新施設が誕生!進化し続ける富士教育訓練センターの20年の歩み|ケンセツタンボウ

ケンセツタンボウシリーズの第3回目は、2017年に開校20周年の節目を迎えた富士教育訓練センターを紹介します。

建設業の総合技能研修所として富士山西麓に5万1000㎡の広大な敷地を有する同センターでは、設立以来「ものづくりは人づくり」の理念のもと、建設業界の人材育成に大きく貢献してきました。

設立後20年間の受講者は約16万人、利用企業は約5万社に及んでいます。読者の方にも受講者の方がいらっしゃるのではないでしょうか。

富士教育訓練センターは2017年1月に宿泊棟・共用棟を新設しました。今回は、職業訓練法人 全国建設産業教育訓練協会 富士教育訓練センター専務理事である菅井文明さんに、20年間の振り返りと、生まれ変わろうとしている同センターの今後についてお話を伺いました。

全国の現場に質の高い職人を届けたい、富士教育訓練センターが生まれたきっかけとは

富士教育訓練センター専務理事 菅井文明さん<富士教育訓練センター専務理事 菅井文明さん>

– 富士教育訓練センターが誕生したきっかけや目的はなんだったのでしょうか

菅井文明さん(以下、菅井):当センターは、建設業界全体の技能向上のために設立されました。技能向上の役割を担う職業訓練校は昔から全国各地にありましたが、訓練生が集まらず休止する訓練校が見られました。

バブル崩壊後、建設業界は担い手不足が懸念されて、職人の質も課題となっていました。そんなときに建設省(現国土交通省)の訓練施設である建設大学校朝霞校が閉校になると聞いたのです。そこで、建設業界の先輩たちが施設をそのまま利用して新しい訓練校をつくれないか、と思い立ちました。

– その施設が、後の富士教育訓練センターですね

菅井:そうです。しかし、建設省側は施設を更地にして大蔵省(現財務省)に引き渡す予定でした。とはいえ、あれだけ広大な土地に設備が整っている場所は他にない。そこで14の専門工事業・建設関連業の全国団体が結集し、「建設大学校の跡地に新しい訓練施設を作らせてほしい」と建設省に嘆願書を提出しました。その結果、職業訓練校として1997年に開校する運びとなったのです。

– 他の訓練校とは異なる施設として、どのような教育を考えていましたか

菅井:全国各地の職人に一定の質の教育・訓練を提供することです。というのも、職業訓練法人の認可は都道府県の管轄になります。当時の訓練施設のほとんどは、その県内の人しか訓練ができない状況でした。そこで我々は国に働きかけて、富士教育訓練センターは全国の職人が教育訓練を受けられるよう広域的な認定職業訓練校として訓練生を受け入れられる体制をつくりました。

– 建設業界全体の底上げを考えていたのですね

菅井:我々の理念は3つでした。まずは「オーダーメイド」であること。そして「即戦力」の育成。そして、「安全教育」の徹底です。技術者・技能者を育成するコースを常に作り続けてきたのが富士教育訓練センターの歴史だと言えます。

時代に合った内容で即戦力を養成するオーダーメイド式コース

富士教育訓練センターエントランス

– オーダーメイド式の訓練コースとはどのようなものでしょうか?

菅井:富士教育訓練センターでは、毎年400以上のコースを用意しており、20年間で5000以上のコースを作ってきました。新人用のカリキュラム、資格検定コース、技能習得のコースなど常設のものも多くありますが、その都度建設業界のニーズに合わせたコースを作ってきたのです。

– それは具体的にどういったものでしょうか?

菅井:例えば、国交省が太陽光パネルの助成策を実施した2012年前後では、太陽光パネル施工コース実施の要請を国から受託しました。まずは太陽光パネルの全国団体に連絡をとり委員会を設立。そして、教材の制作、カリキュラムの設定、実技のための設備の設置まで4カ月で行いました。もちろん一流の講師陣と当時最先端の設備を整えています。

– すごいスピード感ですね!

菅井:新人教育や職長教育、技能習得、資格検定対策に加えて、時代のニーズに合ったコースを作ること。それこそが我々の存在意義なのです。最近では、ドローンを活用した「ICT土工研修」のコースも開設しています。

「教育は職人の人生を変えることができる」生徒のレポートから感じた人間形成

富士教育訓練センター訓練施設

– 富士教育訓練センターで受講されるのは、どのような方が多いのでしょうか。

菅井:現在ではスーパーゼネコンも利用してくれていますし、建築科の学生や個人で来られる方もいます。しかし、もっとも多く利用しているのは、30人規模の中小企業の職人さんですね。

– 実際に教育訓練を受けた方の反響はいかがでしょうか?

