【建設業】いまさら聞けない働き方改革のまとめ〜事業主はどう対応すべきか〜

2019年4月から「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」、いわゆる「働き方改革関連法」が順次施行されています。

働き方改革関連法は、労働基準法の約70年ぶりの大改正となり、慢性化している長時間労働や過労死の問題を改善し、人口減少時代に突入した日本の新しい働き方の指針となるものです。

施行から日が経ちましたが、まだ皆さんの日々の生活には目立った変化はないかもしれません。このタイミングで改めて働き方改革関連法で、何が変わり、今後変わっていくのかを解説します。

働き方改革関連法が成立した背景

なぜこのタイミングで、労働基準法の大改正が行われたのでしょうか。最大の理由は、日本の社会構造の変化、つまり少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少にあります。

生産年齢人口の推移<内閣府「年齢区分将来人口推計」をもとにグラフを作成>

上図は、日本の生産年齢人口の推移を表したグラフになります。生産年齢人口は、1995年の8,716万人をピークに減少し始め、2015年には7,629万人。20年間で1,000万人以上も減少しています。さらに2035年には、6,494万人になると予測されており、建設業に限らず全産業において働き手が減っていくのは確実な未来です。

つまり今より少ない人数で、これまでの売上、生産性を維持、向上をしていくためには様々な働き方の改革が必要になってきているのです。

育児・介護との両立と働き方の多様化

少子高齢化による生産年齢人口の減少への対策とともに働き方改革の目的となっているのが、「育児・介護との両立」と「働き方の多様化」です。働き盛りの30〜40代には育児や介護といったライフステージが訪れます。そのようなタイミングで、テレワークやフレックスタイム制など柔軟な働き方ができる体制が整っていなければ離職せざるを得なくなってしまいます。育児・介護をしながらも働ける制度やルールはもちろんですが、「1億総活躍社会」が謳われるように、シニア層の活用や主婦層、外国人、障がい者など多様な人材が個性を活かして働ける仕組みづくりが求められています。

では、次に働き方改革関連法の中身について解説します。

働き方改革関連法の中身〜労働基準法の改正点〜

働き方改革関連法のイメージ

働き方改革の背景を踏まえたうえで、働き方改革関連法の中身や内容について見ていきましょう。何が変わって、これから何が変わるのか。建設業が対応を迫られる内容は下記になります。

働き方改革関連法5つのポイント
法改正のポイント 適用時期
時間外労働の罰則付き上限規制 大企業:2019年4月〜/中小企業:2020年4月〜建設業:2024年4月〜
年次有給休暇の時季指定義務 全企業:2019年4月〜
同一労働同一賃金 大企業:2020年4月〜/中小企業:2021年4月〜
勤務間インターバル規制 全企業:2019年4月〜
月60時間超の時間外労働の割増賃金率5割以上へ引き上げ 中小企業:2023年4月〜

では、それぞれの内容を詳しく解説します。

時間外労働の罰則付き上限規制

労働時間には「所定労働時間」と「法定労働時間」があります。「法定労働時間」とは労働基準法に「1日8時間・週40時間」「毎週1日の休日 または 4週間を通じて4日以上の休日の付与」と定められており、各企業はそれに則って就業規則を作成します。

法定労働時間を超えて労働をする場合、従業員と事業主との労使間で36協定を結ぶ必要があります。36協定にも時間外労働の上限が設定されていますが、特別条項付きの36協定を締結していれば、実質上限なく時間外労働をすることが可能となっていました。

◎建設業は働き方改革関連法案でどう変わる!? 〜36協定と勤怠管理について〜
◎「働き方改革関連法案」成立で変わる「36協定届」の書き方と注意点

しかし、今回の法改正で下記のように上限が設定されます。

  • 時間外労働は年720時間以内
  • 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
  • 時間外労働と休日労働の合計が「2カ月平均」、「3カ月平均」、「4カ月平均」、「5カ月平均」、「6カ月平均」のいずれも月当たり80時間以内
  • 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6カ月が限度

