街と便利を創り出す、土木ってカッコイイ! 〜「土木コレクション」から学ぶ編〜

誰もが毎日使う上下水道。
目的の場所に運んでくれる鉄道。
車や人が行き交う道路。
河川の対岸をつなぐ橋梁。
日々の生活物資を輸入する港湾。

そのどれもが私たちの生活に欠かせないものです。街のインフラを整え、生活を創造し、実際に作り上げる。こういった仕事のことを「市民のための工学」という意味を込め、英語圏では、

「Civil Engineering」

と言います。

聞きなれない言葉でしょうか?
この言葉を日本語で言うと「土木」になります。

今回は、「東京 橋と土木展/土木コレクション2017」を訪れ、「Civil Engineering=土木」の仕事のかっこよさを学んできました。

11月18日は「土木の日」!「土木コレクション」って何?

土木コレクションのロゴとタイトル

毎年「土木の日」である11月18日に合わせて開催される公益社団法人 土木学会主催(東京都建設局共催)の「土木コレクション」。昨年の「土木コレクション2016 あなたは橋派?鉄道派?」には、約3万8000人が来場しました。

まず「土木の日」は、なぜ11月18日なのでしょうか?その答えは「土木」の文字に隠されています。「土」と「木」の漢字を分解するとなんと……

土=十と一
木=十と八

になります。それに加え、土木学会の母体となった「工学会」の創立日が明治12年(1879年)の11月18日だったことに由来するのです。

今年は「未来の東京を見つけに、土木を巡る」のテーマのもと「東京 橋と土木展/土木コレクション2017」と題され、2017年11月20日(月)〜11月24日(金)の間、新宿駅西口広場イベントコーナーで開催されました。公益社団法人 土木学会 土木広報センターの佐藤雅泰さんは「土木コレクション」の開催意図についてこう説明します。
「土木は様々な分野に及びますが、皆さんの暮らしに身近に存在していることをお伝えしたいと思っています。本イベントでは、特に土木の“かっこいい”部分を強調しています。緻密で美しい図面やアーティスティックな写真、迫力がある立体模型の展示を通じて、土木のデザインやフォルムのかっこよさ、さらには、その背景にあるストーリーを知っていただければうれしいです」(佐藤雅泰さん)
土木のなかでも「橋」に焦点を当てた展示の多かった今回の「土木コレクション」。では、一緒に「橋」の魅力とその役割について勉強してみましょう。

橋は過去、現在、未来もつなぐ。奥深き橋梁の世界

土木の資料

日本全国にある70万橋(※1)にも及ぶ道路橋は、交通量の大小はあれど“人や物を渡す”という重要な役割を担っています。皆さんの身近にも多様な橋が存在しているのではないでしょうか。

例えば、観光名所にもなるような大型の橋梁として、横浜ベイブリッジ(神奈川県)、明石海峡大橋(兵庫県)、レインボーブリッジ(東京都)などが有名です。

また日本橋(東京都)、瀬田唐橋(滋賀県)、渡月橋(京都府)、三条大橋(京都府)、心斎橋(大阪府)など歴史のあるもの、錦帯橋(山口県)や猿橋(山梨県)など形状が珍しいものなど橋は実に様々な表情を持っています。

猿橋(山梨県)

錦帯橋(山口県)

では、世界最古の橋はご存知でしょうか?

現存している世界最古の橋は、ギリシャのアルカディコ橋で紀元前1300年頃に作られたと言われています。アルカディコ橋は石橋で、現在も使用しされている現役の橋。3300年の間で、一体どのくらいの人がこの橋を渡ったのでしょうか?一方、世界初の鉄橋は、イングランドのセヴァーン川に架けられたアイアンブリッジです。1781年に開通したアーチ橋で、主に鉄や石炭を輸送する目的で使用されていましたが、現在は歩行者しか利用はできません。

アイアンブリッジ<世界初の鉄橋アイアンブリッジ(イングランド)>

た記録には残っていませんが、人類は河川などを渡る際に、丸太などを倒して“橋”として利用していたことが考えられています。河川や峡谷、湿地帯など人類は歩きにくい場所に“橋”を架け、道としてきました。そして、その橋は何百年〜何千年経っても多くの人に利用されているのです。

隅田川に架かる35の橋〜人の営みとともに変遷する橋のカタチ〜

隅田川にかかる永代橋の模型<永代橋(1926年/国重要文化財)の模型:東京大学蔵>

文明の進化とともに橋もまた多様に変化してきました。その多様性を知る好例として、「橋の展覧会」と呼ばれる東京都の隅田川橋梁群を挙げることができます。隅田川には歴史や用途、デザインなどが異なる35もの橋が架かっており、「東京 橋と土木展/土木コレクション2017」で隅田川の3つの橋が紹介されていましたので、橋の多様性を隅田川から見ていきたいと思います。

