僕たちは「未来への架け橋となる仕事」を続ける。株式会社マエバシに聞く”人を育てる”3つの秘訣

建築現場で管理職を務めている方の中には、「せっかく育てたのに若手がすぐ辞めてしまう」「後輩の技術習得を加速させたい」という悩みを抱えている人も多いはず。

その悩みを抱えているのは、きっとあなただけではありません。近年、若手の人材が足りていないと言われている建築業界では、人材育成が業界全体の課題になっています。

若手を会社に定着させるためにはどうすれば良いか?定着した若手を次世代を担う人材に育てるにはどうすれば良いか?こうした課題を解決するために様々な試みを行っているのが東京都町田市に事務所を構える「株式会社マエバシ」です。

同社は、建築現場を支える型枠組立・解体工事を行い。徹底した安全管理と迅速な対応、そして品質の高い施工技術は高く評価されており、大手ゼネコンからも厚い信頼を得ています。

今回は、同社の社長を務める前橋一登さん(写真右)と、社内班を取りまとめる登録基幹技能者である池田貴弘さん(写真左)に、人材育成の秘訣についてお話を伺いました。

■日常がヒントになる。人材育成の術は長年関わった「野球」から学んだ

マエバシ様

――本日はよろしくお願いします。前橋社長は36歳の時に会社を引き継いで、15年目になるそうですね。会社を経営するうえで欠かせない「人材育成」について、どのような施策を取っているんでしょうか?

前橋一登さん(以下、前橋):実は、私は現場あがりの経営者です。現場にいた頃も型枠大工をしていましたが、一人前の型枠大工になるために10年かかるといわれているところを、工夫して5年で一人前になりました。

私は5年かかりましたが、教育のやり方次第では、3年で一前に育てられるカリキュラムが作れると思っています。

――カリキュラムが実現すれば、3分の1の時間で一人前の職人さんを育てられますね!カリキュラムの特徴はどのようなところにあるのでしょうか?

前橋:型枠大工は現場の収まりを正確に把握して施工する力が必要なので、CADを使いこなせる技術と知識をつけてもらうことを第一に考えています。そのためにCADソフト等、品質向上や効率的な仕事に繋がる設備投資費用を一部負担したり、実務経験の時期が到来した資格に対して取得の支援を会社をあげて行っています。

――まずは環境を整えることに力を入れているのですね。人材定着のために行っていることはありますか?

前橋:そうですね、たとえば関係各社を含め、退職金の積み立てのために生命保険に加入しています。やはり怪我や事故の多い業界ですから、従業員には安心して働いてもらいたいと思い、この制度を導入しました。

――そういえば、御社には登録基幹技能者が5名いらっしゃいますよね。取得難易度も高いものですが、そのような人材をどのように育てているのでしょうか?

前橋:登録基幹技能者は、前工程の進捗を適切に状況判断し、受け持った工程を適切に実施する段取りを行う職務です。手待ち・手戻りなく効率的に業務を遂行し、後工程に工期通りに引き継ぐ能力を持った技能者と考えています。

さらに、現場の原価管理にとどまらず、年間の売上げや経費等をマネジメントする能力が重要です。必要な経費を捻出するためにどれだけ売上げをあげないといけないかが分かれば、自ずと歩掛も分かります。

それらの力を身に付けるためには、やはり実地経験が必要です。登録基幹技能者を育てるために、作業員には私が15年会社を続ける中で経験したことや、会社に蓄積したノウハウを積極的に共有するようにしています。

――実際に人を育てる時には、思うように育たなかったりイレギュラーなことも起こると思いますが、その点はどう工夫していますか?

前橋:私は野球のチーム作りからヒントを得ています。高校時代から野球を続けていまして、現在U-18日本代表監督を務めていました小枝監督とご縁があり、今もご指導をいただいている恩師です。私はリトルリーグの運営に関わっていますが、仕事以外のことからヒントが得られることも多いんです。

――「人と人の関わり」という点で見れば、家族や趣味の集まりなどもヒントになりそうですね。人と接する基本は、どの人間関係でもあまり変わらないものですから。

■「長期的な目標」を持てば、若手は自然と育っていく

マエバシ様3

――前橋さん、ありがとうございました。次は5名の登録基幹技能者のうちの1人、池田さんにお話を伺います。池田さんは登録基幹技能者の資格をどのように取得されたのでしょうか?

池田貴弘さん(以下、池田):私はもともと試験は苦手ではない方で、独学で各種試験や講習に挑戦し、1級施工管理技士も最初の受験で合格できました。

1度の受験で合格できた秘訣ですが、通勤の合間に勉強したことと、モチベーションが高かったことでしょうか。営業範囲を拡げる目的もあり、取れる資格はどんどん取得していたんです。

――「営業範囲を拡げる」という目的があったからこそ、高いモチベーションが維持できたのですね。若手の方にも「もっと稼ぎたい」「いつか後世に残る仕事をしたい」など、目的や目標を持ってもらうことで自発的に成長してもらえそうです。御社で職長を務める池田さんですが、人材育成での苦労はありますか?

池田:今の若い人は怒るとすぐに辞めてしまうので、なるべく優しく接しているつもりですが……、やはり難しいですね(笑)。

若い人には、長期的なビジョンを持って仕事に取り組んでほしいと思って接しています。そのために、処遇の改善ということで、日給月給の世界ではありますが、社会保険はもとより、土曜日を有給にしたりして、定着率を挙げる工夫を実践しています。

幸い、29歳になる自分の息子が会社に所属しているので、彼を中心に年上の職人さんとのコミュニケーションなどを教えて会社を引き継ぐことを考えています。私も義父のもとで修業を積んで一人前になりましたから、日々私が経験したことを息子にも引き継ごうという思いで接しています。

――年上の職人さんとのコミュニケーションは若手定着のネックですよね。池田さんのように経験豊富な方から接し方を教われば働きやすい環境づくりに役立つかもしれません。

前橋さん、池田さん、本日はありがとうございました。

■人を育てる組織を作る3つの秘訣とは?

前橋さんや池田さんのお話に共通していたことは、
・職場の処遇や環境を整える
・日常の人間関係をヒントに報告、連絡、相談をする
・自分のビジョンを持ってもらう

という3つのことでした。

まずは、お休みやお給料・資格習得の補助などを整え、働きやすく成長しやすい環境を用意してあげること。その次に日常をヒントに信頼関係を作って、働くモチベーションを上げてあげること。最後に自分のビジョンを描いてもらい、自発的に育ってもらうこと。という3つのステップが必要です。

最初の1ステップは、会社の協力が必要なものですが、後者の2つは普段のコミュニケーションを変えるだけでクリアできるのではないでしょうか。

先輩の職人さんにとって、時に若者は扱いづらい存在かもしれません。しかし、根気よく愛情を持って、明確な目標を立てる支援をしてあげれば人は定着し、自然と育っていくはずです。

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