建設キャリアアップシステムは技能者と企業双方にメリットあり!

国土交通省 土地・建設産業局 建設市場整備課 労働資材対策室 企画専門官 藤本真也氏

2019年4月から全国で運用が開始された建設キャリアアップシステム。建設現場で働く技能者の資格、経歴などをキャリアアップカードに登録するほか、現場のカードリーダーにタッチすることで、日々の仕事の履歴を蓄積できるようにする仕組みです。

その目的は、建設業界における人材確保や生産性の向上はもちろんのこと、建設業で働く者が、やりがいをもって働ける労働環境をつくることにあります。国土交通省と建設業界が一緒になって推進するこのシステムは、運用開始から半年以上が経過しました。現在の登録の進捗状況や、利用にともなうメリットなどについて、国土交通省 土地・建設産業局 建設市場整備課 企画専門官の藤本真也氏にお話をうかがいました。
(写真/鈴木愛子)

 

―現在(2019年11月)、同システムへの登録状況はいかがですか?

藤本真也氏(以下、敬称略):「都市部を中心に順調に推移していますが、地方ではまだシステムの認知度が低いとも聞いています。そのため、全国各地で説明会を開催するなどして、システムの目的や使い方の周知、登録の促進に努めています」

―初年度の登録目標を100万人としています。

藤本:「現在、全国には300万人以上の建設技能者が働いていると言われていますが、今後5年間で全員登録していただくのが目標です。将来的には、このカードがないと、建設技能者と名乗れないような、そういった位置づけにしていきたいと思っています」

-外国人の方も対象になるのですね。

藤本:「このシステムは国籍による差を設けていません。外国人の方でも登録できますし、昨年新たに導入された“特定技能”の制度を利用した外国人の方については登録を義務化しています」

-そもそも建設キャリアアップシステムはなぜ導入されることになったのでしょうか?

藤本:「一言でいえば、建設業で優秀な人材を確保するためですね。今、現場で働いている建設技能者の約25%が65歳以上と高齢化は進む一方で、30歳未満の方は約10%しかいません。建設業界には、生活に必要なインフラの整備という大きな役割がありますし、自然災害に見舞われた際には復旧・復興の担い手にもなります。国民生活にとってなくてはならない産業ですので、建設業が今後も持続的に発展するように国としてもしっかり支えていきたいという背景があります」

国土交通省 土地・建設産業局 建設市場整備課 労働資材対策室 企画専門官 藤本真也氏

-このままでは、現在の現場の主力である65歳以上の方が退職したあとの穴を埋められません。

藤本:「はい、そのとおりです。このままでは、将来の建設業を支える人材が不足してしまいます。特に若い方々に建設業に入ってもらわなければなりませんし、そのためには建設業を入職したいと思えるような産業に変えていく必要があります。また、人材確保という観点からは、入職者を増やす取組みももちろん大切ですが、離職者を減らす、すなわち建設業でずっと働いてもらえるような取組みにも力を入れなくてはなりません。実は、新人として入職した若者のうち、半分ほどが3年以内に退職してしまうというデータもあります。せっかく建設業に入ってもらっても、数年で辞めていかれては人材確保・育成はできません。バケツに穴があいていれば、どんなに水を注いでも水はあまり貯まりませんよね。そのような建設業の状況を、一刻も早く変えていかなければなりません」

-入職者を増やすのと同時に、離職者をくい止める取り組みも非常に大切です。

藤本:「そこで離職者にアンケートをとってみました。その結果、賃金や休日などの待遇への不満ももちろんあるのですが、“自分が今後どのようにキャリアを高めていけるのか、その道筋が不透明”と感じる人が多いことがわかったのですす(グラフ上)。これは企業側が考えていた理由と大きなギャップがありました(グラフ下)

離職者アンケート(離職者側)
離職者アンケート(企業側)
出典:厚生労働省「雇用管理現状把握実態調査(平成24年度)」より国土交通省作成

業界全体で通用するキャリアデータ

-離職者を減らすひとつの方策としては、建設技能者の経験や技能などを目に見える形で示し、評価するための仕組みが必要だということですね。

藤本:「そうです。建設キャリアアップシステムを通じて、これまで客観的に把握することが困難であった技能者一人ひとりの技能や経験などが、業界全体の共通ルールで蓄積・確認することが可能になります。そして、これに合わせて、システムに蓄積されたデータを基に、技能者の能力を4段階(レベル1~4)に評価する「能力評価制度」が進められることになりました。技能者各自の能力評価ごとに建設キャリアアップカードが発行されます。優秀な技能者は着実にレベルが上がるため、モチベーションの向上にもつながります。もちろん最高レベルであるレベル4(ゴールドカード)に達した技能者は、自らのレベルをPRすることができますし、技能に見合った処遇が期待できます」

建設キャリアアップシステム IDカードイメージ

-建設業界では所属する会社を辞めて、同業他社へ転職するケースもよくありますが、会社が変わった場合もこのシステムを使い続けられるそうですね。

藤本:「これまでのキャリアを他社でも引き継げることも大きなメリットです。業界全体で参加するシステムですので、仮に転職しても自らのレベルをしっかりと引き継ぐことができます。女性が結婚や出産、育児などでいったん休職してまた復帰する場合なども、蓄積したキャリアがしっかりと継続されるので、安心して建設業に戻ってくることができます」

企業側にはどのようなメリットがありますか?

