「建設業で本当にあった心温まる物語」12選

人間関係に行き詰ったり、忙しすぎて仕事の誇りや希望が持てなくなったり、仕事に疲れていませんか?そんな方に、ぜひ読んでほしいのがこの『建設業で本当にあった59話の心温まる物語』(発行・制作:日刊建設工業新聞社/選者:降籏達生)。

多岐にわたる工種、多くの人が携わる建設現場には、日々さまざまな物語が生まれています。そんな現場で実際にあった59の話が1冊にまとめられています。ここではその中から建設業に従事するすべての人にぜひ知ってほしい、12本の物語をご紹介します。

仕事に疲れを感じる。そんなときに知っておきたい3話

①「土木の道に進もうと決心したできごと」

Mさん

職場体験で高速道路の高架橋補修現場にいるときに、東日本大震災を体験。軽自動車が浮くほどの揺れに、路面にはひびが入り、構造物取付部には段差ができるなど、周りの景色が一瞬にして変わりました。

さらに現場基地に戻る際、道路のあまりにもひどい状況から「復旧するまでに何カ月かかるのだろう」「通行できるまでにもしかしたら何年もかかるかもしれない」とMさんは思ったそうです。しかし1週間後、テレビのニュース報道を見て、Mさんは自分の目を疑います。そこには復旧された高速道路が映っていたのです。

海外メディアからも賞賛を受けたこの復旧作業から日本の土木技術の凄さを感じたMさんは、土木の道に進もうと決心します。そして辛くて挫けそうなときは、この話を思い出し、がんばる糧にしているそうです。

毎日の忙しさに追われていると、働く意味が見えなくなってしまうことがあります。そんなときには、Mさんのように建設業の道に進むと決めたときのことを思い出してみるといいかもしれません。

②「かんばれ!」と応援してくれるおばあちゃん

Kさん

Kさんは初めて現場を担当したとき、何もかもが初体験の毎日で不安でいっぱいでした。あるお宅で90歳くらいのおばあさんに「女性なのに大変ね、ご苦労様」と声をかけていただいたそうです。工事によっては騒音や道路規制で地元の方に迷惑をかけてしまうため、心苦しく思っていた矢先のひとことで、Kさんは本当に嬉しく感じました。

さらにその日以降、おばあちゃんはKさんの顔を見ると大きな声で名前を呼んでくれ、手を振りながら「がんばれー」と応援してくれます。Kさんは、周りの人たちに助けられていること、現場は仕事を完成させるだけが喜びではないことを知り、「現場に出てよかった、また現場に出たい」、そう思うようになったそうです。

現場では思い通りにならないことはたくさんあります。しかし、Kさんのように仕事を完成させる喜びはもちろんのこと、人との出会い、繋がりから得られる喜びに気づくと、仕事の楽しさが広がるのかもしれません

③「30分だけ手伝うよ」

Oさん

Oさんは現場で材料が足りなくなり、工期が遅延してしまうと頭を抱えていました。すると職人さんが、別の材料を使って対応してくれたり、別の組み立て方法など工期短縮につながることを教えてくれたりしました。

さらに、雨天によりコンクリート打設工期が間に合わなくなったときには、型枠大工さんや鉄筋屋さんが人員を増やし、打設日に間に合うように協力をしてくれました。そして職人さんが帰った後、Oさんがひとりで打設前の準備をしていると、すでに帰ったと思っていた職人さんが「30分だけ手伝うよ」と言いながら戻ってきてくれ、結局最後まで手伝ってくれたのです。

現場監督という仕事は、現場ではトップですが、ひとりでは何ひとつできません。今、自分がこの仕事ができているのはたくさんの業種の方々のおかげだとOさんは言います。

工程、品質と多くの責任が伴うのが建設業です。特に現場監督は、ときには孤独感を感じることもあるでしょう。しかし、Oさんのようにひとりでは何もできないことを認め、協力を求めつつ仕事を行うことが、肩の力をほんの少し軽くし、さらに効率よく仕事を進めることにもつながります。

