケースなどを把握しておくと、もし起こってしまった場合にも対処がしやすくなります。

④撤退ラインを決めておく

国外で事業をおこなうと、国際情勢や国政の変化で事業継続を困難にする事象が発生し(所謂カントリーリスク)、事業を続けることが困難になる場合があります。この時に資金を注入し続けると、海外事業だけでなく会社本体が倒れてしまうことも……。

このリスクを避けるため、撤退方針は明文化したうえで、出来ればステークホルダーにも正確に伝えておきましょう。

トラブルが起きた時には冷静に判断することが難しいものです。従業員に撤退方針を伝えておけば、トラブルが起きて非常時の指示を受けた時でも冷静に対処することができるので、リスクを回避できる可能性が高まります。

<撤退方針の例>
・当国国内事情により大きなカントリーリスクが発生し、社員の安全もしくは事業の継続性に大きな影響が出た場合
・事業計画目標である事業5年度に累積損失の解消を達成できなかった場合、など

⑤助成金に頼らず、自己資金を一定量確保する
海外進出の際はJETROや中小機構などから資金的助成を受けることができます。しかし、公的資金の活用は一時的にしか効果はありません。

現地で事業をおこなう際は、現地の調査費をはじめ、法人の開設費や運営経費などが継続的にかかります。事業形態によってはすぐに売り上げを回収できない場合もありますので、事業資金には余裕を持ち、助成金に頼りきらない経営を目指しましょう。

⑥現地パートナーを確保する

パートナーとなる企業や人物は、言語対応や現地の商習慣、法令への対応など、海外進出をおこなう際に欠かせない存在です。

現地への適応を担う存在ですので、パートナーの力量や事業への姿勢で、事業が成功するか否かは左右されてしまうでしょう。そのため、パートナーを選ぶ際は、必ず期間を置いた付き合いと出来れば種々の方法で信用調査を経たうえで取引を開始しましょう。

加えて、講演を行った鐘江氏はコンサルティング経験から、以下の点を指摘していました。

・中小が相手にする企業はオーナー経営者が全ての実権を握っていることが多いため、担当者の意向を即オーナーの意向と思わない
・パートナーを紹介してくれた人(機関)がその企業を熟知・保証してくれるわけではないので、必ず調査をおこなう
・パートナーと知り合う方法は、見本市や視察ツアー(見つけやすいが、信用面で不安あり)、公的機関や顧客からの紹介(信用性はある程度あるが、しがらみが強く断りづらい)などが主流

上記の点を押さえながらパートナー選びをおこなうと、事業を順調に進めることができるのではないでしょうか。

⑦現地スタッフに、マネジメントを任せない

進出早々に現地スタッフをマネージャーに抜擢して、現地での採用及びコスト管理等を任せるすることはおすすめしないと鐘江氏は話します。

現地スタッフをマネージャーにするデメリットは、現地法人のイニシアチブを取られてしまうこと。結果、能力のない親族を雇ってしまい、発注・会計時に癒着が発生してしまうこともあるそうです。

お金周りのことや人事など、経営の根本に関わることは多少コストがかかっても日本人の社員を派遣し、現地の運営を任せましょう。

中小だからこそ海外に向いている

今回講師を務めた鐘江氏は、中小企業こそ海外進出に向いていると言います。
その理由は、「小回りの効く規模なので、迅速に意思決定ができること」や「事業別損益分析と対応決定の明確さ」などが挙げられました。

事実、大手は業態に拘わらず一般的に決済に時間がかかり、その間に市場が動いてしまいチャンスを逃してしまうケースも多いそうです。

市場の変化が激しく、文化や商習慣も異なる海外は、現場に迅速に対応できる中小企業に向いているフィールドかもしれません。

自社の成長チャンスを逃さぬよう、海外進出を視野に入れてみませんか?

 

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