藤本:「データがオンライン上で保存できるので、煩雑な書類事務が大幅に軽減できます。ペーパーレス化によって生産性向上につながり、効率的に仕事を回す手助けになるはずです」

特別講習受講で建設キャリアアップカード交付手数料が無償に

-建設キャリアアップカードは先着5万人まで無償で交付されるそうですね。

藤本:「システム登録の促進や能力評価制度の普及を図るため、11月より、大臣認定を受けた職種の職長・中堅クラスの建設技能者を対象としたマネジメントスキル向上特別講習を全国で開催しています。具体的には、建設技能者向けとして、建設業振興基金主催の特別講習(一般公募型)を実施しています。今回の取組みでは、既に国土交通大臣認定を受けている10職種(型枠、鉄筋、機械土工、左官、内装仕上、防水、切断穿孔、建築大工、サッシ・カーテンウォール、とび)の職長・中堅クラスが受講対象です。システムに登録済みの技能者だけではなく、システムに未登録の技能者も受講できます。
受講は無料です。また受講者に対しては、申請により、技能レベルに応じた建設キャリアアップカードをレベル判定手数料とキャリアアップカード更新料は無償で先行的に交付するなど制度促進に努めています。なお、この無償特典は予算枠に達した時点で終了となりますので、お早めに受講いただければと思います」
◎特別講習を通じた建設キャリアアップカード無料・先行交付の開始~建設技能者向け特別講習の案内・企業主催型特別講習の公募等~

-それはお得ですね。

藤本:「はい。ただし、レベル判定手数料とキャリアアップ更新手数料は無償になりますが、建設キャリアアップシステムの登録手数料2,500円は必要です。講習では、働き方改革や女性活躍の話など最新の建設行政情報についてもお伝えしていますので、講習を受講していただく価値は大きいと思います」

-この特別講習はいつまで実施されるのですか?

藤本:「2019年11月からスタートしたところです。予算的に約5万人の受講を想定しておりますので、その範囲内であれば2019年度末まで可能な限り実施する予定です。本年2月頃にも第2弾を実施する予定ですので、詳しくは国土交通省や建設業振興基金のHPをご覧いただければと思います。新たな講習会のお知らせは随時HPに更新される予定です」

-建設キャリアアップシステムに蓄積する際の建設技能者の能力評価制度について、もう少し詳しく教えてください。

藤本:「はい。建設キャリアアップシステムに蓄積された情報を活用し、技能者を就業履歴や保有資格などの基準に基づいて4段階にレベル分けします。技能者をレベル分けするのですから、客観的な4段階の基準を適正に設定することが重要です。能力評価制度では、国土交通省のガイドラインを基に、各職種の専門工事業団体がそれぞれ評価基準案を作成し、それを国土交通省が審査・認定するという仕組みにより、基準の客観性を担保しています。2019年10月に鉄筋、型枠、機械土工の3職種について初めて認定を行い、その後、左官、内装仕上げ、防水、切断穿孔、建築大工、サッシ・カーテンウォールなどの職種を順次認定しています」

-建設キャリアアップカード4種類の各要件を教えてください。

藤本:「システム運用開始後しばらくは、まだ能力評価基準が定まっていなかったので、システム登録した建設技能者については、暫定的に登録基幹技能者(35職種)にはゴールドカード、その他の者にはホワイトカードの2種類を交付してきました。前述したとおり、能力評価基準の国土交通大臣認定が進んできているので、認定された職種から順次、システム登録前の実務経験なども所属事業者の証明などにより適正に評価するなどして、技能レベルに応じた4色(ゴールド、シルバー、ブルー、ホワイト)のカードを交付することになりました」

技能のレベル分け
出典:国土交通省

-一般公募以外にも、受けられる特別講習はありますか?

藤本:「建設業振興基金主催のほか、企業主催型の特別講習もあります。ゼネコンやその協力会に、自社や協力会社等の技能者を対象とした講習会を主催していただくというものです。建設業振興基金が企業公募を行っており、公募にエントリーしていただき、選定されれば教材や実施マニュアルが提供されるシステムです。この企業主催型の講習会を受講した場合でも、技能者は手数料が無償になりますので、是非たくさんの方に受講していただきたく思っています。
また、これに加えて、それぞれ職種の専門工事業団体にも講習を主催いただく方向で調整しています。能力評価基準が認定された職種では、団体からの情報にも注目しておいてください。

-来年(2020年)度以降、さらにシステムの普及促進が望まれます。

藤本氏:「来年度以降も、さまざまな取組みを行ってシステムの普及に努めていきたいと考えています。特に、能力評価制度もそうですが、システム登録によるメリットをもっと目に見える形でPRしていきたいですね」

国土交通省 土地・建設産業局 建設市場整備課 労働資材対策室 企画専門官 藤本真也氏
■Information
MCデータプラスの労務安全書類作成サービス「グリーンサイト」は、建設キャリアアップシステム(CCUS)の標準API連携認定システムとして認定を受けています。「グリーンサイト」に登録されている「現場・契約情報」、「施工体制(編成)情報」、「就業履歴」をCCUSへ連携可能です。2020年には「施工体制技能者情報」の連携も可能になる予定で、現場ごとの登録業務などが大幅に削減されます。
グリーンサイト詳細:https://www.gs.kensetsu-site.com/

■参考
特別講習を通じた建設キャリアアップカード無料・先行交付の開始
~建設技能者向け特別講習の案内・企業主催型特別講習の公募等~
https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo14_hh_000873.html

システムの目的とメリット
https://www.ccus.jp/p/info#the-purpose

建設業振興基金(CCUS運営主体)
http://www.kensetsu-kikin.or.jp/

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