建設業に限らず、人は忙しくなると目先のことにとらわれてしまいやすくなります。しかし、これら3つの物語から「初心を思い出すこと」「広く周りを見渡すこと」「協力を求めること」など、視点を上げ、広げることの大切さを教えられます。そうすることで、今まで見えなかったものが見えたり、仕事の新たな一面が発見できたりするのでしょう。そこに、仕事の楽しさが潜んでいるのではないでしょうか。

人間関係に行き詰まった。そんな心に優しく火を灯してくれる3話

④厳しい貴重な体験をさせてくれた尊敬する課長

Sさん

Sさんが初めて現場を担当したとき、工事のやり直しや手持ちの発生から、工程通りに進まない状況が続いていました。当時の課長は、現場であまり指導をしてくれません。

しかし、事務所での報告では「なぜ進まないの?あなたの準備が悪いでしょ」と言われるため、Sさんは事務所に帰るのがイヤになったそうです。会社の仲間が手伝いに来てくれても、大勢の作業員の陣頭指揮をうまく執ることができないため、さらに意気消沈していました。

するとある日、課長が現場に来てくれ、すべての采配と段取りをしてくれました。課長はSさんの考えや、段取り、工程、人の使い方などを見抜いており、その上で厳しい態度をとってくれていたのです。課長は後輩には厳しく、貴重な体験をさせて、責任は自分が取るという気持ちを持っていたとSさんは言います。

「自分ばかり」と人は考えがちです。しかし、厳しさの裏には貴重な経験があり、育って欲しいという愛情があることを忘れてはいけません。

⑤あんたには現場で助けてもらっていたから

Tさん

Tさんは悪天候が続いたことで工事が引き渡しまでに完了できるかどうかギリギリのところまで追い込まれていました。自分ではどうすることもできないと思い、協力会社に作業員の増員をお願いしましたが反対に激しい口論になってしまい、増員どころか現場から作業員全員を引き上げると言われてしまいます。

引き渡しまであと2日。Tさんは目の前が真っ暗になり、お客様に対してどのように責任をとればいいのかを考えて歩いていました。すると偶然、口論になった協力会社の方が車で目の前を通り過ぎていったのです。

ダメ元で携帯電話に連絡をし、何度も何度もしつこくお願いしたところ「そこまで言うならなんとかしてやる」と言い、他の現場で作業している職人さんも呼んでくれ、なんとか間に合わせてくれました。

工事終了後、Tさんがなぜ助けてくれたのか?と協力会社の方に聞いたところ「普段現場で助けてもらっていたから気になっていた。そうしたら電話がかかってきて真剣に頼まれたので放っておけなかった」と言われました。Tさんは普段の行いが大切なこと、工事に携わる方々の優しさが心にしみたそうです。

すべての方々が完成を目指し、共に助け合って現場はつくられています。真剣に仕事をしているがゆえに、時に口論になることもあるでしょう。しかし目指しているところが同じなのですから、真剣に話をして伝わらないことはないのかもしれません。

⑥何度も足を運んでよかった

Oさん

Oさんは、居宅の改修工事の際、騒音によりクレームを受けました。内部の小規模改修だからと防音対策を講じなかったためでした。謝罪に行き、今後の対応を説明したもののまったく聞き入れていただけません。そのため、Oさんは工事を中止し、何度も足を運び説明を繰り返しますが「工事再開は許さない」とのこと。

それでも諦めず足を運び説明を繰り返したところ「あなたの熱意が伝わりました。これからは騒音のないようにお願いしますよ」との言葉をいただき、工事再開の目処がたちます。Oさんは、あきらめずに何度も足を運ぶ大切さを学んだ工事だったと言います。

顔を合わせる回数が信頼度を高めるという話もあります。顔を合わせ話すことが互いの理解を高める第一歩ならば、誠意をもって赴くことが関係性の改善につながらないわけはありません。

自らの行動が人との関係性に大きく影響していることが、これら3つの物語からわかります。対面する誰かは、あなたの内面を映す鏡とも言えます。今、人間関係に行き詰まりを感じるなら、まずは自らが周りに対しどのように接しているのかを見直してみるといいかもしれません。それだけで関係性に変化が現れるでしょう。

