「働き方改革関連法案」成立で変わる「36協定届」の書き方と注意点

「働き方改革関連法案」が2018年6月に成立し、これまで罰則付き上限規制の一般則が適用除外となっていた建設業も、5年後の2024年からは正式に適用されることになりました。

今回の改正で、36協定はどう変わるのか?そもそも36協定とはなにか?ここではあらためて36協定の基本知識をおさらいするとともに、法改正に備えて事業者として知っておかなければならない36協定届の書き方について解説します。

建設業の「時間外労働の上限規制」適用はいつから始まる?

建設業において現行の労働基準法では、36協定で定める時間外労働が行われていても罰則の対象外とされています。しかし、「働き方改革関連法」が成立し推進される「働き方改革実行計画」では、労働基準法改正法の一般則が施行されてから5年後、つまり2024年から建設関連の企業も36協定に対して適切に対応していない企業は罰則の適用対象となることが決定しました。

国土交通省が発表したアンケート調査(2016年日本建設産業職員労働組合協議会による調査)によると、建設業における休日労働の実態は、建設工事全体で、4週8休はわずか10%以下で、約64%が4週4休以下で就業しているという結果が出ています。

こうした現状から建設業界では、働き方改革が浸透することは難しいとされていましたが、国土交通省は建設業界でも長時間労働の是正を強力に後押しするため、猶予期間を設けながら罰則付きの時間外労働規制を建設業にも適用する「建設業働き方改革加速化プログラム」を平成30年3月に策定しました。

その内容は、

①長時間労働の是正
②給与・社会保険
③生産性向上

の3つの分野における新たな施策がまとめられています。

建設業働き方改革加速化プログラム

① 長時間労働の是正
(1)週休2日制の導入を後押し
(2)各発注者の特性を踏まえ、適正な工期設定を推進

② 給与・社会保険
(1)技能や経験に見合った処遇(給与)の実現
(2)社会保険への加入をスタンダードに

③ 生産性向上
(1)生産性の向上の後押し
(2)仕事の効率化
(3)限られた人材・資機材の効率的な活用の促進

 
これらの内容をこの5年間で各企業は注力し、2024年からの罰則付き時間外労働規制に備えることが求められるようになったのです。

36協定で決められている内容とは?

そもそも「36協定」とは何か?何となくはわかるけれど、具体的にはよくわからないという方も多いでしょう。ここでは、あらためて36協定について解説します。

36協定とは、正しくは「労働基準法第36条 時間外・休日労働協定」のことを言います。

(時間外及び休日の労働)
第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、一日について二時間を超えてはならない。
(引用元:労働基準法第36条)

 
労働基準時間の原則は、1日8時間、1週40時間とされていますが、36協定を締結し、労働基準監督署に届け出た場合は、協定で定める範囲内で法定労働時間を超えて勤務させることできます。

36協定を締結し、厚生労働省令で時間外労働をさせる場合、限度時間数は以下に定められています。

期間 時間外労働上限
1カ月 45時間
2カ月 81時間
3カ月 120時間
1年 360時間

具体的な例をあげて説明しましょう。

・1ヶ月45時間でも週15時間以上は残業できない
36協定においては、1ヶ月で45時間の残業が認められています。例えば、一般企業であれば年度末、小売店であれば夏休み中といった繁忙期であっても、45時間の残業が可能です。ですが、週になおすと、1週間で15時間までが残業できる範囲です。そのため、月45時間の残業でも、どこかので週で15時間以上残業している場合は、是正を求められます。

・そもそも36協定が結ばれていないと時間外労働ができない
時間外労働をする場合、36協定の締結が必須です。厚生労働省が行った「平成25年労働時間等総合実態調査結果」では、中小企業のうち56.6%が時間外労働・休日労働に関する労使協定を結んでいないことがわかっています。
場合によっては、個人経営の小売店や飲食店などのなかには、36協定が結ばれていない可能性もあり、時間外労働そのものが違法になってしまうケースもあります。
 

例外が認められる「特別条項付き36協定」

しかし、建設現場では、上記労働時間では納期が間に合わない場合がしばしばあります。そうした止むを得ない状況下において、36協定の限度時間を超えて、残業時間の上限を一時的に延長できる臨時措置があります。この特別な届出を「特別条項付き36協定」といいます。

特別条項付き36協定を締結するには、通常の36協定届を提出する際に、書類に「特別条項」を明記し、労働基準監督署に届け出て認可される必要があります。そうすると、以下のルール以内であれば、週15時間・月45時間の上限を超えることが可能になります。

「特別条項付き36協定」のルール
1 原則延長時間(限度時間以内の時間)を定めなければならない
2 繁忙期など、特別な事情があること
3 上限を延長する回数を定めること
4 全体として1年の半分を超えないこと(年6回まで)

 
・働き方改革を受けて特別条項付き36協定にも上限ができた
特別条項付き36協定ですが、これまでは年間6ヶ月であれば上限なしの残業が可能でした。ですが、働き方改革関連法案の一環として、例外なく以下のような上限が設定されました。

*年720時間
*月100時間未満(休日労働含む)
*どの2~6ヶ月の平均を取っても月80時間未満(休日労働含む)