上記の上限を超えるなど違反した企業には、6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科される恐れがあります。大企業は2019年4月から適用され、中小企業は2020年4月から、建設業界は5年の猶予期間が設けられ、2024年4月から適用されます。

年次有給休暇の時季指定義務

年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、事業主は付与した日から1年以内に時季を指定して5日間の年次有給休暇を取得させなければいけません。事業主は、年次有給休暇の取得奨励日を設けたり、計画年休を導入するなどの対応が求められます。ただし、事業主の時季指定や計画年休を導入する場合は、労使間の締結と就業規則の変更などが必要となります。

年5日の年次有給休暇を取得させない、時季指定を行う場合に就業規則に記載していない場合などは罰則が設けられており、従業員1人あたり「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科せられます。

同一労働同一賃金

正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間にある不合理な待遇差を解消するための法律です。具体的に説明すると、正社員とパートタイマーなどの非正規雇用労働者が同じ業務を行っている場合、給与や福利厚生など同等の待遇を受けるべきという考え方です。現在、テレワークやモバイルワークなど多様な働き方が普及しており、そのような働き方をした場合においても不合理な待遇を受けないようにする意図もあります。

不合理な待遇差の判断基準となる「均衡待遇規定」「均等待遇規定」は、今後、法律で整備される予定です。非正規雇用を正社員化した場合に助成金を受給できるケースがあるので、下記の記事を参考にしてみてください。

◎キャリアアップ助成金を受給するには?建設業におすすめの助成金をケース別に紹介!

勤務間インターバル規制

勤務終了後、一定時間以上の休息期間を設け、ワークライフバランスを確保する目的で、「働き方改革関連法」内で努力義務として定められました。一定時間の休息とは、厚生労働省の有識者会議では「8〜12時間」とされており、各企業で対応可能な範囲で選択できるようになっています。EUでは「11時間」と規定されています。

例えば、勤務間インターバルが10時間で所定労働時間が10〜19時(1時間休憩)の企業で6時間の残業をした場合、終業時間は深夜1時となります。次の日の就業時間までの休息時間は9時間で、勤務間インターバルの10時間に満たないことになります。そのような場合、次の日の始業時間を11時にしましょう、という考え方が勤務間インターバル規制です。

月60時間超の時間外労働の割増賃金率5割以上へ引き上げ

これまで月60時間を超える時間外労働の賃金の割増率は、大企業が50%以上、中小企業が25%以上と定められていました。しかし、2023年4月からは中小企業にも大企業と同等の割増率が適用されます。当然、長時間労働の是正が目的となる法改正ですが、月60時間超の割増賃金のほか、深夜割増や休日出勤など割増率は異なるため、企業は従業員の勤怠管理を正確に把握する必要も生じます。

◎割増賃金の計算方法と勤怠管理について
◎より厳密さが求められる法定三帳簿(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿)の書き方

業務効率化とともに就業規則等の変更も必須

働き方改革への対応策
働き方改革関連法の施行によって、業務効率化を目指すのは業界全体の課題です。その一方で、事業主は「年次有給休暇の時季指定」「時間外労働の上限規制」「同一労働同一賃金」「月60時間超の割増賃金」など、法改正に適切に対応することや、就業規則・給与規定の変更が求められます。

◎建設業における就業規則の作り方
◎建設業の給与規程の作り方。 働き方改革関連法で必要になる見直し点について

またデジタル技術により、自動化や省人化も急速に進んでいますし、建設キャリアアップシステムの整備や外国人就労者の受け入れ事業など、いま建設業は多岐にわたる変化が同時多発的に起きています。

この変革をピンチととるか、チャンスととるかによって今後の建設業は大きく変わるでしょう。業界内外に対して、建設業は働きやすい、働きがいがある、多様な働き方が可能だということがアピールできれば、将来の担い手確保にもつながり、明るい未来も創造できるはずです。

 

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