建設業の「これから」を考えよう「次世代建設業産業モデルシンポジウム」 レポート

2020年のオリンピックに向けて特需に沸く建設業界。現在は好景気の中にある業界ですが、中長期的には少子高齢化などの影響で市場規模は減少傾向になると試算されています。

市場の将来的な減少に加え、技能者の高齢化や、3Kと呼ばれる現場環境から生まれる若手人材の不足など様々な課題を抱えた建設業界は、過去のやり方にとらわれず、新しい運営の方法を模索する転換期にさしかかっていると言えるでしょう。

こうした状況の中で、私たちが今後も安定した事業を行うためにはどのような工夫をしていけば良いのでしょうか?

この問いに対する答えを見つけるため、国土交通省、建設事業者、大学の研究機関など建設業界関係者が集まり、「次世代建設業産業モデルシンポジウム」が行われました。

この記事では、2017年3月14日(火)早稲田大学にて行われた同シンポジウムの内容をレポートします。

建設業界の市場動向から見る、企業力強化のヒント

五十嵐 健 早稲田大学客員教授が建設業界の市場を解説

早稲田大学理工学術院総合研究所次世代建設産業モデル研究会が主催となり行われた今回のシンポジウムでは、第一部で同研究会主宰の五十嵐 健 早稲田大学理工学術院総合研究所 客員教授 による市場動向の研究が発表されました。

この発表の中で五十嵐 教授は「建設関連企業の売上高の割合は、この20年成長している」としたうえで、情報化の進展やグローバル化の進行、発注者の要求が厳しくなるなどの要因から業界内の競争も激化していると指摘しています。

このような情勢の中、建設業界の抱える課題を「プロジェクト指向が強く、長期の不況が起こると収益力が低下してしまう」「本業指向が強く、周辺事業の収益化ができない」と解説し、建設業界が継続した発展を遂げるための方法として「業界全体の生産性の向上」を提唱しています。

具体的な方針としては、「新たな市場ニーズに応じた企業の『強み』のブラッシュアップと『弱点』の補強」「元下一体の連携強化」「ITなどを活用した企業体制の強化」など、いくつかの対応策が紹介され、第一部が終了しました。

地方の建設事務所数が減少した発生した問題とは? 国交省のデータから見えた業界の現状と課題

国土交通省 平田 研氏によるデータから見る建設業界

続く第二部では、国土交通省土地・建設産業局建設業課課長 平田 研 氏による「人口減少社会における建設産業の持続的発展を考える」と題した講演が行われました。

平田課長は講演の最初に、政府の公共事業関係費について言及。平成9年に補正予算も含め10.5兆円だった事業関係費が、平成28年には7.6兆円に減少しているというデータとともに、予算の減少と共に公共工事が減少していることを参加者に伝えました。

一方で、戦後に建てられた建物の老朽化から起きる維持修繕費の増加など、新たな需要が生まれていることも紹介しています。

建設業全体の課題としては、工事量や利益率などに一定の改善傾向が見られる一方、「顧客ニーズの多様化」「人材不足」「後継者問題」など、新たな課題が発生していると言及。

続いて「地方圏における建設企業の事務所数が著しく低下していること」などの各種データを開示し、このデータをもとに「中小の建設企業の経営体力が弱体化している」「建設企業数の減少が続く中、インフラの維持管理に支障をきたす地域が発生する恐れがある」などの課題を指摘しています。

平田課長は、これらの課題を解決するために国交省で実行を検討している取組として、対個々の企業では「各企業の技術力の強化により経営効率を向上する」「給料・休日など、地域建設業の担い手処遇を改善する」、対地域ぐるみでは「地域の建設業関係団体が中心となって若者入職者の教育訓練を実施する」などの施策を紹介。

国土交通省が持つ豊富なデータと、その分析が発表された講演は、建設業界の現状と課題をはっきりと浮き彫りにするものだと感じました。

市場の限界・離職率の増加などの課題解決に向け動き出す、建設業界各社の先進事例

建設業界各社の取組を紹介

第三部では建設業界で先進的な事業を行っている企業が登壇し、各々の事業の特徴や成功事例を紹介しています。

事例紹介では、(有)プラントアルファによる海外プラントエンジニアリングの事例や、前田建設工業株式会社による、脱請負ビジネスモデルへの転換事例など、計5つの企業が登壇。

