建設現場の朝礼はうまく機能しているか?安全衛生責任者の指示が労働災害を防ぐ!

常に危険と隣り合わせの建設現場において、様々な労働災害防止の取り組みが行われています。皆さんも毎日の朝礼や安全ミーティング、安全パトロール、KY活動など数え切れないほど経験しているでしょう。

しかし、職長や安全衛生責任者の方は、朝礼でしっかり安全指示を伝えられているでしょうか?

作業員の方は、安全指示を理解して、その指示を守れているでしょうか?

毎日のことなので、どこかで油断していたり、マンネリになったり、自分には労働災害は起きないなんて思い込みはしていないでしょうか?

現場の安全指示やコミュニケーションの形成こそがヒューマンエラーや労働災害の背景にあると労働安全衛生総合研究所 リスク管理研究センター センター長の高木元也さんは言います。

今回は、ヒューマンエラー、リスクマネジメント研究の第一人者である高木元也さんに建設現場でのコミュニケーションの重要性ついてお聞きしてきました。

 

現場での安全指示はほとんどと伝わっていない!?

現場の指示は正確に出せているか?

前回、「ヒューマンエラーの対策と原因」についてお聞きした際に、対策のひとつとして、安全指示やコミュニケーションの重要性を説かれていました。

高木元也さん(以下、敬称略)「現場では安全指示がマンネリであったり、一方的であったりして、伝わらないことが少なくありません」

現場の指示はほとんど伝わっていない<高木元也氏による調査(土木工事の現場所長、工事主任クラス対象のアンケート調査)>

–指示はどの程度伝わっているのでしょうか?

高木「現場の安全指示はどれほど伝わっていないのか?以前、現場の所長、職長クラスにアンケートをとったところ、なんと【指示が正確に伝わっていると思う】と答えたのは、わずか8.5%でした

コミュニケーションが良い現場は「指示を守ろう」という雰囲気になる

現場のコミュニケーションが安全意識を高める

–指示の出し方に問題があるのでしょうか?

高木「”指示の出し忘れ””指示を聞かなかった”というのが原因となる災害も多く存在します。これは伝える側、受け手側双方に問題があるといえるでしょう」

–現場の空気や雰囲気が、労働災害に影響があるということでしょうか?

高木「現場で働く人たちが良好な人間関係を構築している現場では、『この現場のルールを守ろう』『この人のためなら不安全行動はやめよう』と安全行動が活発になります。逆にギスギスした現場では『あいつの言うことなんか聞くものか』と現場のルールが守られなくなります」

–建設業以外でもマネジメントとして、コミュニケーションは重要視されています。

高木「長年にわたり1度も事故を起こしていない事業所がありました。どのような工夫をしているのかを所長に尋ねたところ、『毎日、働いている人全員に必ず声をかけている』と言ったそうです。それが直接、無事故につながっているかはわかりません。ただ、ある日朝礼などの場で、その所長が『現場の皆さん、現場の安全ルールは守ってください』と言えば、きっと多くの人は『この所長のために安全ルールを守ろう』という気持ちになったのではないかと思います」

–確かにメンバーの意識がバラバラだと、どんなことプロジェクトも上手くいきません

高木「特に建設現場は多層構造になっており、毎日働くメンバーも変わります。途中から現場に来た人は、居場所を作りづらい。1日の仕事で、一言もしゃべらない人もいます。そういった人たちに現場のリーダーが積極的に声をかけていく。『あなたも一員ですよ』って空気を作らないといけません」

うまく指示へ伝え、安全を重視する現場を作り上げる

正しい安全指示の出し方

-現場でそのようなコミュニケーションで安全行動を取ろうという雰囲気を形成すればヒューマンエラーや労働災害は減らせるのでしょうか?

高木「それだけでは不十分です。上手く指示を伝える工夫が必要になります」

–具体的にはどのような指示の出し方が必要でしょうか?

高木「まず指示が一方的であったり、曖昧、的外れなものは絶対にだめです。現場技術者、職長の経験や知識に乏しいとこのようなケースが多く見られます。指示を出す方に意識してほしいのは、”5W1H”を使うことです」

–“いつ(When)””誰が(Who)””どこで(Where)””何を(What)””なぜ(Why)””どのように(How)ということですね。

高木「様々な業種が入り乱れる現場では、非常に重要です。なぜ安全指示を守らなければならないか、その理由を指示にいれることで、より理解度が深まります。例えば、『玉掛け作業時には作業区域は立入禁止」というより『全国で玉掛け作業時の事故が多発しています。玉掛け作業時は絶対に作業区域に立ち入らないように」と言うと、伝わり方や理解度は全然違います。また長々と指示をしても人間それらをすべてを理解することはできません。ポイントを絞って簡潔に支持することが必要です」

–“なぜ?”がわかる指示だと、意識が変わりますね。

高木「毎日同じ指示をしなくてはいけないことも多いとは思いますが、問いかけをしたり、経験の浅い人には丁寧に説明するなど、マンネリ化を防ぐことが大事です。また『◯◯さん』と名前で呼ぶことで信頼関係を築くことができます。話しかけた相手から返事を貰うことも大切です」

指示を受け取る側も安全意識を高めるのが重要

積極的なコミュニケーション

–指示を出す側の意識が変わると一定の効果があると思いますが、受け取る側にはどんな工夫が必要でしょうか?

高木「指示する側の責任も大きいですが、受け取る側の意識も重要です。理解できなかった指示に対しては、質問をするなどのコミュニケーションが必須。また、安全は誰のためか?という意識を持つことも必要です」

–災害を起こすと、自身に怪我や死亡のリスクがあるだけではなく、現場全体に迷惑をかけてしまいます。

高木「そうです。いかにして『事故が起きると多くの人に迷惑がかかる』という意識を現場に浸透させるかが課題になります」

–つまり、冒頭で説明されていた”コミュニケーションが良好な現場づくりが重要である”、という結論に繋がるのですね。

高木「単純に”危険を軽視するな””立入禁止エリアに入るな””安全帯をつけろ”という一方的な指示ではなく、現場の安全意識を高めていくという動きが重要です」

ルールを作るのは簡単、守るのは難しい。守り続けるのはもっと難しい

インタビュー中の高木元也氏

– “守りなさい”と伝えるだけではなく、”守る”という意識を作り上げることが重要だと言うことですね。

高木「ルールを作るのは簡単です。守るのが難しい。守り続けるのはもっと難しい。これまで多発する死亡災害などをもとに、多くのルールが作られてきました。しかし、繰り返し災害は起き続けている。なぜか?全国で繰り返し発生している災害であってお、それを知らない人があまりにも多い。そのことを伝えていくことが重要だと思います」

–朝礼、安全ミーティング、KY活動などの安全活動のサイクルがその貴重な機会になりますね。

高木「すべてが安全意識を高めるための大事な場です。その意識を持って臨むことで、コミュニケーションも良好になりますし、現場が一体となって労働災害防止に進むことができます」

–ありがとうございます。人間の心理的な特性はもちろんですが、日々の安全活動の意義や背景を知ることができました!

高木元也
名古屋工業大学工学部土木工学科卒。佐藤工業(株)にて建設現場の施工管理、設計業務を担当した後、早稲田大学システム科学研究所に国内留学。佐藤工業(株)総合研究所研究員、(財)建設経済研究所研究員を経て、独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所リスク管理研究センターの上席研究員、首席研究員を経て、現在はセンター長を務める。

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