将来に希望が持てない貴方へ。未来への指針となるはずの3話

⑦上司が気づかせてくれたこと

Kさん

Kさんの若い頃は、現場勤務者の休日は第一、第三日曜日のみ、残業は22~23時までが当たり前でした。当時のKさんは、仕事や給料よりも遊ぶ時間が欲しく、日曜日や祝日が全休の本社勤務の同僚が羨ましくてたまらなかったと言います。

そんなある日、上司との会話の中で「自分も若い頃は、なんでこんな仕事を選んだのだろうって思ったことがあるよ」「たまの休みに子供が朝起きてきて、寝ぼけた顔で一瞬『誰この人?』みたいな顔をされたのを覚えているよ」という話を聞きます。さらに「子供と一緒に地図を見たときに『すごーい、お父さんの仕事は地図に載るんだ』という子供の言葉に、自分は地図に残る仕事をしていると気づかされた」という話も。その話からKさんは、地図に残る仕事に誇りを持ち、辛い現場でもがんばろうと考えられるようになったと言います。

建設業は、地図に残る仕事と言われます。以前は白紙であったで場所にも、建物や道路や橋をひとつひとつ描いてきたのです。地図に残すことに誇りと自信を持ってほしいと思います。

⑧父の感じていた感動

Tさん

Tさんのお父さんは、一級建築士事務所をしていました。当時、お父さんの収入はかなり波が激しく、親族から「仕事を変えろ」とよく言われていたそうです。そのためTさんは、建築業だけはやりたくないと思い、異なる業界にて働いていました。

しかしTさんは、転職を機会に「親族にあんなにも反対されていたにもかかわらず、なぜ設計の仕事を続けてきたのだろう?」「なぜ今まで続けることができたのだろう?」とお父さんの気持ちを不思議に感じます。そんなとき、お父さんが設計した病院のご夫婦から「よい病院を建ててもらってよかった」との言葉をもらいます。

そこからお父さんの仕事は、長い間人の心や街に残り続けている素晴らしい仕事であったと気づいたと言います。その後、Tさんは建設会社に就職しました。そして、引き渡したお客様より「良い家をつくってくれてありがとう」との言葉と、Tさんを含め施工に携わった大工さん、職人さんの名前が掘られたプレートを見せてもらいます。Tさんは、お父さんが感じていた感動をほんの少し感じることができるようになったそうです。

建設業は人や街の記憶に残る仕事です。思い出として語られる中に自分の携わった仕事が残るのです。多くの人に語られる建設の仕事は、ほかにはない誇りですね。

⑨女性じゃないとできない仕事をやりきる

Kさん

Kさんは、男社会だと言われる建設業に入職して13年あまり。「なんでこの業界に入ったの?」と入社した頃は会う人みんなに聞かれたそうです。

施工管理業務を行っていると、体力的に男性に劣る部分もありますが、仕事の丁寧さや近隣住民への対応の良さなど女性のほうが勝る部分を活かして現場でがんばってきました。しかし、結婚や出産などの環境の変化から現場に出られないことも多くなってきます。

そこでKさんは「建設業の仕事は現場監督だけではない。いろいろな方法で現場を支えていけるんだ」と思い直し、女性ならではの丁寧さや心意気で日々業務を行うことにしました。

建設業には多くの女性が働いています。女性の視点や感性はどの現場でも必要でしょう。女性が自信を持って働いている現場は、お客様や働く職人たちに良い環境を残していきます。

3つの物語からわかることは、新しく建物や道路を造る仕事により、新しい生活や文化も創ります。それは未来を創ることと言えるでしょう。未来を創る仕事はとても価値ある仕事です。責任が大きく、さまざまな問題への対処が求められるでしょう。しかしそれは、未来を創る仕事だからと考えると、誇りとやりがいが生まれませんか?

