デジタル化で、優良技能者の就労データ管理を省力化へ

優良技能者イメージ

(写真提供/株式会社大林組)

日本建設業連合会に加盟する建設会社の多くで導入されているのが優良技能者認定制度です。建設技能労働者の人材確保・育成のため、条件を満たした優良な職長や作業員に対して、就労実績に応じた手当を支払うという内容になっています。しかし、毎日の就労実績の収集や集計は、紙ベースの手作業で行われており、その手間は元請会社や協力会社にとって無視できない負担となっているのが現状です。

優良技能者認定制度を2011年から導入している大林組でも同様の課題に直面しており、現在、デジタル化による就労データ管理の省力化に取り組んでいます。現状における紙ベースの管理における悩みと、改善の経緯についてお話をうかがいました。

電子化による一元管理で収集・集計の手間の大幅削減を目指す

紙ベースの管理で生じる記入・計算のチェックが負担に

一般社団法人日本建設業連合会が提唱する優良技能者認定制度は、加盟各社で独自の名称と内容による認定資格として導入されています。大林組では「大林組認定基幹職長」(通称:スーパー職長)制度という形で2011年度から発足させました。建設現場における職長のうち、特に優秀な人を選定して一定の収入の上積みを行うという仕組みで、当初は80人弱が認定されました。以来、毎年のように人材育成が進み、現在は450人を超えるまでになっています。

その条件は、熟達した作業能力と豊富な知識を持つとともに、現場をまとめ、効率的に作業を進めるためのマネジメント能力に優れた「登録基幹技能者」の認定を受けていること、またそれに準じる相応の資格を取得していることです。もうひとつは職長として大林組の現場に一定期間従事していることで、大林組の現場で勤務した日数につき、熟練度によって規定の日額が上積み分として支給される仕組みになっています。

大林組建築本部 本部長室 生産企画課の長岡安江主任は、現在の課題として“紙ベースによる就労日数の収集・集計の煩雑さ”を挙げます。現状、スーパー職長の手当て支払いにあたっては、現場で従事した職長が「従事日数報告書」を記入・作成し、自身が押印します。その用紙を工事事務所に提出し、最終承認者として現場所長が押印し、各地区の協力業者組織に送付→協力業者組織の担当者は、ひとりひとりの従事日数カウントに間違いがないか、記入漏れがないか等を確認→ひと月分締めたところで大林組本社に送る。以上のように各方面で手間のかかる手作業が発生しています。

「本社だけでなく、職長本人、現場職員、協力会社組織の事務局において、書類の記入やチェック作業が多大な負担になっています。この現状を改善しなければということで、紙ベースの管理からデジタル化によるデータ管理への移行に取り組もうと考えています」(長岡主任)。

現在、検討している仕組みは、現場の入退場時に個人の生体認証で記録をとり、必要に応じて協力会社にて修正を行った後、その就労実積データを現場所長が承認し、本社の管理部門に送信する、というものです。これなら協力会社組織では必要に応じてデータを参照する程度の作業となり、職長や作業員自身による書類の記入、工事事務所での押印、書類の送付、管理部門での集計等の労力を大幅に削減できます。

過去のデータ検索や検証もデジタルならスピーディー

このスーパー職長制度は単年度認定のため、毎年審査が実施されます。この審査書類についても現状は紙の書式で保存されているため、大判のファイル5~6冊ほどの量になってきました。この審査のためには、職長各自の従事日数報告書を確認して条件を満たしているか確認する作業が必要になります。

「こうした記録の用紙をまとめたファイルは、社内のキャビネットに収めきれなくなっているので、社外倉庫に送り保管しています。過去の記録をさかのぼって確認する場合には、倉庫から取り寄せる手間と日数もかかってしまいます」(長岡主任)。

認定者が少人数であった時代には手作業で行えていた部分も、現在のようにスーパー職長が450人以上ともなると、審査に必要な書類をそろえて内容をチェックするだけでも大変な手間になります。これを電子データで管理できれば、必要な項目を検索するだけで過去のデータもすぐに閲覧可能となります。