その中で、「現場力の強化を考える-170人の左官職人を核にした事業拡大-」と題した株式会社濱崎組による事例紹介では、従来の徒弟制度ではなく、訓練校を活用した左官技能者の育成制度を紹介していました。

近年、建設業界では若手の離職率の増加に課題を感じている建設業者が増えています。

若手技能者の離職率が高い理由は建設業界の労働環境の苛酷さに加え、キャリアの道筋や業界での将来が描きづらいことも理由のひとつにあるのではないでしょうか。濱崎組はこの課題に対して、独自の研修制度を形成することで解決策を提示しています。

まず、同社の研修制度は2年間の全寮制を取っており、2年間の「研修生」⇒経験年数2〜6年の「若年技能者」⇒管理職の「副長・職長」⇒現場だけでなく経営にも携わる「工事長」と4段階に分かれ、これにより若手技能者のキャリアの道筋が描きやすくなっています。

同社の人材育成の姿勢は「研修生の人件費は”教育費”と考える」という方針。研修期間の2年間は社内での実技や座学を中心にするなど、入職者に対する姿勢は現場の労働力としてよりも、育成対象の生え抜きの技能者として捉えられています。

業界内でのキャリアを明確に示すことと、技能者を育てる体制を整えることで、若手技能者は「この会社に入れば安定した環境で、職人として技術と経験が積める」と感じてくれるのではないでしょうか。

結果として、同社は若手技能者の離職率も減り、採用数を増やすことに成功したそうです。

IT化による業務効率化を担う、MCデータプラスの登壇

MCデータプラスによる建設業界のクラウドサービス

先進事例紹介の登壇では、「クラウドビジネスの最新動向と建設産業-情報活用による産業力強化-」をテーマに、ケンセツプラスを運営する株式会社MCデータプラス代表の秋山が登壇しました。

MCデータプラスは、労務安全書類のクラウドサービス「グリーンサイト」を提供しています。

これは、施工体制に関する法規制の強化により、労務安全書類の正確かつ効率的な管理需要が高まったことで生まれたサービスで、多くの建設現場で必要とされる労務安全書類をインターネット上で作成・提出・管理するもの。

現在、施工体制台帳は「過去5年間」、施工体系図は「過去10年間」の保管義務があるため、電子データ化しての書類保管・管理や、セキュリティレベルの向上を目的にグリーンサイトを利用する企業が増えています。

シンポジウムでは、グリーンサイトの運用の中で蓄積した3万社以上のデータを活用し、業界の課題解決に資する取組みとして、2017年に本格稼働する予定の専門工事会社のマッチングサイト「+Connect(プラスコネクト)」や、建設業のためのビジネスチャットサービス「stacc(スタック)」など新規サービスについても紹介を行いました。

クラウドサービスで現場の効率化を生む

昨今は、建設現場で使用する工程管理アプリや、現場向けのチャットサービスなど、建設業界にもIT化の波が押し寄せ、業務の効率化を実現しています。MCデータプラスのサービスもまた、その一翼を担う存在です。建設業の担い手が減少している中、IT化による恩恵は建設業の課題を解決する糸口になるかもしれません。

ITが生まれたことをはじめ、業界を取り巻く環境は常に変化しています。先述した濱崎組の事例と同様に、今回登壇した5社の事例は、変化する環境に適応しようとした結果生まれた知恵なのでしょう。

編集後記

今回のシンポジウム全体を振り返ると、建設業界の現状と課題が浮き彫りになったと同時に、業界関係者が課題解決の糸口を見つけようと、たゆまぬ努力をしていることが感じられました。

「課題解決の努力をしている人たちがいる限り、建設業の未来は安心です。」とは言い切れませんが、与えられた持ち場に向き合う人がいれば、業界の課題は少しずつ解決することができるのではないでしょうか。

日々現場で働くあなたも、事務所に遅くまで残って書類の整理をしているあなたもまた、建設業界を担う一員なのです。

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