この上限は罰則付きで、大企業では2019年4月から、中小企業では2020年4月から適用されます。

この上限を超える時間外労働を労働者に課した場合、健康障害リスクが高まる過労死ラインを超えたと判断され、罰金など明確な処罰が事業者に課せられることになったのです。

なお、一度、36協定を届け出ている場合であっても、さらに36協定で定める範囲外の時間外労働を可能にするためには、また新たに36協定を締結し直し、届け出が必要になるので注意が必要です。
※災害復旧や大雪時など、避けることができない事由の場合は、労働時間の延長が可能(労基法33条)

36協定の締結と対象者

36協定は「使用者」と「労働者の代表」が締結します。36協定が認められるのは、この両者が合意したことが前提となります。使用者側は事業者、労働者の代表とは、①労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合。②労働者の過半数で組織する労働組合がない場合、労働者の過半数を代表する者で、以下に当てはまる者を指します。

労働者の過半数を代表する者の条件
●監督または管理の地位にある者でないこと。労使協定の締結などをする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手などの方法による手続きにより 選出された者であること。
●労働者の過半数とは、正社員だけでなくパート・アルバイト、管理監督者なども含まれる。

 
上記のとおり、36協定の対象範囲は、「管理監督者」に当てはまらない者とされています。この「管理監督者」とは、労働基準法において、労働条件の決定そのほか労務管理について経営者と一体的な立場にある者を言います。また、「管理監督者」は、肩書きや職位ではなく、立場や権限の実態を踏まえて判断されます。

2019年4月から36協定届の様式が変わる!

36協定は、まず時間外労働を労働者が同意したことを証明する届書を作成し、労働基準監督署に提出。内容に問題がなければ使用者と労働者間で合意したと認められ、協定は有効になります。

今回の法改正を受けて、いくつかの変更点があります。そのひとつが、36協定届の様式が変わったことが挙げられます。これまでは特別条項付36協定を結ぶ場合、36協定届の余白にその特別条項を記載し、労働者の合意を得た上で労働基準監督署に提出していました。しかし新様式では、「一般条項」と「特別条項付」で様式が分かれています。

注目すべきポイントは大きくふたつ。ひとつは、「時間外労働及び休日労働を合算した時間数は、1箇月について100時間未満でなければならず、かつ2箇月から6箇月までを平均して80時間を超過しないこと。」に関するチェックボックスが追加されたこと。

もうひとつは、「限度時間を超えて労働させる場合における手続」、「限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置」に関わる記載欄が追加された点です。36協定そのものの内容は大きくは変わりませんが、時間外労働をさせる場合、明確な理由とその後のケアまでを具体的に明記することが求められ、より法令遵守の意識が強く求められるようになったのです。

この新様式は、2019年4月から導入されます。なお、36協定届には、1年以内の有効期間の記載が必要です。万が一、有効期限が切れた場合、36協定は無効となります。一度提出したら終わりではないのでご注意ください。

また、36協定は、届出を持って有効とされるため、必ず期間が始まる前に提出するようにしましょう。2019年4月からは様式が異なるので、新様式導入以降に36協定届を提出する予定の事業者は、事前に新様式を確認しておくことをおすすめします。

新様式の36協定届は、以下からダウンロードできるので参照してください。

東京労働局のホームページ「時間外・休日労働に関する協定届(36協定)
「一般条項」
●書式
https://www.mhlw.go.jp/content/12602000/000344353.pdf
●記載例
https://www.mhlw.go.jp/content/000350328.pdf「特別条項付」
●書式
https://www.mhlw.go.jp/content/12602000/000344354.pdf
●記載例
https://www.mhlw.go.jp/content/000350329.pdf

 

36協定を違反したらどうなる? 罰則はあるの?

36協定を締結すればこれまでは上限はないものとされていましたが、罰則付きの時間外労働の上限規制導入にともない、36協定は法律的な強制力が高まり、「長時間労働を是正する」という目的が加速することが期待されています。

より安全な現場を実現するためにも、36協定が定める時間外労働の上限規制を遵守することが求められるようになりますが、では、違反したらどうなるのでしょうか?

36協定の違反で、これまで多く報告されているのが、以下の2パターンです。

・36協定を届け出ていない。または適切でない。
・法外な長時間残業

これらは、どちらも労働基準法に違反しているケースです。従業員がひとりでも時間外労働をせざるをえない場合には、36協定を結ぶ必要があります。

もし事業者が、36協定の締結を届け出ずに、労働基準法第32条に定めた法定労働時間の範囲を超えて労働をさせた場合は労働基準法違反となり、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金を処される可能性があります。企業のイメージダウンにもつながりかねないので、まずはこの36協定を正しく理解することから始めてください。
 

企業を守るためにもしっかりと36協定を理解することが大切

今回は、2024年から適用される建設業における「36 協定」の「罰則付き時間外労働の上限規制」について解説しました。人事・労務担当者は、新しい情報をつねにキャッチアップし、勤怠管理も随時アップデートする必要があります。まだまだ先……と思っていると、5年という猶予期間はあっという間です。「罰則付き時間外労働の上限規制」が正式に適用されるときに困らないように、今のうちから準備できることをしっかりと進めておきましょう。

この5年間は猶予期間とはいえ、「36協定のない残業は法違反」となります。また、届出の提出を誤ると、罰則につながることがあります。「知らなかった」では済まされないので、企業を守るためにも、社内の体制の見直しから始めてみてはいかがでしょうか。

【参照】
時間外労働の上限規制 わかりやすい解説(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でケンセツプラスをフォローしよう!