「現場への入退場の記録もデジタル化することで、後日、不備がないか検証することが容易になります。現状の紙ベースの記録だと、その記入内容が正しいかは、一緒に働いていた人の記憶に頼るしかありません。月締めの時期になって検証しようとしても入退場の時間までチェックするのは困難です」(長岡主任)。

その点、電子的に入退場の記録を取れれば、その履歴を後でデータベースから確認でき、職長の就労記録提出の必要がなくなるうえに、現場所長や本社における検索、チェックの手間が削減されます。

建設現場のイメージ(写真提供/大林組)

蓄積したデータは将来、生きる。デジタル化は今必要

「せっかく優秀な職長さんにいい待遇を提供しようという制度なのに、紙ベースの管理ではかえって労力や経費が無駄になってしまいます。電子データで管理できれば、その分省力化できて、そのデータを現場に活かすことも可能になります」(長岡主任)。

もともと大林組におけるスーパー職長制度を生み出すきっかけとなった、日本建設業連合会の「建設技能者の人材確保・育成に関する提言」では、建設技能労働者の賃金改善や技能と経験に見合った報酬の確保などが掲げられています。

「当社として、トップクラスの技能を持った職長に手当を支給して処遇を向上することで、より多くのすぐれた技能者にその力を現場で発揮していただきたいという思いがあります。頑張った分だけ報われる。そして次世代を担う若手技能者の良き目標となり、建設業全体の底上げににつなげていきたいと思います」(長岡主任)。

今後、大林組は入退場時の生体認証システムは新規着工現場を中心に切り替えていく予定です。デジタル推進室 課長の加藤豪氏も、大林組で業務のデジタル化に取り組むひとりです。

「優良技能者の就労データ管理についても言えることですが、既存のシステムを変えようとすると運用も変わりますし、それに携わる人間の習熟度も必要になります。どうしてもいったん効率は低下するものです。将来的には絶対によくなるから、今頑張ってほしいと、社内に呼び掛けるようにしています」(加藤課長)。

優良技能者の就労データ管理の改善は、その取り掛かりの一部といえます。
「将来的には、蓄積したデータをさらに経営や技術の改善などに活用したいですね」(加藤課長)。

紙からデジタルへの切り替えについては、そのような期待も込められています。

■参考Webサイト
https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20110405.html
https://www.kensetsu-kikin.or.jp/humanresources/technician/
https://www.nikkenren.com/sougou/pdf/ikusei/01/teigen_h26.pdf

就労実績の収集・集計をデジタル化するサービス「スキルマップサイト」

優良技能者認定制度を活用するうえで支障となっている、就労実績の記録から収集・集計をデジタル化。MCデータプラスが別途提供する「グリーンサイト」との入退場履歴を連携させることで、就労実績のデータが一元化し、業務の運用工数を大幅に削減します。<スキルマップサイトのフローのイメージ>
スキルマップサイトのフローのイメージ資料/MCデータプラス

1)簡単な操作でインターネット上での就労実績の報告が可能
従来、紙ベースで行われていた就労実績の報告は、協力会社の作業員に労力がかかり、計算ミスや誤記入のリスクがありました。また、報告書のとりまとめや元請会社への郵送の手間も発生。「スキルマップサイト」ならすべて電子データなので、インターネット上でスピーディーに送信可能

2)グリーンサイトの入退場データと連携
MCデータプラスの労務安全書類管理サービス「グリーンサイト」の入退場データを利用して、就労時間の正確な算出が可能。信頼性が向上し、入力や確認の手間が大幅に削減します。

3)電子化により情報を一元管理
従来の紙ベースの管理では、確認したい過去の就労履歴を探し出すのにもひと苦労。「スキルマップサイト」を利用すれば、各月における就労実績の検索や認定番号の管理も容易に。確認したいデータをすぐにチェックできます。

<各従業員の勤怠実績報告画面>
各従業員の勤怠実績報告画面資料/MCデータプラス

 

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