菅井:受講者本人よりも、社員を教育訓練に派遣した会社の社長さんから多くの声が届いています。たとえば、これまで挨拶をしなかった社員が、研修後にすぐに「ありがとうございます!」と言ってきたとかね(笑)。ほかには、受講後の職人が現場で声出しを徹底したことから、「指差し呼称」や「タッチ&コール」などの「声掛け運動」が広まったというエピソードもありました。

– それはすごい!センターで学んだことを現場で広めてくれると、業界全体に良い影響を残せますね

菅井:訓練生は仕事に臨む姿勢を現場で積極的に広めてくれています。訓練生が最後に提出するレポートには、よく「感謝」という言葉が書いてあり、すごく嬉しいですね。実は14〜15年前にある生徒が書いたレポートを、肌身離さず持っています。それは、「このような訓練生を世に送り出したい」という気持ちを忘れないようにしたいからなんです。

富士教育訓練センター研修生レポート<菅井さんが常に持ち歩いている卒業生のレポート>

– 何気なく建設業界に入った方が教育訓練で感銘を受けて、建設業界で生きていく覚悟を決めたのですね

菅井:そういうことです。富士教育訓練センターの標語は「ものづくりは人づくり」。技術・技能を学んでもらうのは当たり前です、我々は教育訓練を通じて「人の人生を変えることができる」と思っています。

なんとなく職人をやっていた人でも、当センターで仕事に対する姿勢や意義を学び、やり甲斐を見出してくれるんです。実際に当センターで学ぶと会社への定着率が高いという声もいただいています。それは講師陣の影響も大きいのでしょう。講師は建設業界をリタイアされた方が中心で、最高齢の講師は70歳を超えていますが、自分が学んだ技術・技能を次世代に継承したいという情熱で講師を務めてくれています。

– 技術・技能だけではなく、思いも継承されるのは理想の形だと言えますね

菅井:新しい技術もあれば、変わらない技術もあります。建設業界は先人たちが培ってきた土台で成り立っているので、しっかりと継承していきたいですね。当センターの歴史は20年ですが、ここで学んだ訓練生が講師として戻ってきてくれれば最高の喜びです。

さらに学びやすく、プライベートの時間も充実した富士教育訓練センター

– センターは今年1月に宿泊棟と共用棟が新設され、よりよい環境で技術・技能を学ぶことができるようになったとお聞きしています

菅井:施設は建設大学校の跡地を利用していますから老朽化が進んでいました。センターでは常に最新の技術・技能を学べるようになっていましたが、宿泊棟と共用棟は老朽化が原因で、快適とは言えない環境だったんです。訓練生の方には、教育訓練以外でも充実した時間を過ごしてもらいたいと思い、新設を決めました。

– 宿泊棟は非常に綺麗になり、収容人数も大幅に増えましたね

菅井:新しい宿泊棟は、訓練生・講師を含めて356人が宿泊できるようになりました。日当たりの悪さも解消され、居心地がよくゆっくりと過ごせるようになったと思います。また女性が学びやすい環境を作るため、女性専用の部屋を40室と女性専用の浴室も新設しました。

富士教育訓練センター大浴場<新設された共用棟の大浴場>

– 共用棟はいかがでしょうか?

菅井:150人以上を収容できる食堂やお酒が買える売店を設け、展望テラスでリラックスすることもできます。コースの中には1カ月以上の長期にわたるものもありますので、建物が開放的で明るい雰囲気になるように設計して、長期間滞在する訓練生がストレスを抱えないよう配慮しました。トレーニングルームやパソコンルームもあるので、自由時間に活用してほしいですね。

富士教育訓練センター_食堂<150名が利用できる大食堂>

– では、最後に今後の展望を教えてください

菅井:これまでの20年間と変わらず、建設業界で働いている人、働きたい人に向けて、最高の教育訓練・教育施設でありたいですね。

近年では、当センターを不登校や発達障害、肢体不自由などの困難を抱えた子どもたちの宿泊施設としても利用してもらっています。NPO法人J-ENEPさんの企画で毎年宿泊体験をしてもらい、今年で14年目になりました。富士山登山やキャンプなどのレクリエーションの他に、ちょっとしたものづくり体験もしていただいています。建設業界専門の施設でありながら、ものづくりを通じた教育訓練も今後増やしていければと思っています。

「技能・技術を扱うひと」を育成する大切さ

現場で「目で見て盗め」という言葉が使われていたのは、いまや遠い昔の話。建設現場の技術・技能は、しっかりとした教育訓練を受けることで、誰もが習得できる時代となりました。

しかし、技術・技能とともに大事なことは、それを扱う「人」です。
富士教育訓練センターでは、「ものづくりは人づくり」の理念のもと、技術・技能だけでなく、人間形成を踏まえたカリキュラムで人材育成を行ってきました。

社会人としての基本を身につけた職人は、どの現場でも重宝されていると菅井さんは言います。また、その評価が本人のモチベーションにつながるため、退職する人が少ないという好循環も生んでいるのです。

全国の建設業界で、「自身の技術を磨き、職人としてステップアップしたい」と考えている職人の方や、「会社の技術・技能の底上げをしたい」と考えている経営者の方は、富士教育訓練センターで行われる教育訓練の受講を検討してみてはいかがでしょうか。

<施設データ>

職業訓練法人 全国建設業教育訓練協会
富士教育訓練センター

静岡県富士宮市根原492-8
Tel:0544-52-0968
URL:http://www.fuji-kkc.ac.jp

ケンセツタンボウシリーズ

第1回 築40年を超え、新しい命を吹き込まれた名建築物“中銀カプセルタワービル”
第2回 先人の情熱が“私達が暮らす社会”を作った、湯島の建築資料館で得る仕事のモチベーション
第4回 建築模型の美しく緻密な世界。「建築倉庫ミュージアム」で楽しむアート

 

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