隅田川に架けられた最初の橋は、「千住大橋」です。徳川家康が江戸に入府した後の1594年頃に架橋されたと言われています。架橋工事を任されたのは、利根川東遷事業や荒川西遷事業などを行った伊奈忠次。優れた測量技術と土木技術を持ち、東京のインフラ整備に情熱を傾けた彼は、土木業の大先輩と言えるかもしれません。徳川家康の入府以降、東京は水害の防止や水運網の整備、灌漑事業などの土木事業により、現在のカタチを徐々に形成していきますが、橋の在り方もまた変遷していくことになります。

「東京 橋と土木展/土木コレクション2017」では、国の重要文化財に指定(都道府県の道路橋としては初)された「永代橋」「清洲橋」「勝鬨橋」の模型が展示されていました。この3つの橋の特徴や歴史に触れていきたいと思います。

いくつもの悲劇を経験した永代橋【元禄11年(1698年)架橋】

永代橋とスカイツリー

長さ約200m、幅6mの当時としては最大級の規模を誇った永代橋。しかし、文化4年(1807年)に、深川富岡八幡宮の祭礼日に想像以上の民衆が押しかけたため、重量に耐えきれなかったことが原因で落橋してしまいます。死者約1500人とも言われる日本史上最悪の落橋事故と言われています。

その後、再架橋されますが、明治30年(1897年)に老朽化が進んだことも有り、道路橋としては日本初の鋼鉄製のトラス橋として、現在の場所に生まれ変わります。しかし、永代橋は関東大震災によって再び災禍にあいます。床組が木造だったため焼失してしまうのです。現在の橋となったのは、大正15年(1926年)。ドイツのレマゲン鉄橋がモデルとなっており、径間長100m超のタイドアーチ橋は、「帝都東京の門」と呼ばれる美しさを誇りました。また永代橋は「第一回土木学会選奨土木遺産」にも認定されています。

永代橋と対をなす隅田川の美橋・清洲橋【昭和3年(1928年)架橋】

清洲橋の模型<清洲橋(1928年/国重要文化財)の模型:金沢大学蔵>

清洲橋は、永代橋とともに関東大震災の復興事業として計画されました。永代橋が「帝都東京の門」と呼ばれたのに対して、「震災復興の華」と称される美しい橋です。ドイツのケルン市にあるヒンデンブルク橋の大吊橋をモデルに、当時の最先端技術を駆使した材料、構造・工法で建築された日本を代表する吊橋のひとつ。永代橋が男性的な勇姿として例えられるのに対し、清洲橋は女性的な優美な姿と表されます。復興の象徴として、夫婦のように存在する2橋には、東京のイメージや国家としての威信が込められていました。永代橋と同様に「第一回土木学会選奨土木遺産」に認定されています。

再び跳開する姿が見たい……!勝鬨橋【昭和15年(1940年)架橋】

勝鬨橋の自動模型<勝鬨橋(1940年/国重要文化財)の模型:東京都蔵>

日露戦争の祝勝記念として、有志により「勝鬨の渡し」が設置され、その後埋立地である月島と築地の交通需要が増えたことで、昭和15年(1940年)に架橋されました。建設当時は、陸運より水運の利用が多かったため、中央の橋桁が開閉する可動橋となりました。当初は、1日5回、1回につき20分ほど跳開しており、大型船舶の通行しておりましたが、時代の流れとともに船舶運航量と道路交通量が逆転。徐々に開閉回数も減っていき、昭和45年(1970年)には開閉停止。昭和55年(1980年)には電力供給も停止されました。

しかし、勝鬨橋の勇壮な開閉する姿を再び見たいという声は後が絶ちません。写真の勝鬨橋の模型は、普段は「かちどき 橋の資料館」で見ることができます。

土木は、近代的な生活の基礎をつくり、未来の街を創る

緻密かつ芸術的描かれた手書きの図面

「千住大橋」が架橋されてから、江戸幕府は隅田川への架橋を90年間認めませんでした。架橋して整備するのではなく、天然の要害である隅田川をそのままにすることで、敵が攻めにくくなるという防衛上の都合です。

天下が太平になり、戦がなくなったことで、「両国橋」「新大橋」「永代橋」「吾妻橋」などが架橋されるようになりました。先述の通り、「永代橋」は幾度かの改修の後、「帝都東京の門」と称される象徴的な橋となり、「勝鬨橋」が可動橋として誕生したにも関わらず、自動車社会になったことで開閉が停止しています。それぞれの橋はそこにずっと架けられていますが、その用途は時代によって変化していきました。

「永代橋」「清洲橋」「勝鬨橋」に代表されるように、橋にはそれぞれの物語があります。そして、その背景には「Civil Engineering」に従事した人々の奮闘があります。

忘れがちなことではありますが、我々が当たり前のように毎日歩く道路、鉄道、水道も多くの人が関わって、長い時間を費やして生み出されたものだということを再確認できるのではないでしょうか。

「Civil Engineering」の文字通り、土木は街と便利を創り出す仕事。

土木ってカッコイイ!そう思いませんか?

※1 国土交通省 道路局 平成25年集計

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