「新・担い手三法」で「技士補」創設。現場はどう変わる?

建設現場イメージ

いま建設業界の大きな課題となっているのが人材の育成・確保。この対策として2019年6月に「新・担い手三法」と称される法改正が国会で可決されました。建設業界における働き方改革の推進や生産性向上への取り組みなどを主な目的としたもので、その一部として、技術者の新しい資格「技士補」も創設されました。「新・担い手三法」による建設現場の生産性向上施策のうち、「技術検定制度の改定(案)」と「主任技術者の配置義務の見直し」を中心に、国土交通省、土地・建設産業局建設業課の建設業政策企画官、平林剛氏にお話をうかがいました。

「人手不足」「生産性向上」に対応する「技士補」

建設業の担い手を育成・確保する法改正

近年、建設業界では慢性的な人手不足が課題になっています。建設技能労働者の約25%が60歳以上になっており、10年後には高齢化によって大量に離職者が出ることが見込まれているのに対し、30歳未満の若手はわずか11%程度。現状のままでは人手は減少していく一方です。これに伴い、建設現場における労働者の賃金や待遇の向上とともに、少ない人数でも効率よく仕事を進められるような生産性を高める取り組みが必要になってきました。

そこで2014年、公共工事品確法と建設業法、入契法を一体として改正し、適正な利潤を確保できるよう、予定価格を適正に設定することやダンピング対策を徹底することなど、建設業の担い手の中長期的な育成・確保のための基本理念や具体的な措置が規定されました。これが通称「担い手三法」です。

2019年6月に可決された「新・担い手三法」は、担い手三法の成果を生かし、そのうえで、頻発する自然災害への対応、働き方改革や生産性向上の取り組みの反映などを盛り込んだ内容になっています。

「10年後を見据えたときに、今のうちから若い人材を確保するための取り組みをしておかなければなりません。賃金を他の業界と同じくらいの水準にする、保険加入を義務化する、長時間労働を解消して週休二日制を目指すといった待遇改善が柱の一つです」(平林氏)

「働き方改革の推進」の面では、休日等を配慮した適正な工期の設定、施工時期の平準化、適正な請負代金・工期での下請契約締結などが含まれています。現場の処遇改善として社会保険の加入の許可要件化も取り上げられています。

「災害時の緊急対応強化・持続可能な事業環境の確保」では、災害時における緊急対応としての契約・入札の仕組みを整え、建設業者と地方公共団体との連携の努力義務化が盛り込まれました。

そのほか、経営業務管理責任者に関する規制を合理化し、建設業の許可に係わる承継に関する規定も整備。高齢化した建設業の経営者からの事業承継がより容易になりました。持続可能な事業環境の確保が目指されたものであり、今後の建設業界の再編、合理化が予想されます。

「働き方改革を推進すると同時に、日本の人口減少を考慮して、生産性向上についても車の両輪として取り組む必要があります。また、近年は台風や水害、地震、それらにともなう停電や断水などの対応も重要です。建設業のみなさんの地域の守り手としての役割も応援したい。そのような意図が込められています」(平林氏)

そして「生産性向上への取り組み」として、情報通信技術の活用などとともに実現したのが、「技士補」資格の新設などによる技術者への規制の合理化です。

新・担い手3法について

引用(以下の図版も同じ):「新・担い手三法について~建設業法、入契法、品確法の一体的改正について~」
https://www.mlit.go.jp/common/001299383.pdf

新たに「技士補」で若手の活躍の機会を提供

現状の生産性における課題について、平林氏は次のように説明します。「従来、各現場には監理技術者が配置されているわけですが、施工作業が行われていればそれを監督し、一日の作業の終了後にはデスクワークをこなす、といった具合に長時間労働を強いられがちです。また現状の現場の数に対し、監理技術者の数も十分とは言えません」。

そこで今回の法改正では、監理技術者の配置要件の緩和が行われることになりました。「監理技術者補佐」を専任で配置した場合には、元請の監理技術者による複数の現場の兼任を可能としたのです。この元請の監理技術者を補佐する者の資格を新たに創設することになりました。それが「技士補」です。

国土交通省では、建設工事に従事する技術者の技術向上を目指し、建設業法第27条の規定に基づいて技術検定を行っています。技術検定試験に合格すると「技士」資格が与えられます。これを改正し、技術検定試験を学科と実地を加味した第1次と第2次検定に再編成しました。基礎となる知識・能力があるかを判定する第1次検定の合格者に「技士補」、その後に実務経験に基づいた技術管理や指導監督に係る知識や能力があるかを判定する第2次検定に合格すると「技士」資格が得られるという仕組みです。

従来は、2級の学科試験の合格後に実地試験を受けて2級技士になったあと、その上の1級の試験を受けるためには実務経験5年が必要でした。しかし、改正後は、2級の第2次検定を受けて2級技士になった翌年に、1級の第1次検定を受けて1級の技士補の資格取得が可能となります。
「5年を待たなくても1級技士補の資格を取れれば、監理技術者の兼任を可能にする要員として、若手の方でも早くから現場で活躍できます」(平林氏)

技士補は、若手の人材のモチベーションを高め、建設業界への入職者を増やすきっかけになるような資格になるかもしれません。「今回の改正で、2級の1次試験を17歳で受けて、合格すれば高校在学中に2級技士補の資格を取得することもできます。その先に2級技士、1級技士補、1級技士と目標を持てますので、まずは経験の浅い方には積極的に2級技士補を目指してほしいですね」(平林氏)。新しい試験制度は、令和3年度から実施される予定です。

技士補の創設について

一定の要件を満たせば下請の主任技術者が不要に

下請のほうでは、「専門工事一括管理施工制度」が新たに設けられました。一次下請の会社で一定の指導監督的な実務の経験を有する者を専任で配置すれば、二次下請の会社で主任技術者の設置が不要になります。ただし、以下の要件を満たす場合に限ります。

  • 一式以外の一定の金額未満の下請工事
  • 元請負人が注文者の承諾と下請建設業者の合意を得る
  • 更なる下請契約は禁止

「専任の主任技術者を用意できない二次下請の会社でも、今回の制度を利用すれば現場に参加できるようになります。人手不足解消ということで元請、下請の両方にメリットのある内容です」(平林氏)

こうした技術者の配置要件の緩和と同時に、適正な施工の確保も重要な案件になります。従来、主任技術者の専任義務が請負代金3500万円以上になっていたこともあり、新制度が適用されるのは3500万円未満の規模となる見込みです。
「この制度の場合、一次下請の主任技術者は下請のほうも監督しないといけないので、それなりにキャリアと能力がある方の必要があります。また3次下請まであるととても目が届かないでしょうから、再下請けは不可になりました」(平林氏)

慎重にスタートする意味もあり、当制度はまず鉄筋工事、型枠工事に限って令和2年10月1日より施行される予定です。「特に問題がないようであれば、その他の工事種別でも検討していきます」(平林氏)

技士補制度の対象となる工事について

■出典
国土交通省「品確法・建設業法・入契法等の改正について」
http://www.mlit.go.jp/common/001050129.pdf

新・担い手3法(品確法と建設業法・入契法の一体的改正)について
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_const_tk1_000175.html

国土交通省「技術検定制度の見直しについて」
https://www.mlit.go.jp/common/001149833.pdf

建設業法、入契法の改正について
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_const_tk1_000176.html#icon

「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律」概要・参考資料
https://www.mlit.go.jp/common/001291076.pdf

 

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