2025年の東京はどうなる!?〜都市計画の専門家、市川宏雄教授が語るポスト東京五輪〜

2020年夏に開催される東京オリンピックに関係する建築ラッシュで、建築業界は特需に湧いていると言われています。また2027年には、東京-名古屋間のリニア新幹線の開通が予定されています。2037年には、東京-大阪間まで路線は延長される予定で、東京オリンピック後は、リニア新幹線の特需がつづくと言われています。

しかし、地域によりその恩恵を実感できていない方も多く存在し、”東京オリンピックの後=ポスト東京オリンピック”の建設業界に不安を抱えている方もいるでしょう。

東京オリンピック、リニア新幹線の実現が生み出す劇的な都市構造の変化が進行していますが、2025年以降の日本はどうなっていくのか?

今回は、株式会社MCデータプラスが主催した「建設サイト・シリーズ ユーザーミーティング2017」で行われた市川宏雄氏による「東京 2025 ポスト五輪の都市戦略」から2025年の東京、2050年の東京の姿、建設業界の未来を探っていきたいと思います。

◎市川宏雄(いちかわひろお)市川宏雄教授
早稲田大学理工学部建築学科、同大学院修士課程、博士課程(都市計画)を経て、カナダ政府留学生として、カナダ都市計画の権威であるウォータールー大学大学院博士課程(年地域計画)を修了(Ph.D)。一級建築士。現在は、現在は明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科長、ならびに明治大学危機管理研究センター所長。町田市・未来づくり研究所所長、森記念財団理事、Committee Member of Future of Urban Development, World Economic Forum。【著書】
●「東京一極集中が日本を救う(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー・トゥエンティワン/2015年)●「東京2025 ポスト五輪の都市計画」(東洋経済新報社/2015年/森記念財団年戦略研究所との共著)など多数。

 

オリンピック特需などで生まれる地域格差は、リニア新幹線で解消!?

リニア新幹線の実現と都市構造の変化

そもそも東京オリンピックは、地方には恩恵はないのではないか?という声は以前からあり、人手不足や資材不足を懸念する声も跡を絶ちません。また将来的な高齢化社会、労働人口の減少も拍車をかけます。都市部への人口流入は止まらず、国土交通省の調べによると2050年には、全国18万地点(1k㎡単位)のうち、60%の地点が人口半減、20%の地点が消滅すると言われます。

市川教授は、こういった問題は、先述したリニア新幹線が解決してくれると話しています。

東京-名古屋間 東京-大阪間
開業 2027年 2037年
路線距離 286km 438km
運賃 現行の「のぞみ」に700円程度の上乗せ 「のぞみ」に1000円程度の上乗せ
最短所要時間 40分 67分

リニア新幹線が開通すれば、東京-名古屋が約40分、東京-大阪が約67分で結ばれることになります。約60分という時間は、東京から関東近郊の都市へ移動する時間と変わりません。また料金も上記の通り、「のぞみ」から700〜1000円程度を想定されていますので、約2時間30分かかっていた東京-大阪間が67分で移動ができることを考えると、コストを大きくあげる必要なく移動時間の削減をすることができます。

<市川宏雄『リニアが日本を改造する本当の理由』より>

また左記の「アクセシビリティ・マップ」は、ご覧ください。

これは1930年、1964年、リニア新幹線開通後の日本列島の距離感を視覚的に比較したマップになります。最高時速95kmの蒸気機関車で東京-大阪間の移動に8時間20分かかった1930年代をベースに、新幹線「ひかり」が開通し、3時間10分に短縮された1964年、そして、リニア新幹線が開通する21世紀のマップになります。

日本列島がコンパクトになっていることがわかると思います。21世紀の本州の大きさは、1930年の関東地方に収まる大きさです。つまり、国内での移動は、よりスムーズになり、以前と比較して圧倒的に心理的な距離が縮まっているのです。
 
 

7000万人規模の巨大都市圏が出現!?

ポスト東京五輪の都市構造

では、これだけ都市間の距離が縮まることで、何が起こるのか?
これまでそれぞれ独立していた都市圏がひとつとなり、大きな都市圏が出現します。

三大都市圏と言われる首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)に約3,562万人、名古屋圏(愛知・岐阜・三重)の約1,134万人、大阪圏(大阪・京都・兵庫・奈良・滋賀)の約1,990万人、そしてリニア新幹線の結ぶ中部地方の都市を含めると約7000万人の巨大都市圏が出現します。

リニア実現後の巨大都市圏<リニア中央エクスプレス建設促進期成同盟会のデータをもとに作成>
※人口は平成22年国勢調査(速報値)

「オリンピックのような国家プロジェクトの恩恵は地方には……」といった地域格差はリニア新幹線の実現によって、解消されるかもしれません。もちろん交通費の問題などハードルは多く存在しますが、東京、大阪、名古屋の大きな現場に参加できるという現実的なメリットは生まれます。また下記の図をご覧ください。

東京の国家戦略特区<アジアヘッドクォーター特区エリア>

少子化、人口減少時代を迎える日本の経済成長を促進するためには、日本の国際的な競争力の強化が必要不可欠です。そのため、東京都は平成23年より外国企業誘致を目的に進めている「アジアヘッドクォーター特区」プロジェクトを進行中です。東京が外国企業のアジア地域の業務統括拠点や研究開発拠点となることで、より国際競争力を強めようという動きで、税制優遇、規制緩和、財政・金融支援の用意もしております。

東京が成長することで地方にも恩恵を

世界の都市ランキング<森記念財団 都市戦略研究所「世界の都市総合力ランキング(GPCI)」2017年度版>

上記は、森記念財団 都市戦略研究所が発表した「世界の都市総合力ランキング(GPCI)」の2008〜2017年の変遷です。

ロンドンがオリンピックを開催した2012年にニューヨークを逆転してトップとなり、その後も成長を続けていることがわかります。東京も2020年のオリンピックとポストオリンピックに向けて、ロンドンと同じような成長曲線を描くことを目標としており、世界的な競争力を高めることとリニア新幹線の実現が両輪となることで日本全国にその影響を波及していくことが可能になるかもしれません。

またJRが計画を進めている、「羽田空港-東京駅」「羽田空港-新宿駅」「羽田空港-新木場」を直結させる下記の路線計画も東京の競争力向上の追い風になるでしょう。(※1)

羽田空港からの新路線<西山手・東山手・臨海部の3ルートの計画(資料:JR東日本)をもとに作成>

2020年以降も需要は安定する見込みだが、環境整備に課題あり?

セミナーで登壇する市川宏雄教授<2025年の東京の変化を語る市川教授>

建設業界に限って言えば、2050年まではリニアモーターカーの建設に伴う特需と、それに伴う都市開発が起こることで、しばらくの間は景気が支えられるはずです。

そのほか、生活インフラの老朽化に伴う再開発や、地震対策工事などが考えられるので、今後も建築業界の需要は高まっていくでしょう。東京五輪後には、業界の景気が落ち着きはすれども、急激に落ち込む可能性は少ないと言えるのではないでしょうか。

一方で特需により、人材確保や担い手確保など、業界の問題が浮き彫りになり、改善が求められています。

需要があっても人出がいなければ、供給は成り立ちません。2020年の東京五輪以降に高まる需要に応えるためには、業界のオペーレーション改善が急務なのではないでしょうか。

※1日経コンストラクション 羽田アクセス総取りか、JR新線3ルートの全貌

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