建築に恋する女子大生、種植瑠璃子さんに聞いてみた。目指すは男性も”女性も”自分らしく輝ける建設業界

「こういう場で話をするのって、あんまり慣れてないから緊張します(笑)」

はにかみながら、少し照れくさそうにそう切り出してくれたのは種植瑠璃子(たなえるりこ)さん。東洋大学理工学部建築学科の4年生。彼女が卒業論文のテーマにしているのは、「建設業界における女性の社会進出」です。

“男性社会”の色合いが強く、なかなか女性が働きやすい環境の整備が進まない建設業界。ですが、研究していく中で、「その環境が整えば、この業界はもっと素敵なものになる」と考えるようになったといいます。

建設業界で働く女性たち。そして、「この業界で、より多くの女性がイキイキと働けるようになってほしい」と願っている人たちにこそ、読んでほしいストーリーです。

建築を“好き”だった気持ちが“恋”に変わった そのきっかけは、授業の中で観たドキュメンタリー

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―今日はよろしくお願いします! そもそも、種植さんはどうして建築に興味を持ったのですか?

種植:きっかけになったのは、小学生の頃に友だちと一緒にモデルハウスのショールームを見に行ったことです。その内装を見たときに「なんて素敵な作りになっているんだろう」ってカルチャーショックを受けました。

私、それまでは「家なんて、住めればいい」くらいに思っていて、全く興味がなかったんですよ(笑)。でも、それをきっかけに「ものづくりって素敵だな。自分の大事な人に家を作ってあげられたらいいな」とぼんやり考えるようになりました。

―とても微笑ましいエピソードですね。それで、大学受験でも建築学科だけを受けていたのですか?

種植:いえ、実は数学の先生になるために数学科に進むか、建築学科に進むか、ギリギリまで悩んでいました。数学もすごく好きだったので。入学手続きを出す期限の2月とか3月くらいまで、どちらにするか決めきれずにいて。

―おおお、なるほど。本当にギリギリですね。ちなみに最終的に建築学科を選んだのは、どうしてですか?

種植:「自分が先生になったら、生徒たちに数学を教える立場になる」ということを考えたときに、自分にそれが向いているイメージが沸かなかったんですよね。だから、「やっぱり私は建築にしよう」と思って。

―初めは、どちらかというと消極的な理由から、この道を志したのですね。

種植:はい。でも、大学の講義を受けていく中で、「建築ってやっぱりすごく面白いな。私はこの業界で働きたいな」と強く感じるようになるきっかけがあって。

―そのきっかけとなったエピソード、ぜひ聞かせてもらえますか?

種植:大学の授業の中で、「建設業で働く女性」をテーマにした講義がありました。その中で、あるビデオを観る機会があって、その内容があるゼネコンの女性チームを題材にしたものだったんです。チームには、女性の職人がいたり、現場監督がいたりして、男性に負けないくらいの活躍をしていて。

―それ、ものすごく素敵ですね!

種植:そうなんです。その様子がとにかくキラキラして格好よくて。それを観て、「建設業界でたくましく働いている女性って素敵だな。私もこんなふうになりたいな」と強く感じました。

大好きな“数学”と“建設”の世界がコラボする分野。だから、積算に興味を持ったのかも

―大学では普段、どういったことを専門に学んでいるのですか?

種植:建設業の仕事のひとつである“積算”という分野を専門にしています。

―せ、積算…。すみません、不勉強で私はそれが何か知らないのですが、どんな分野なのですか?

種植:建設業界では、設計図や仕様書を元に様々な工事をします。その際にかかる材料費やその数量などをベースにして、工事に「どれくらいのお金がかかるのか」の見積もりをする仕事ですね。

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▲大学の講義において、積算の演習で取り扱ったという数量計算書。

―工事全体のコスト管理。とても重要な仕事なのですね。ちなみに、積算に興味を持ったのはどうしてですか?

種植:きっかけになったのは、積算をテーマにした講義を受講したことです。その時は、それほど興味があったわけではなくって。

それがある日「面白い!」に変わったのは、「実際に建物を建てる時に、その建物にコンクリートがどれだけ必要か計算する」という演習に触れたことがきっかけですね。それがすごく楽しくって。

調べていくうちに、建築積算を専門に行う“積算士”の試験内容に、そういった演習課題が含まれていることを知りました。「図面を見て、必要な材料の数量を拾う」という内容の。それで、「この分野だったら自分は興味を持って学べそうだ」と、ストンとハマッた感じがしたんですよね。

―「自分が進むべき道が見つかった」って感じですね!

種植:まさにそんな感じです。だから、「在学中に、なんとしても積算士の資格を取ろう」と決めました。

そこからは必死ですよ。教授に相談したら「大学で学ぶ知識だけでは、積算士になるのはむずかしい」と言われたので、教授の紹介で積算協会の方に勉強会を開催していただいて。自分でもたくさん勉強をして。試験のスケジュールが就職活動の時期とかぶっていて大変でしたけど、とにかくがむしゃらに頑張りました。

―そして、気になる試験結果は…?

種植:合格です!

―わー、おめでとうございます! ちなみに、種植さんがそれほどに積算に惹かれたのは、何か理由があったのですか?

種植:積算って、“数学”と“建設”両方の知識が必要になる領域です。だからこそ、どちらも好きだった自分にすごく合っていたんだと思います。

男性も女性も輝ける建設業界になっていけば、本当に素敵

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―種植さんは卒業論文で、「建設業界における女性の社会進出」というテーマを扱っているそうですね。

種植:はい。建設業界で働く女性のために、企業がどういった取り組みをしているかを研究しています。

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▲種植さんが研究しているテーマは全学的にも意義のあるものと認められている。10月に開催予定の東洋大学男女共学100周年記念シンポジウムでは、種植さん本人が登壇し、スピーチを行う予定。

―建設業界における“女性の社会進出”は、今とても重要なテーマになりつつありますよね。

種植:そう思います。それを実現するためには、結婚や出産などのイベントを経験しても、女性が働きやすい、職場復帰しやすい環境づくりをすることが必須です。実はそういった意味でも、積算の仕事はとてもメリットがあります。

―ほうほう。それってどうしてですか?

種植:積算の業務には細かい数値のチェックが求められるので、感性がきめ細やかな女性に向いていると言われているんです。それにデスクワークなので、腕力がなくてもできますし。

その証拠に、私がお世話になっている積算協会には「積女ASSAL委員会」と呼ばれる女性メンバーの組織があるんですが、そのメンバーには出産や結婚などのイベントを経験しても、第一線で働き続けている方がたくさんいます。

―自分の身近に、建設業界で輝いている女性たちがいる。それは、本当にモチベーションの源になってくれますね!

種植:はい。現場に出て汗を流すだけではなくて、もっと違った方法でも建設業界で働く方法ってたくさんあります。そうした仕事はあまり認知度が高くないですけれど、それをもっと伝えていけたらいいなと考えているんです。

男性は男性の持つ長所を活かして。そして、女性は女性の持つ長所を活かして。それぞれのアプローチで建設業界を良くしていけたら、よりみんなが働きやすい環境を実現していけると思いますね。

建設業界の未来を思い描く種植さん。その瞳はキラキラと希望に満ちていた

「偶然選ぶことになった積算を、こんなに好きになるなんて不思議です」と笑う種植さん。その瞳は、自分の学んだ分野で建設業界に貢献していけるという充実感で、キラキラと輝いていました。

男性と女性が互いを尊重し合って、それぞれの良さを発揮しながら働く。

それが当たり前の世界になっていくことで、建設業界はもっと素敵なものになっていくのではないでしょうか。

取材協力:東洋大学

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