建設業に従事していることを誇りに感じる3話

⑩私の作った土が支えている

Iさん

Iさんは、花巻市のある私立高校の野球部から野球場整備の依頼を受けました。しかし、野球場を整備するための予算は少なく、透水性と弾力性に優れるチャンピオンサンドを利用することはできません。

そこで、なんとか良い土を作れないかと、自分たちで混合し土作りを行いました。失敗しながらも繰り返し行った土作りにより、チャンピオンサンドに負けない土を作ることができ、工事も無事予算内で完成しました。

するとその翌年のこと、その高校は甲子園春の選抜大会に出場し準優勝したのです。さらにその後も好成績を上げるようになります。実はこの高校は、菊池雄星選手や大谷翔平選手を輩出した花巻東高校。彼らがプロ野球で活躍するニュースを聞くたびに、Iさんは、自分たちが行った野球場の土作りを思い出し、誇らしく思っているとのことです。

工事前から完成後もお客様の顔が見えるのは建設業の特徴です。Iさんのように、自分たちの努力が、お客様の活躍として見えるとき、仕事に対する誇りと満足感は大きなものになるでしょう。

⑪社会の一員としての存在意義を感じた時

Uさん

Uさんは、入社するとすぐマンションの新築現場へと配属され、上司から指示された仕事を毎日慌ただしくこなすばかりでした。マンションが完成する前に別の現場に配属され、その後も工事途中で次々と忙しい工事現場への配属が続きました。それは、会社の中のひとつの部品として使いまわされているような感覚だったと言います。

数年後、少しは仕事になれた頃、偶然、配属されていたマンションの前を通りかかりました。ベランダの洗濯物や干されたおふとんから入居されている方々の温かい生活を感じたとき、初めて梅本さんは自分が関わった建物を信頼し、人生や命や財産を預けている人たちがこんなにも大勢いるのだと思ったそうです。

梅本さんは、若い年齢にもかかわらず社会的には大きな責任を担い、完成後何十年もの間、多くの人が自分のかかわった建物を利用することを想像しながらの仕事は大変やりがいがあると言います。

若いうちに責任の大きな仕事を受けるとプレッシャーに押しつぶされそうに感じることもあります。しかし、それをやりがいと考えると建設業はやりがいにあふれた仕事だと言えるでしょう。

⑫愛媛県の段々畑

Yさん

Yさんは、高齢の女性より愛媛のみかん畑の石積みを補修してほしいと依頼されました。現場を視察に行くと、そこは人がすれ違うこともできないような幅の狭い山道の先にあり、大変施工条件の悪い現場でした。

あまりの条件の悪さに地元の建設会社から断られたとのことで、他に業者のあてもなく困っていた様子から、Yさんは引き受けることにしました。案の定、人力で資材を運搬するため、さらにすべて手作業で施工するため大変な苦労をしましたが、なんとか工事を終了することができました。

工事完了の報告に伺うと、今まではご主人が補修行っていたそうですが、最近亡くなったためどうしようもなかったと、涙ながらに「助けていただき本当にありがとうございます」とお礼を言われたそうです。引き受けてよかったと苦労が報われた瞬間だったとYさんは言います。

建設業での問題は多岐にわたり、複雑化しています。だからこそ技術だけではなく、経験に工夫も加えて全力で対応する必要があります。その姿はまさに人助けに見えることもあるでしょう。

建設業に携わる多くの方は、答えのない問題にぶつかり、悩んだ経験を持っていると思います。それを、勉強し新たな知識で補ったり、仲間と助け合ったり、さまざまな方法で解決する努力をする。そのひたむきな努力が人々の生活の支える礎となっているのです。

今回は、書籍『建設業で本当にあった59話の心温まる物語』から、建設現場で実際に起きた12の物語をご紹介しましたが、いかがでしたか。建設業は、人の生活を支える仕事です。ほかの仕事では味わえないプレッシャーや大変さがありますが、そのぶん大きなやりがいがまちがいなくあります。自信を持ち、誇りを忘れず、また明日から仕事に励んでください。

『建設業で本当にあった59話の心温まる物語』

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