「クレームは“資産”!」顧客対応のプロフェッショナル・株式会社インソースに聞く、トラブルと仲良くなるための秘訣

元請の業者から、近隣住民から。建設業を営む上で、避けては通れないのが“クレーム”です。コミュニケーションの齟齬や仕事の雑さが原因で、思わぬトラブルに繋がってしまったという経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

クレームを受けた後に重要になってくるのは、上手に対応して沈静化させるということ。そしてその方法を学ぶためには、専門家に聞くのが一番です。

今回は、クレーム対応を含む各種研修を行っている株式会社インソースの川邊幹大さん(上写真左)と石川文香さん(上写真右)に、クレーム対応の秘訣を伺ってきました。

社会人向け研修を主力事業とする同社は、日本全国でなんと年間約13,000回もの研修を実施。話を聞くだけの座学ではなく、5~6名程度の少人数でワークを行う参加型の研修を特徴としているそうです。圧倒的な研修ノウハウを持つ同社が導き出した“良いクレーム対応”とは、いったいどのようなものなのでしょうか?

クレーム対応の基本は“自分ごと化”。当事者であるという意識を常に持つことが重要

―単刀直入に聞きたいのですが、お客さまからクレームが上がってきた場合に、上手な対応の例、やってはいけない対応の例はありますか?

石川:弊社では、クレーム対応の基本として下表の左側にある4つのポイントを示しています。反対に右側に記載されているのは、良くない対応の代表例です。

この中でも“当事者意識を持つ”というのは特に重要です。例えば、他部署の人が起こしたトラブルによってクレームを受けた際に、「自分の担当業務とは関係ないよ」という態度をあからさまに出してしまう人って、けっこういると思うんです。

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―おっしゃるとおりですね。特に建設業界では、工事の作業工程ごとに全く別の会社や部署が作業しているケースも多いですから、そういう事例はよく発生します。受けたクレームが自分とは無関係な業務領域だった場合、どのように対応すれば良いのでしょうか?

石川:まず、クレームを申し立てる時点で、お客さまはかなり興奮している可能性があります。だからこそ、途中で遮ったりすることなく、いったん話を全て聞くことが大切です。

―表の2番にあたる部分。受け止める姿勢を見せるのですね。

石川:これはどんなケースにも当てはまります。受けたクレームが担当外の場合でも、まずは内容をお預かりして、担当に確認してから折り返しのご連絡を差し上げることが重要です。

―勝手に解釈したり、対応したりしないことが大事だと。表の3番にある“確認を行う”というのも、とても大切ですね。自分と相手が考えている“当たり前”が異なるケースも発生しうると思うのですが、こういう認識のずれはどういう時に生じるのでしょうか?

石川:例えば、電車で人身事故が起きて、駅のホームが混雑したとします。乗客から駅員に対して、このままでは仕事に間に合わないというクレームが入りました。駅員にしてみれば、安全確認が最優先となるので、確認作業に時間がかかるのは仕方のないこと。一方、乗客にしてみると、早く到着することが何よりも大事です。このような時には、両者にとっての優先すべきことに違いが発生しているんです。

―普段の生活でよく見るシーンですね。建設業界においても、取引先との企業文化の違いから、似たような事例は充分起こりうると思います。

石川:そうなんです。こういう小さなところから認識のずれは生じます。だからこそ、相手の話をきちんと聞き、その発言の“背景”にある部分を理解することが必要です。

クレーム対応のカギは、共有すること。蓄積されたクレームは“資産”に変わる

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―クレーム対応のスキルを向上させるためには、社内教育が欠かせないと思います。その際、どのような方法を取れば効果的に実践できるのでしょうか?

石川:弊社の研修を例にすると、事前にどのようなクレームを受けたことがあるか、その際どう対応したかについてアンケートを取り、それを元にケーススタディを作成して「あなたならどうしますか?」と考えてもらうグループワークを行っています。

社内ルールが決まっていない場合であっても、グループで考えることにより、「自分ならこうする」という意見を共有し、メンバー間での認識を合わせていくことができます。また、普段からクレーム対応について話し合いの場を設けることがオススメです。

―そうすることで、クレームにどう対応するかという認識を社内で統一できるのですね。

石川:もう一点、情報共有の方法として「何月何日、こんな事例がありました」というクレーム対応の記録表を作成するのもいいですね。その情報を、定期的に社内で共有する場を設ける。そうして生の事例集を蓄積していくと、いずれ大きな“資産”になります。

―「クレームは資産」というのは、とてもポジティブな捉え方ですね。

川邊:なんとなく受けているクレームも、実は集めてみると似たようなことが原因である場合も多いんです。それに、クレームを元に対策を決めておくことは、業務効率化にも繋がります。

気をつければクレームは避けられる。ポイントは、顧客の期待値の把握と、メンバーの行動分析

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―建設業界では、例えばリフォーム工事の際に「予想と仕上がりが違う」などのクレームが起こったりします。このような事例は、そもそも何が原因となっているのでしょうか?

石川:「ここまではやってくれるだろう」というお客さまの期待値を下回ってしまったときに、こうしたクレームは起こります。お客さまの期待することはなんだろうと常に考え、その1つ上のレベルを目指すことが大切です。

―基本的なことですが、相手の立場になって考えるというのは、なかなかできないですよね。

川邊:そう思います。そのためのオススメの方法として、「これまで受けたサービスの中であれはすごかった」と思った事例を出してもらう。それを自社に置き換えたときに、何ができるのかを考えてもらうというものがあります。お客さんの立場になって、想像する機会を設けるのが、顧客満足を考えるヒントになるんです。これは弊社が提供している研修カリキュラムのひとつでもあります。

―事前期待値というのはクライアントによっても変わってくると思いますが、どうしたら確認することができるのでしょうか?

川邊:先ほども出ましたが、期待値を把握する意味でも過去の事例を集めるというのは、クライアントごとの傾向を把握できるので便利です。

―とても参考になります。もう少しつっこんだ質問をさせて下さい。良くないクレーム対応を繰り返してしまった場合、お客さまとの関係が非常に悪化する、いわゆる“炎上する”事態に繋がってしまうことがあります。その兆候ってどのように発見することができますか?

石川:上司の立場なら、部下の普段からの行動をきちんと見ておくことが大事です。例えば、社内でなぜかいつもクレームに当たってしまう人などいませんか?そういう人をよく見てみると、それを引き起こす要因が見つかることがあります。上の人がよく観察して、気になった点は指摘してあげることが大事です。

―確かに、周りが言わないと本人はなかなか気づかないですよね。

石川:それを改善するため、ロールプレイングを実際にやってみるというのもオススメです。横で見ている人が直接指摘してくれると、改めて問題点に気づくことができますから。社内での演習など、回数を重ねるというのも大きいので、普段からの取り組みは大切です。

―やはり何よりも、毎日の積み重ねが重要なのですね。今日はどうもありがとうございました。

コミュニケーションの基本は、クレーム対応の基本でもある

相手の話を最後まで聞く。勝手な解釈をしない。人間同士のコミュニケーションにおいて重要なことは、そのままクレーム対応においても当てはまるようです。

クレームが起きないのが何より理想。けれど、どんなに気をつけても一定数のクレームは発生してしまうものです。普段から社内で認識を共有して対応策を決めておくことで、実際にクレームを受けても慌てることなく、適切な対応が取れるのではないでしょうか。

取材協力:株式会社インソース

 

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